Vol.102-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「Chromebook」。素早く低コストに使える魅力的な機械だが、果たして仕事には活用できるのだろうか。
個人向けコンピュータとしてChromebookのシェアは上がってきている。そうなると気になるのは「Chromebookは仕事に使えるのか?」ということだろう。
もともとChromebookは、教育市場などへの導入を目的に開発されたものだ。ウェブベースで使う機器であり、アプリはいまだにPCほど充実しているわけではない。
とはいえ、それなら仕事はできないのかというと、「思った以上にできる」というのが答えになるだろう。
試してみるのは簡単だ。PCを使って「ウェブブラウザ上だけでどれだけのことができるか」やってみればいいのだ。メールもスケジュール管理もウェブサービスでできるし、ワープロ・表計算・プレゼンソフトも代用できる。Googleのサービスを使うのが一番楽だが、それに頼らずともマイクロソフトのものだってウェブベースで相当のことが可能だ。ファイルの受け渡しもクラウドベースでいい。とはいえ、ローカルがまったく使えないかというとそんなことはなく、Chromebookでもちゃんとローカルにファイルを保存して作業はできるから、そのあたりは安心していい。ビデオ会議も、近ごろ主流のサービスはちゃんとウェブブラウザ上でも利用できるようになっているので、ここも問題ない。
いや本当に、いまだったら大抵の仕事がウェブだけでも「できる」のだ。
ただし、である。「できる」ことと「ものすごく快適である」ということはちょっと違う。
メールやメッセージでコミュニケーションをして、文書ファイルのやりとりをするだけなら、正直ウェブベースのほうがもはや楽になっていると思う。だが、「これは厳しい」と思うことも多数ある。
例えば、「ビデオ会議の内容を、サービス側の機能に頼らず録音・録画する」にはどうしたらいいだろう?凝ったビデオ編集や、操作画面を動画でキャプチャしてマニュアルを作るといった作業も面倒だ。
つまり、ウェブだけで仕事をする場合には、PCとはやりかたを変える必要が出てくる。なかには使えない機能やフォントもある。それが絶対に必要なものであることは少ないだろうが、「違う」ことが負担となるのは事実といっていい。これは「iPadを仕事に使う」ことにも通じる。
コスト的にはもうPCとChromebookは逆転している。管理もシンプルで、本体も安い。だとすると、大半の仕事をする際に、Chromebookはもはや「素早く低コストに使える機械になった」と言っても過言ではない。問題は、「これでいい」という判断を下せない人が多いだろう……という点だ。
つまり、「できない」わけではないのだが、仕事をするための手法・サービスを自分で組み立てないといけないという側面があるということだ。こうした知識が十分にある人にとっては問題ないが、そうでない人には「PCのほうが作業しやすい」のは間違いないだろう。このバランスの見極めの難しさこそ、Chromebookの難点と言える。
では仕事以外ならどうなのか?そのあたりは次回で解説しよう。
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