Vol.106-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはGoogleが日本で発売するセキュリティカメラ。ITによって高度化されたGoogleやAmazonの製品を中心とした「スマートホームにおけるセキュリティカメラ」について解説する。
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世界のなかで、スマートホーム関連ビジネスが最も活発な地域はアメリカだ。アメリカに本拠地を持つ大手IT企業が大半、ということも重要な要素ではある。だがそれ以上に強く関連しているのが「住環境」、特に安全に対する意識だ。
アメリカは日本に比べ治安が良くない。空き巣や強盗などの被害への対策はより真剣なものにならざるを得ない。また、荷物の宅配などではいわゆる「置き配」が多い一方で、宅配ボックスの利用率は低く、再配達も日本ほどの頻度ではやってもらえない。結果、荷物が盗まれることもある。
そんな事情を反映して、いわゆる「監視カメラ」のニーズは日本よりもずっと高い。それをITによって高度化したのが、GoogleやAmazonの製品を中心とした「スマートホームにおけるセキュリティカメラ」である。単に自宅内で映像が見える・録画できるだけでなく、外出時にはスマホに映像が転送されたり、動きや音の検出によって、怪しい状況が生まれたら自動的に警告を発してくれたりする。明確なニーズがあり、それを新しいテクノロジーで実現してくれるから注目されたのだ。
しかも、そういう機能が、自宅に自分で後付けできる数百ドルの製品で実現できる……ということで、アメリカでは多くの家庭で使われるようになった。
重要なのはこの、「自分で後付けできる」という点だ。日本の場合、借家はもちろん、持ち家であっても「自分で住宅設備を変えていく」意識はアメリカほど高くない。部屋に家具を置く、ベランダや庭に家庭菜園やプランターを置くくらいはやっても、壁に穴を開けたり自分で増築したり……ということまではしない人が多いだろう。だが、アメリカの場合には家が広いこともあってか、自宅の環境を自分で変える、という人はずっと多いのだ。日曜大工を含めた、いわゆる「DIY(Do it Yourself)」文化はアメリカが本場で、スマートホーム機器についてもそれが反映されている。
日本の場合にはどうしても「スマホやタブレットとの連携家電を買う」意識になるが、アメリカではDIY的に「セキュリティカメラをつける」「スマートロックをつける」「電動カーテンレールをつける」といった、比較的規模が大きく、加工が必要なものも積極的に利用されている傾向にある。
では、日本でスマートホーム向けセキュリティカメラを売るにはどうしたら良いのだろうか? そのままではヒットが難しいのも事実で、そのため、日本ではアメリカほど製品の点数が多くない。
そこで今回、Googleはちょっと工夫してスタートすることになった。それが何なのかは、次回で解説する。
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