ワイヤレスイヤホン「Nothing ear(1)」の成功により、一躍注目のテック企業となったNothing。同ブランドの次の一手は、多くの人が予測していたようにスマートフォン分野への進出でした。
日本での発売も予定されている「Nothing Phone(1)」は、すでに消費者からの関心が失われてしまったスペック競争から離れ、背面にスケルトンを採用するなどの新鮮なデザインが特徴です。そんなNothing Phone(1)を1週間ほど試用する機会がありましたので、その使い勝手を中心にご紹介します。触ってみると、ユーザービリティの向上に焦点を当てていることがわかりました。
ミニマムなパッケージング
まずはパッケージから見ていきます。Nothing Phone(1)は、まるで分厚いCDケースのような紙製の外箱に入れられて出荷されます。凝ったデザインのパッケージとは裏腹に、電源アダプターが同梱されないなど、中に入っている物はシンプルです。
その内部には、Nothing Phone(1)の本体、USB Type-Cケーブル、SIMピン、そして説明書が同梱。SIMピンは持ち手がスケルトン仕様となっており、なかなか作りこまれています。
また、Nothing Phone(1)ではタフネスなTPU製ケースと、電源アダプターがオプションで用意されています。アダプターはホワイトとクリアのプラスチックを組み合わせたもので、ここでもスケルトンデザインが強調されています。
シンプルながら高級感のあるデザイン
Nothing Phone(1)の電源を入れると、鮮やかな有機ELディスプレイが目に飛び込みます。このディスプレイは6.55インチと大きめで、「iPhone 13 Pro Max」より少し小さい程度。個人的には手に余るということはありませんでした。
カバーガラスに米コーニングの「ゴリラガラス」を採用しているためか、指紋などが付いても布などで簡単に拭えるのも好印象でした。
Nothing Phone(1)を特徴づけるのは、やはりスケルトンデザインの背面とLED発光機能「グリフ・インターフェイス」。内部の部品が丸見えなのはインパクトが大きく、思わず他人に自慢したくなってしまいます。このあたりは物欲を刺激するポイントでしょう。加えて、目に見える部品のほぼすべてがブラック(あるいはホワイト)に統一されているので、高級感も感じられました。
本体の厚さは8.3mmで、重量は193.5g。リサイクルアルミニウム製のフレームは質感もよく、ずっと触っていたいと思わせてくれました。それにしてもこのデザイン、どこかアップルの「iPhone」シリーズを思い起こさせますね。
通知や充電時に便利な、実用性高いグリフ・インターフェイス
背面が発光するグリフ・インターフェイスには、さまざまな機能が割り振られています。光るという装飾的な部分に注目がいきがちですが、実用性もしっかり兼ね備えているわけです。
例えば、Nothing Phone(1)のディスプレイを下向きにして机に置けば、グリフ・インターフェイスが通知ランプとして動作し、通話に対応することができます。ミュート設定や本体ボタンを操作しなくても、置き方ひとつでサイレントモードを利用できるのは便利でした。
さらに、着信音の設定では、電話をかけてきた人ごとに特定の発光パターンを設定できます。家族など、大切な人からの着信にいち早く対応したいときに重宝しそうです。
また、ケーブルによる充電中には、グリフ・インターフェイスが光ってその進行状況を教えてくれます。ディスプレイを見なくてもバッテリー残量がわかるのは、これまた便利です。
動画や写真撮影の際には、グリフ・インターフェイスを補助光として点灯させる「グリフィルライト」を利用できます。フラッシュよりも柔らかいこのLED発光機能は、人物の顔などを優しく照らせるでしょう。
なお、グリフ・インターフェイスのAPIは外部に仕様が公開されているので、外部の開発者が自分のアプリをグリフ・インターフェイスに対応させることも可能です。
【グリフ・インターフェイスの画面フォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。一部SNSからは閲覧できません。
余計なアプリを取り除いたことで、シンプルで使いやすいNothing OS
Nothing Phone(1)には、Android OSをベースにカスタムした「Nothing OS」が搭載。操作してみると、グーグル純正以外のアプリがほとんど存在しないことに気づきます。これにより、目当てのアプリや機能にすぐにアクセスできるはずです。「ゼロ・ブロートウェア(不要なアプリゼロ)」をうたうNothing OSならではといえます。
ユーザーインターフェイスは、丸みを帯びたポップなデザインに統一されています。独自OSとなると言語面で不安に思うかもしれませんが、システムの日本語化も十分に進められており、使っていて困ることはありませんでした。
カメラはiPhoneとそん色なくきれい、でもちょっと癖あり?
スペック競争から離れたとはいえ、気になるポイントもあるはず。特にカメラは頻繁に使うだけにどういった写真を撮影できるのかは知りたいところです。
Nothing Phone(1)の背面カメラは、メインに1/1.56インチのソニー製5000万画素イメージセンサーを、超広角にはサムスン製5000万画素イメージセンサーを搭載したデュアル構成。OIS(光学手ブレ補正)とEIS(電子動体ブレ補正)を組み合わせることで、十分な撮影画質を確保しています。
十分な光量が確保できる屋外や屋内では、Nothing Phone(1)は美しい絵を描写してくれます。私が所有するiPhone 13 Pro Maxと比較しても、写真や動画の美しさに差は感じませんでした。
ド派手な色の海産物も、記憶にあるような美しい色で描き出してくれます。また一部のAndroidスマートフォンで散見されるような、不自然な色の強調なども見られませんでした。
Nothing Phone(1)にはナイトモードも搭載されており、暗い水族館でも威力を発揮してくれるはず……と期待していたのですが、どうも当日はナイトモードへの切り替えがうまくいかなかったせいか、ボケボケっとした写真を撮影してしまいました。今後は自動でのナイトモードへの切り替えなどが、アップデートにより配信されることを期待したいものです。
十二分の完成度と手に取りやすい価格のスマホ
普段使いにおいては、Nothing Phone(1)はどんなシーンでもキビキビと動作し、メインのスマートフォンとして十分に利用できる印象です。ただし、日本における「おサイフケータイ」には対応していないので、ICカードを別途持ち歩くなどの運用が必要になります。またグリフ・インターフェイスも、個人的にはよりエンタメ寄りの機能(音楽にあわせて光るなど)の登場に期待したいものです。
とはいえ、ブランド初のスマートフォンとして、Nothing Phone(1)は十二分な完成度に仕上がっています。RAM 8GB/内蔵ストレージ256GBモデルが6万9800円(税込み)というお求めやすい価格設定も、新しいモノ好きなあなたの背中をそっと後押ししてくれるはず。楽しく持ち歩けるスマートフォンといえそうです。
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Source: Nothing