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2022/12/5 10:45

VRで盛り上がったTGSを振り返りながら、2023年のVR・メタバースを考える

ゲーム業界のトピックスといえばニンテンドースイッチ(任天堂)や、PS5(ソニー)の話題が中心…と思う方も多いだろうが、実は第3の勢力としてVR機器・VRコンテンツ陣営の存在感が高まっている。

 

2022年秋に開催された東京ゲームショウでも、VRに注目する流れが伺えた。VR専用会場、本会場ともに、VRカルチャーの盛り上がりを感じられたので、遅ればせながら、今回は東京ゲームショウを振り返りつつ、2023年のVRがどうなるか考えてみたい。

 

VR専用会場であるTGS VR 2022にはゲームメーカーのブースごとに、ゲームキャラの3Dモデルや大型ポスターが展示されたほか、ゲーム要素を持つコンテンツが用意され、スタンプラリーのように会場を巡りながら最新ゲームの情報を得ることができるゲームデザインとなっていた。

↑TGS VR 2022

 

このTGS VR 2022の総来場者数は39万8622人。VR機器を使うことで世界中から時間も旅費もかけずに訪れることができるとあって、かなりの人気を集めていた。

 

東京ゲームショウ本会場となる幕張メッセ会場にも、多くの人々が来場した。体験のための待ち時間が120分を超えたブースもあったほどだ。

↑本会場(幕張メッセ)の様子

 

実際の総来場者数13万8192人。前回のリアル開催となった2019年の26万2076人からはほぼ半減となったが、基本的にチケットは事前のオンライン販売のみだし、徹底したコロナ対策がとられていたこともあったことから、健闘したといっていいだろう。

 

待ち時間120分という長蛇の列を作ったのが、Meta Questのブースだ。Meta Quest 2本体と、VRを活かしたリズムゲームや現在開発中のVRコンテンツが体験できるとあって、高い注目を集めていた。

↑Meta Questブース

 

ブース内はいくつもの小部屋にわかれており、それぞれの部屋の中でスタッフがついてMeta Quest 2の装着方法や操作方法から細かく教えられた。ゲーマーであれば使い慣れたジョイパッド・ジョイスティックと平面ディスプレイの組み合わせとは異なり、ゴーグル式で周囲が見えなくなることから、体験者が不安に感じることを考慮してデバイスそのものの解説に時間を割いていたとみられる。またVR酔いが起きることを懸念してか、頻繁に体調を確認していた。

↑Among Us VRを体験できた

 

特にプッシュしていたのが、Meta Quest版の「Among Us VR」だ。宇宙人狼ゲームと呼ばれるAmong Usは2020年頃より大ヒット。クルー(人狼でいう村人側)陣営とインポスター(同人狼側)陣営にわかれて、協力と疑いと裏切りの連鎖を繰り返すトークゲームだ。Meta Quest 2で遊べるVR版はゲームステージとなる宇宙船の中をFPS視点で歩き回り、自分に課せられたタスク(仕事)をこなしていくのだが、他のプレイヤーがきちんとタスクをクリアしているか、それとも怪しげな行動をしているかを目撃することもできる。

↑Meta Quest 2を装着したクルーと緊急ボタン

 

ただし見下ろし視点のオリジナルと比較して、周囲が確認しにくくなっているために、ルールは簡単なれどかなりの緊張感を持つゲームとなっている。

 

Meta Quest 2よりも安価なスタンドアローン型VR機器をリリースしているPICOも、大きなブースで展示を行っていた。こちらもPICOシリーズに対応している最新作のプレイアブルなコーナーを多く用意し、常に多くの来場者が集まっていた。

↑PICOブース

 

行列はあったものの回転が速く、待ち時間は短め。そしてMeta Questブースの真横にあったこともあり、Meta Questの体験列から離れてPICOブースに移動する来場者も目立った。

↑ゲームだけでなくフィットネスも

 

PICOシリーズはMeta Questシリーズと同様にAndroidベースのOSを使っているが、細部は異なる。また利用できるアプリストアも別だ。そのためMeta QuestアプリをPICOシリーズで使うことはできない。そういう背景からか、「PICOで楽しめるタイトルはこちら」と対応アプリをわかりやすくアピールしていた。

↑「RUINS MAGUS」などを楽しめた

 

日本のVRゲーム会社Thirdverseは、最大5人vs5人のチーム戦ができるマルチプレイVRタクティカルシューター「X8」をデモ展示。X8は特殊能力を持つキャラクターを選択可能で、VRで楽しめるVALORANTといったところ。ステージ内の移動はジョイスティックだが、しゃがんだり遮蔽物の影に隠れながら身を乗り出して銃撃したりと、各種センサーによって自分のフォームを仮想空間内のキャラクターに投影できるVR機器の没入感を活かした設計となっていた。

↑Thirdverseブース

 

MyDearestブースは、ビジュアルノベルゲームの最先端系といえる「DYSCHRONIA: Chronos Alternate」を展示。アニメの世界に身体ごとダイブしたような感覚で、特別監察官として「ありえない殺人事件」の謎を解いていくタイトルだ。

↑作中に登場する研究所のようなブースで、カプセルのような椅子に座って試遊ができた

 

日本発のソーシャルVRとして人気を集めているclusterも出展。Robloxのような箱庭ゲームが作りやすい環境でありながら、雑談や演劇、ライブ、DJパーティなども楽しめるメタバースとしても注目を集めており、展示も様々な活用法や遊び方があることを提案するものだった。

↑clusterブース

 

インディゲームブースにもVRコンテンツを展示しているベンチャー企業があり、開発者からもVR市場が注目されていることを実感できた。

 

2023年のVRやメタバースは

VR元年と言われた2016年から6年。Meta Quest 2やPico 4など、約5~6万円で単体利用が可能なVRヘッドセットが購入できる時代となり、ソニーはグループをあげてメタバースに取り組むと発表して、来年初頭にはソニーPS5と連携して使えるPSVR 2の販売も予定されている。バンダイナムコグループもガンダムの世界観を楽しめるメタバースの構築を進めているという。

 

もちろんまだハードルが高い分野でもある。現在のVRヘッドセットの技術では3D映像を間近で見ることからVR酔いという、乗り物酔いに近い状態になる人も多いと思われる。スマートフォンやコンシューマーゲーム機のゲーム市場と張り合える規模になるのはまだ先のことだろう。

 

しかしVRの没入感と一体感を活かしたハードウェア&コンテンツを企業もユーザーも求めてきている感覚は強い。2023年の段階ではニッチ市場にとどまるかもしれないが、世界を巻き込むコンテンツフィールドとなる期待は抱ける。