「週刊GetNavi」Vol.48-1
家電を買い替えずにAIoTを導入する秘密兵器
「CEATEC JAPAN 2016」で、シャープは新しいロボット端末「ホームアシスタント」を発表した。発売は2017年前半を予定しており、価格は「数万円台の前半(5万円以下)、できるだけ安くしたい」(シャープ関係者)とする。
シャープは昨年来、「AIoT」を合言葉に、人工知能とネットワーク機能を盛り込んだ家電を多く発表している。例えば、「プラズマクラスターエアコン〈Xシリーズ〉」は、「COCORO AIR」というクラウドサービス連携機能があり、使う人の好みに合わせた温度設定を覚えたり、エアコンが設置された地域の気候を自動的に取得し、それに合わせた空調を行ったりするようになっている。
一方で、こうした家電には大きな問題もある。“買い替え”が必要、という点だ。家電メーカーとしては買い替えを促したいところだが、家電の買い替えサイクルはどんどん長くなっている。エアコンや冷蔵庫といった、住宅に紐づく性質の家電については、10年単位でしか買い替えない人も多い。また、買い替える場合も大抵は“順番に”買い替えるもので、一気にひとつのメーカーに揃えてもらう、というのは現実的ではない。
「まだ家電を買い替えられない人にどう受け入れてもらうかが、我々の課題だった。また、すべての家電をシャープ一色、というのも無理がある」
「ホームアシスタント」開発の経緯を、シャープの関係者はそう説明する。「ホームアシスタント」にはWi-Fiでシャープ製家電と連携する機能のほかに、赤外線で他の家電を動かす仕組みもある。要は、リモコンの代わりに動いて適宜家電をコントロールするわけだ。多機能リモコンのロボット版、といえるものであり、非常にシンプルな仕組みだが、「これでもかなり面白いことができる」とシャープは胸を張る。要は、クラウド上のAIを活用し、リモコンを適切なタイミングで動かすことで、機器側にクラウドやAI連携の機能が搭載されていなくとも、AIの価値を見出せるのではないか……という発想だ。
RoBoHoNで代用はできないのか?
もうひとつ疑問がある。シャープにはコミュニケーションロボット「RoBoHoN」がある。あれではダメなのだろうか?
「もちろんRoBoHoNで対応、も可能ですが、携帯電話として使うこと・歩くことなどを前提にしているのでどうしても高価になる。一家に何台も、というわけにはいきません。棲み分けられます」(シャープ)
実際、ホームアシスタントは非常にシンプルな製品であり、手足はないし動くこともできない。だが、声を発してコミュニケーションをしながら命令を実行していく、という部分は「RoBoHoN」に似ている。よりシンプルで、ほとんどの機能はクラウド側のプラットフォームで実現されているという。すなわち、ネットワークにつながらなければなにもできないのだ。
こうした考え方は、シャープだけのものではない。Googleなどの“ネットの巨人”は、すでにこうした方向性の「家庭向け端末」を手がけている。
では、シャープのアプローチとはどこが違うのか?
そのあたりは次回のVol.48-2以降で解説する。
※Vol.48-2は10月31日(月)更新予定です。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら!