スマホやモバイル関連の注目ニュースをピックアップしてお届け。3月のトピックは、
・賢いAI「ChatGPT」が話題集める、マイクロソフトが怒濤の製品展開
・auがメタバースに本腰、ソフトバンクも対抗
・ホリエモンの携帯回線「ホリエモバイル」提供開始
の3本です。
ChatGPTの強化版登場、マイクロソフトもチャットAIで怒濤の発表
2月から3月にかけて、OpenAI社が開発するチャットAI「ChatGPT」が大きな話題を集めています。ChatGPTは、“コンピューターに話しかけると、もっともらしい返事が返ってくる”というサービスです。
特筆すべきはその高機能さで、インターネット上のサイトからさまざまな分野の情報を学習しており、多少専門的な内容の質問をしても、すらすらと結果を返してきます。3月15日に発表された新バージョン「GPT-4」で駆動するChatGPTは、米国の司法試験の合格ラインに到達するとのこと。また、GPT-4は限定的な「マルチモーダルエンジン」となっており、テキストでの入出力だけでなく、画像で入力して文章で返答できるように改善されています。
ChatGPTはトライアルサービスとしてOpenAIのWebサイト上で、無料で試せるようになっており、月20ドルの有料プランに加入すると、GPT-4ベースのChatGPTも試用できます。
OpenAIの独占パートナーとして100億ドル以上を投資しているマイクロソフトは、2月から3月の半ばにかけて、同社製品の多くにAI機能を搭載する方針を示しています。チャットAIについては、検索エンジンの「Bing」やWebブラウザーの「Edge」に実装されていますが、今後はさらにOffice 365など多くの人が使うサービスに順次展開される予定です。
Office 365向けのAIチャット機能「Microsoft 365 Copilot」は、3月16日(米国時間)に発表。Copilot(副操縦士)という名前から想像できるように、オフィスワーク中の操作を手伝ってくれるチャットAI機能となっています。現在は限られたユーザーでテストされており、順次拡大する見込みです。
Microsoft 365 Copilotのイメージ動画
たとえば、Wordでは企画案やメールの文面なども、さまざまな文書を出力できるようになっています。発表時のプレゼンテーションでは「娘の卒業祝いのスピーチを作成して」と指示すると、それらしい体裁のスピーチ原稿が一瞬にして出力されるというデモンストレーションが披露されました。
また、文書の体裁を整えることもできます。たとえばOneDriveに保存されている写真をちりばめた、PowerPointのプレゼンテーション用スライドを自動で作成といったことも可能です。
ChatGPTが注目を集めて以来、日々新しい発表が続いている生成AIの世界ですが、競合となる言語モデルの開発では、グーグルが挙げられます。3月15日にはGmailやGoogle Workspace向けに、チャットAIを活用した文章案作成・編集機能を発表。このほか、Metaや中国の百度なども開発に名乗りを挙げています。競争はこれから本格化していくことでしょう。
【関連リンク】
3月15日:Google、Google Workspaceに生成AIを導入
3月16日:マイクロソフト、AIによる文章編集機能、Microsoft 365 Copilotを発表
3月22日:マイクロソフト、新しいBingのチャット機能をモバイル版のSkypeとEdgeに拡大
KDDI、「αU」でメタバースに本腰
KDDIは3月7日、新たなメタバースサービス「αU(アルファユー)」を発表しました。αUは、スマホで参加できる仮想空間サービスです。
αUには、オンラインゲームやSNSのように交流ができる場所や、3Dのライブ映像が楽しめるコンテンツが用意されており、すべてスマホで利用できるようになっています。各サービスは3月以降、順次提供されます。
αUのメイン会場といえるのが、「渋谷」や「大阪」といった実在都市を再現した仮想空間です。最大20人までのユーザーが集まって、会話やチャットをできるようになっています。会話の遅延を抑えて、その場にいるように話せるとのこと。
エンタメ体験では、夏以降に順次コンテンツを提供します。3D空間内でライブを楽しめるコンテンツのほか、YouTubeの映像技術を取り入れており、スマホ上で動くコンテンツとしては滑らかな映像表現が特徴。「BE:FIRST」や「水曜日のカンパネラ」などの人気アーティストが手掛けるライブコンテンツが提供される予定です。
アイテム販売ではメタバース空間内の自室に飾れるアイテムや服装が販売されるほか、NFTアートも取り扱われます。デジタル絵画や3Dフィギュアを特典としたNFTで、αUメタバースの自室に飾れるうえに、不要になったらNFTマーケットで二次流通(転売)することも可能となっています。
実在の都市空間との連動要素として、オンラインショッピング体験も提供されます。これは、実際の都市空間に存在するお店の人とビデオ通話をつないで交流できるという体験で、メタバース空間でお店の雰囲気を味わいつつ、ビデオ通話で品物を確かめたり、より具体的な説明を聞いたりできるという内容です。ファッションブランドやauショップなど、全国各地の店舗とつなぐサービスを展開する予定としています。
αUブランドでは、“メタバース”という言葉から連想される機能の多くをサービスとして取り入れていますが、一方で各サービス間の連携は薄く、その点がこれからの課題となりそうです。たとえば、メタバース空間でのアイテムに使われる“通貨”は、現時点ではアイテムを購入できるゲーム内通貨のような位置づけにとどまっており、ライブコンテンツを購入したり、実空間のアイテムを購入したりすることはできません。
また、仮想空間の完成度もまちまちで、既存のオンラインゲームなどと比べても操作性が良くないと感じる部分もありました。ソフトウェアとしての作り込みの弱さと、スマホの処理能力が不足という、両方の要素で開発の余地がありそうです。
KDDIはメタバースにおいて「オープンイノベーション」を掲げ、積極的に外部の企業と連携して開発を進めていく方針を示しています。メタバース間での連携も呼びかけており、たとえば1つのアバターで複数のメタバースにログインできるようにしたり、あるメタバースで購入したデジタルアイテムをほかのメタバースでも使えるようにしたりといった構想が含まれています。
メタバース関連では、NTTドコモが子会社のNTTコノキューを設立し、仮想空間プラットフォームの「NTT Door」を運営しています。KDDIではこうした携帯キャリア系のメタバースサービスも含めて、他社サービスとの連携を打診していく方針です。
【関連リンク】
ソフトバンクは“2.5Dメタバース”に進出
KDDIの発表に合わせるかのように、ソフトバンクも3月7日にメタバースサービスを発表しました。ソフトバンクは、韓国NAVER系の「ZEP」と「ZEPETO」という2つのメタバース空間でサービスを提供。両メタバースに出店したい企業や自治体への支援も展開するとしています。
このうちZEPは、韓国で2022年に開発されたメタバースで、日本での展開がほぼ初の海外進出となるサービスです。メタバースとは言っても、2Dの箱庭ゲームのような見た目で、メタバース空間内で近くにいる人と音声チャットをしたり、ビデオ通話をつないだりする機能を備えています。
ZEPの特徴は手軽さです。スマホのブラウザー上で動作するため、アプリをインストールする手間がありません。仮想空間を制作する側としても、3Dのメタバースよりも手間がかからずに空間を制作できます。たとえば、地域の観光スポットを紹介する空間を制作してポスターにQRコードを貼っておくといった活用法も期待できるでしょう。
できることは既存のアバター交流型SNSと変わりませんが、スマホでのメタバース体験に限界がある時点では、より賢いアプローチかもしれません。
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ソフトバンク、なにわ男子の世界観満載のメタバース空間「なにわ男子HOUSE」をオープン
ホリエモンの携帯回線「ホリエモバイル」が発表
エックスモバイル(X-mobile)は3月16日、起業家の堀江貴文氏がプロデュースする格安SIM「HORIE MOBILE(ホリエモバイル)」の提供を開始しました。NTTドコモ網のMVNOで月20GBのデータ容量と、5分かけ放題がついて料金は月額3030円と、大手キャリアのオンラインプランに近い水準です
このプランだけの特徴として、堀江貴文氏が配信するコンテンツが無料で提供されます。メールマガジン「デイリーホリエニュース」や、音声配信サービスの「Voicy」や「ZATSUDAN」での視聴権などが付帯されるほか、堀江氏が展開するパン屋「小麦の奴隷」で毎月1個カレーパンがもらえるクーポン券も配布されます。さらに、堀江氏による限定イベントも実施する方針としています。すべてのコンテンツを利用するなら総額1万円程度かかるため、堀江氏に興味がある人にはうれしい特典といえそうです。
また、携帯電話会社のポイントプログラムのようなサービスも提供されます。月額利用者にイーサリアムベースの独自トークン(暗号資産)を付与する仕組みで、トークンは料金からの割引に充てられるほか、ほかの契約者に再販売することも可能としています。サービス開始当初から保有している人ほど有利な仕組みとするとしていることから、こちらも開始当初に契約するホリエモンファンほどうれしい特典といえるでしょう。
サービス内容だけ見ればホリエモンファン向けの携帯サービスという印象も受けますが、ホリエモバイルでは「LCCモバイル」と銘打って、幅広いユーザーにアピールしていく方針です。
一方で、ホリエモバイルでは、大手キャリアからの乗り換えるユーザーもターゲットとしています。日本でのMVNOの利用比率は携帯ユーザーのうち13.4%(2022年9月時点、総務省)となっていますが、堀江氏は「対象となる(潜在的なユーザー)はもっと多いと思う。ホリエモバイルで初めて、ドコモやauなどとは違う販売方法があるのを知った人もいるのではないか。そうした人にも広げていきたい」と語っています。
エックスモバイルはMVNOとしては珍しく、100店舗以上の取り扱い店舗網を有しています。特に地方や離島部では、地元の有力な商店にX-mobileを扱ってもらう形で店舗展開を拡大しています。実店舗でスムーズに契約できるようにすることで、大手キャリアのオンライン専用プランは難しいと考えている人にも訴求していくといいます。
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