Vol.127-1
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマはGoogleが発売を発表した「Pixel 7a」。昨年発売された上位版「Pixel 7」と同じプロセッサーを用いる狙いはどこにあるのか。
プロセッサーが同じぶん、7aはおトクなスマホ
Googleが相次いで新しいハードウェアを発表した。「Pixel 7a」「Pixel Fold」「Pixel Tablet」だ。
このうち7aは、すでにおなじみになった、同社製スマホの廉価版。Foldはその名の通り折りたたみ型、そしてTabletは、昨年発表済みだがようやく販売が決まった製品となる。ただし、発売時期は異なっており、本誌発売のタイミングで販売されているのは、おそらく7aだけだろう。
この3製品には明確な共通項がある。それは「まったく同じプロセッサーを使っている」ということだ。Googleは同社のPixelブランド製品で、独自開発のプロセッサーを使うようになっている。そして、発売年が近いと、使うプロセッサーも同じものになりやすい。
今回の場合、使っているのは「Tensor G2」。昨年の「Pixel 7」シリーズから採用しているものだ。Googleによれば、Pixel 7、7 Proを含め、5製品にはまったく同じTensor G2が使われている。ただし、ハイエンド製品扱いである7 ProとFoldのみ、メインメモリーが12GBと大きい。ほかの3モデルは8GBだ。
そうなるとおもしろい特性が見えてくる。Pixel 7と7aは“性能がほとんど変わらない”ということになるのだ。
もちろん、違う部分はある。
カメラのセンサーは種類が異なるので、画素数は似ていても画質は異なる。7にはストレージを256GBとしたモデルもあるが、7aにはない。ただ、どちらも非常に小さな差であり、7aがとてもおトクな製品であるのは間違いない。
あえて変えないのはプロセッサーの生産効率
こうした傾向は昨年もあった。
「Pixel 6a」のコストパフォーマンスが良すぎて、半年前に発売された「Pixel 6」が霞んでしまった。今年も7aのコスパは圧倒的に良い。
7と7a、両方を差別化して売りたいなら、プロセッサーやカメラなどに差をつければいい。だが差は小さい。Googleはあえてわかっていて“変えていない”のだ。
理由は複数あるが、重要なのは2つあると考えて良い。
ひとつ目は、「複数種類のプロセッサーを作ると効率が悪くなる」ということだ。プロセッサーは大量生産するほどコストが下がる。逆に言えば、多品種にするとコストが上がる。差別化には高性能な独自プロセッサーが必要だが、そのぶん高いものになりやすい。そのため、いろいろな製品で同じプロセッサーを使えるようにして、コストパフォーマンスを良くするわけだ。
その際、Appleのように数量が圧倒的に多いなら、複数の性能のプロセッサーを作る余裕も出てくる。だがGoogleはそこまでに至らないので、コスト効率を優先せざるを得ない。
そして2つ目の理由は“数を増やすため”だ。発売当初は若干高くとも、半年以上経過すれば価格は下がる。発売が後になる「aシリーズ」をあえておトクな製品にすることで、販売数量を増やしていける……という発想だろう。
Pixel FoldやPixel Tabletなどの狙いは? GoogleにとってのPixelブランドとは? そのへんは次回以降で解説する。
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