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2017/1/13 7:00

【西田宗千佳連載】「家電」の姿は国によってまったく異なる

「週刊GetNavi」Vol.50-3

ネットワーク連携によって便利になる機能はなにか? 家電業界はいまだそれを見つけられずにいる。あまりにそこが難しいので、日本メーカーの場合、ストレートにそこを目指す企業は減り、調理家電なら調理の、掃除機なら掃除の機能を改善する方に向かっている。ある意味、当然といえば当然の流れだ。だが、そこで大きな差を出すのは難しい。さらには、大企業だけでなくベンチャー企業や、安売りを武器にする中国系企業にも追いかけられるのだから大変だ。そうした企業との競争から逃げるための策がネットワーク化だったのだが、それが簡単ではない……というジレンマに陥っている。

 

家庭内での家電連携のフレームワークでは、AppleのHomeKitが先を行っている。日本で上手くいっていない「ネット連携」がHomeKitは多少なりとも市場になっている、といってもいい。

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↑AppleのHomeKitのイメージ

 

 

ただしここで注意が必要なのだが、日本で考えられている「家電連携」と、特にアメリカでAppleなどが想定している「家電連携」とでは、対象とする機器が異なる。なぜなら、家電の使われ方が全く違うからだ。

 

日本ではひとつひとつの部屋にエアコンがあるのがあたりまえだが、アメリカではセントラルヒーティングが中心。洗濯機も乾燥機が必ずセットで、賃貸物件の場合だと、自前の洗濯機は持たず、建物の地下に備え付けのものを使う場合も多い。一方で、ガレージのシャッターを電動で開け閉めする機器や、外部からの侵入をモニタリングする監視カメラは、日本よりずっと普及している。カギをネットワーク化する「スマートロック」も、日本よりも身近だ。なぜなら、DIYの精神から、自宅のカギは自分で交換するのがあたりまえになっているためだ。賃貸物件でもドアのカギは変更できる。だから、カギを分解して組み込むタイプのスマートロックが複数売られていて、組み込むのも難しくない。

 

すなわち、コントロールしたい家電の種類が日本とはまったく異なっていて、HomeKitはそこに合わせて作られている……といってもいい。だから、エアコンや洗濯機の連携の話はあまり出てこないのだ。むしろ、セキュリティ周りの方が注目される。フィリップスのHueやデロンギのマルチダイナミックヒーターといった例は、「日本でも受け入れられる例外」と思った方がいい。

 

家電のうち、「世界中で似た仕様のものがそのまま通用する」のは、IT機器やAV家電など、少数派なのである。それら以外の機器は、ネットワーク化ひとつとってもニーズが異なるため、そのまま海外には通用しない。

 

では、世界でも日本でも通用する「家電連携」は何なのか? その辺りは次回のVol.50-4にて。

 

●Vol.50-4は1月20日(金)公開予定です。

 

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