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2018/9/26 17:00

肌寒い秋の日に聴きたい“バラード”縛りの名曲10選

日を追うごとに「秋」を実感させる、心地よくもひんやりとした空気が漂いつつあります。この季節になると、なんとなく「バラード曲」が聴きたくなってきてしまうのは私だけでしょうか?

 

そもそもの「バラード」とは、クラシックの世界から登場してきた曲の様式で、詩をベースにした楽曲が物語風に展開され、それは幻想的なものであったり、喜怒哀楽の激情的な感情が劇的に構成されたりと、壮大な楽曲が多いとされています。それこそ、広辞苑では「ショパンのピアノ曲など」とあり、英語表記の「バラッド」にいたっては「19世紀以降の感傷的な大衆歌謡」とあったりもします。ちなみに「バラード」はフランスの言葉です。

 

とはいえ、明快なバラードの定義はあるようでないともいわれていますので、ここではあえて深堀りはしません。現代のポップスの文脈で語られる「バラード」は、クラシック音楽の歌唱曲の様式から派生したもので、キーワードとしては、ミディアムテンポ、叙情的なメロディ、泣ける歌詞、ラブソング、などなどでしょうか。

 

もっともっと具体的な音楽的要素があるとは思いますが、人それぞれ解釈が違うと思いますし、音楽専門媒体でもないので、今回はわかりやすくそういうことにさせていただきたいと思います。ご了承ください。

 

で、今回は「秋」ということで「バラード」縛りの楽曲で、しかも大直球で「バラード」という言葉が曲名に入っているものを、日本と海外の音楽両方からセレクトした10選をお届けします。

 

「Spotify」アプリをダウンロードすれば、有料会員でなくても試聴ができますので、幅広い音楽性を含むバラードというキーワードで、秋に浸っていただけるとうれしいです。

 

【Spotifyで聴ける】秋に聴きたくなるバラードソング10曲

01.やつらの足音のバラード/ちのはじめ
(1974年10月21日リリース)

園山俊二原作の名作ギャグアニメ「はじめ人間ギャートルズ」でエンディングテーマに起用された大名曲であり、宇宙規模のバラード作。宇宙のビッグバン〜地球という惑星の誕生〜人類(やつら)の誕生という壮大なテーマを歌い上げます。生命の始まりをキャッチーに描いた歌世界が秀逸で、作詞は原作者の園山俊二、作曲はかまやつひろし。のちにかまやつ本人がセルカバー、渋谷系界隈の人間にとっては小泉今日子によるカバー曲が思い出深い。ちなみに、ヴォーカルのちのはじめは、歌手の尾藤イサオのバックバンド、ザ・バロンでベース&ヴォーカルを担当していた若子内悦郎であります。

 

02.愛のバラード/大野雄二
(1976年3月16日リリース)

1970年代から80年代にかけて、日本映画界で一大ブームを巻き起こした角川映画の記念すべき第1作目であり大ヒット作「犬神家の一族」(1976年)。その劇中を彩った印象的な映画音楽は、時代を越えて愛され続けていますが、そのなかでもひときわ美しいメロディで有名なメインテーマをピックアップ。和楽器の琴をフィーチャーしながらも、さまざまな音楽のエッセンスを取り入れた和を逸脱した斬新なサウンドメイクは、時代を経るごとにさらに評価されていくことになります。音楽はTVアニメ「ルパン」シリーズを手掛けることになる大野雄二。本サントラ盤には未収録ですが、シャンソン歌手の金子由香利によるヴォーカル・バージョンも存在します。

 

03.バラードまでそばにいて/上田正樹
(1982年12月1日リリース)

1970年代に沸き起こった関西ブルースシーンを代表する伝説的なブルースバンド「上田正樹とサウス・トゥ・サウス」で、ルーツミュージックに根ざした関西ソウルを発信していたなにわが誇るソウルシンガー。ソロ作7枚目となる名作「AFTER MIDNIGHT」ではアーシーなイメージから一転、AORやブルー・アイド・ソウルを経由した洗練されたシティポップスへと衣替え。林哲司が作曲した不朽の名作「悲しい色やね」が大ヒットを記録しました。収録曲の「バラードまでそばにいて」も彼特有のハスキーヴォイスと、名アレンジャーの井上鑑によるメロウでアーバンなサウンドが素晴らしくマッチ、まさにバラードといった趣です。

 

04.流星とバラード/東京スカパラダイスオーケストラ
(2010年1月27日リリース)

メジャーデビュー20周年のアニバーサリーイヤー第1弾としてリリースされたヒットナンバー。2002年の大ヒットシングル「美しく燃える森」に続く、奥田民生とのコラボ作。疾走するトーキョースカのリズムに、いつになく大人の色気を振りまく奥田民生の色艶ある歌声。ダンディなバラードナンバーがあるとすれば、まさしくこれ! ちなみに、フェスのバックヤードでスカパラとユニコーンが顔を合わせる機会が多々あり、冗談半分で「そろそろまた俺が歌ってもいいんじゃない?」と言われたことがきっかけだったとの逸話があり。

 

05.哀愁とバラード/ACO
(1999年1月30日リリース)

自身の同棲時代を振り返ったという私小説的な激情のナンバーで、発売当時、音楽マニアから圧倒的な評価を得た大傑作。フォーキー、R&B、エレクトロニカといった音楽的要素をJ-POPへと見事に着地させています。「夕べ 部屋に鳴り響いたメロディは 甘い生活が残していった 切ないだけのバラード」。このとき彼女は21歳。さまざまな行間を読ませるこの言葉、恐れ入ります。プロデュースは当時、新進気鋭のトラックメーカーとして名を馳せていたKen Ogata。ザラついた印象的なギターはDragon Ashの降谷健志によるもの。以降、ACOは電気グルーヴを脱退した砂原良徳を制作に迎えて、傑作アルバム「absolute ego」を発表します。

 

06.The Ballad Of Dorothy Parker/プリンス
(1987年3月30日リリース)

プリンスらしいミッドテンポのクールなファンクナンバーで、ドロシー・パーカーなる女性ウェイトレスとの出会いと情事の秘めごとを「ドロシー・パーカーのバラード」として歌ったもの。複雑極まりない高度のサウンドプロダクションに、当時のミュージシャンたちは絶望したとのエピソードがあります。歌詞中にドロシーの好きな曲としてジョニ・ミッチェルの「ヘルプ・ミー」が登場しますが、その歌の一節をプリンスが歌う箇所がありますので、そんな彼の遊び心にも注目してみてください。2枚組の大作「Sign ‘O’ The Times(サイン・オブ・ザ・タイムズ)」に収録。

 

07.Ballade de Melody Nelson/セルジュ・ゲンスブール
(1971年3月24日リリース)

稀代の音楽家であり、映画監督であり、スキャンダラスなプレイボーイでもあったフランスが誇る今は亡き異端児、セルジュが手掛けたコンセプト・アルバム「メロディ・ネルソンの物語」。ニュー・ロック的なアプローチで、アヴァンギャルドな作風の楽曲が多いなかでも、異彩を放っているのがこの「メロディ・ネルソンのバラード」。当時のパートナーであり事実婚の関係にあったジェーン・バーキンのポエトリー・リーディング(?)がチャーミングなデュエット曲。発売当時はまったく見向きもされなかったが、早すぎた名盤として90年代に入って世界中のDJを中心に再評価されました。

 

08.Ballade de Johnny Jane/ジェーン・バーキン
(1976年10月リリース)

セルジュ・ゲンスブールが監督と音楽を担当し、ジェーン・バーキンが主演を務めたカルト映画「ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ」の挿入歌。劇中を彩る超絶セクシーすぎるタイトル曲があまりにも有名ですが、「ジョニー・ジェーンのバラード」も人気の高いバラード作。「ヘイ、ジョニー・ジェーン 君は覚えてる? ゲンスブールの映画『ジュテーム・モワ・ノン・プリュ』って素敵なテーマ曲を」で始まる遊び心にあふれたナンバーで、ピアノの旋律とアコースティックな調べが印象的な甘い甘い仕上がり。ときおりインサートされるスライドギターも耳に残ります。なんとなく秋になると聴き直したくなるナンバーでもあります。

 

09.Pretty Ballad/キース・ジャレット
(1969年リリース)

ジャズ・ピアニストのキース・ジャレットがキース・ジャレット・トリオ名義で発表した、1968年発表のライブアルバム「サムホエア・ビフォー」に収録。ビル・エヴァンスの影響が見え隠れする、とびきり上質な夜のムードを醸すピアノジャズ。静寂の美しさとほどよい物憂い加減がよく、これから深まっていく秋の夜長にしっとりと聴けるはず。ベースはチャーリー・ヘイデン、ドラムスはポール・モチアン、そしてピアノはもちろんキース。

 

10.Ballade pour Marion/リシャール・ガリアーノ
(2016年10月28日リリース)

ジャズ、ブラジル音楽、タンゴを始め、世界各国の様々な音楽性をクロスオーバーさせた独自の音楽性で人気の世界最高峰のアコーディオン奏者。本作は2016年に発表したアルバム「NEW JAZZ MUSETTE」に収録されているとびきりジャジーなバラード作。パリの下町で長く愛されてきた、アコーディオンをフィーチャーしたワルツタイプのミュゼットがジャズと接近。不思議と郷愁感を誘うナンバーで、何度でも聴きたくなってしまいます。

 

いかがでしたでしょうか? バラードと名のつく楽曲は、洋楽邦楽問わずにまだまだたくさん「Spotify」に存在しますので、皆さんのお気に入りのあの曲、この曲をぜひ探してみてくださいね!