あらゆるカルチャー、エンタメを先取りして商品展開する「ヴィレッジヴァンガード」。メディア関係者の中には、次に来るエンタメのヒット予測をヴィレッジヴァンガードの店頭で学ぶ……なんていう人もいるほどだそうです。前回に続き、後編の今回は【コミック・音楽】のヒット予測を、ヴィレッジヴァンガードの旗艦店でもある下北沢店の鈴木優香さん(コミック担当)、大野秀美さん(音楽担当)に話を伺いました。
【関連記事】
ヴィレヴァン下北沢店の店長に聞いた2020年にヒット確実のカルチャーたち10作品
【コミック】変わった境遇や複雑な心情を描いたものがトレンド!?
ーーまず、コミックでヒットしそうな作品をご紹介ください。
鈴木優香さん(以下、鈴木) ヒットしそうというか、すでにヒットしていて、今時点でも在庫が追いついていないのが平庫ワカ先生の『マイ・ブロークン・マリコ』です。主人公はOLでちょっとボーイッシュな女の子なんですけど、親友が亡くなってしまうんですね。その亡くなった子は実は、家庭で暴力を受け、男関係でも暴力を受け、かなりかわいそうなんですけど、その子の遺骨を持って主人公が旅に出る……といったストーリーです。
言わば、新しいストーリーものなのですが、でも、リアルで主人公の葛藤もふんだんに取り入れられてるのですが、とにかく感情移入ができる。そして、「その次を知りたくなる」という展開の作品なんですね。発売時に「これはいい!」と思ってすぐに入れたんですけど、全部売り切れてしまいました。
そして、新しいストーリーものということでいうと、野田彩子先生の『ダブル』というコミックも売れ始めています。演劇モノで、主人公は2人で、片方が天才役者、もう片方がその代役用の役者という設定です。天才役者の子は、台本が全く読めないんですけど、代役用の役者の子が支えてあげるストーリー。結果的に「2人セットじゃないと、演劇ができない」みたいになっているものなので、ちょっとBL寄りではあるのですが、絵の力がすごくて、つい引き込まれる作品です。
そして、今40代の方が特に買って行かれるのが雁須磨子先生の『あした死ぬには、』です。40代の女性が主人公なのですが、40代になって直面する様々な問題や葛藤を描いたもので、これはきっと同世代の方なら男女問わず共感できる内容だと思います。私はまだ20代なので、ほんわかした絵の雰囲気を楽しんでいます。
そして、田島列島先生の『水は海に向かって流れる』。現代版『めぞん一刻』のようなストーリーなのですが、ある高校生がオジサンの家に居候することになり、同居人のOLとの共同生活の中で様々な事件が起こるというものです。絵のタッチが綺麗でありながら、セリフがグサっと刺さるものばかりで、これが結構病みつきになります。映像化も決まっているそうですが、実現のあかつきには、今以上にヒットするんじゃないかと思っています。
ーーこれらの作品に共通するヒットの要素はありますか?
鈴木 うちのお店が下北沢にあるので、演劇とか、ちょっと変わったテーマのコミックが売れるということもあるのですが、普遍的なストーリーよりも、複雑な心情を描いていたり、変わった環境の作品のほうが最近は売れているように思います。最近は、特に30~40代の方が熱心にコミックを読んでくださっているイメージですね。
【音楽】ヴィレヴァンならではの、売れ筋バンドモノ
ーー続いて音楽ですが、ヒットしそうなアーティストの傾向からお聞かせください。
大野秀美さん(以下、大野) やはりライブハウスが多い下北沢ということもあって、お店では特にバンドの作品がすごく売れます。もちろん、シンガーソングライターの作品もあるのですが、バンドの中には特にお店でいち早く推して、後に大ブレイクしたケースもあります。なので、今回はバンドを中心に絞って、これからヒットしそうなものをご紹介させていただきたいと思います。
まず、Atomic Skipperという静岡のバンドです。平均年齢19.5歳の4人組なのですが、ボーカルだけが女の子で、他のメンバーが男の子。こう言うと、かわいい系をイメージされるかもしれませんが、これが常に拳をあげたくなるカッコ良いサウンド。演奏も曲のクオリティもメチャクチャ高いので、今年はみんなに知られるんじゃないかと思っています。実際、お店で流していると、立ち止まって手に取る方も沢山いらっしゃいます。
東京初期衝動。4人組のガールズバンドなのですが、かわいい見た目に対して、曲の内容が赤裸々です。ボーカルの椎名ちゃんは銀杏BOYZファンを公言していて、バンド自体も女版・銀杏BOYZのような感じです。ヴィレッジヴァンガード限定のグッズを作らせてもらったんですけど、全国各地からいっぱい注文が来る状態です。おそらく今年はもっと盛り上がると思います。
Unknöwn Kunもオススメです。これはバンドというよりソロユニットで謎に包まれているアーティストなのですが、歌詞が面白い。ほぼ英詞なのですが、たまに日本詞が出てくる。まだインディーズなのに、YouTubeの再生回数も多く、注目されていることが伝わってきます。
CASANOVAFISHというバンドもうちのお店でよく売れています。男女混合の4人組の若いバンドなのですが、青春ガレージパンクみたいな音楽で、同世代よりも、少し年上の30代の方がよく買っていかれます。
tetoというバンドも。昨年、あちこちのフェスに出て評価が高かったバンドで、良い意味で青春の青臭さが残るバンド。サウンド自体は激しいのですが、激しめの音楽を聴かない人からの評価も高く、こちらもさらに多くの人に刺さりそうに思います。
さらに、ニガミ17才というバンドも感染力がありそうです。すでにテレビ出演も多いバンドなのですが、同じ歌詞を繰り返す曲が多く、脳内再生もエンドレスになります(笑)。このバンドは特に今年、多く耳にすることになると思います。
【音楽】バンドモノの旬の共通点は、ジャンルに捉われないもの
ーー大野さんが注目するバンドはまだまだありそうですね(笑)。
大野 はい、まだまだあります(笑)。
続いてKEYTALK。彼らは下北沢発の4人組バンドで、ヴィレッジヴァンガードではだいぶプッシュさせていただいています。すでにメジャーバンドですが、昨年移籍をしてリリースした6枚目のアルバムを今でも大々的に押しています。(KEYTALKファンの中では売れているから展開している。と、いうよりも下北沢出身のバンドで、KEYTALK=VV下北沢のイメージがついているから……!)。踊りやすい曲が多く、しかし歌詞は深かったりして、そこが人気の理由だと思います。
次は、ヤバイTシャツ屋さん。大阪のスリーピースバンドですけど、もはやバンドだけじゃない破天荒な活動で知られています。自分たちがやりたいこと=5.5、バンド=4、ちゃんと歌う=0.5みたいな(笑)。でも、昨年は沢山のフェスに呼ばれて、どこでもお客さんでパンパンになっていました。今年はもっと盛り上がるんじゃないかと思います。
そして、ヴィレッジヴァンガードとして力を入れているのが、山内彰馬さん、uguis、SONOSUKIMAKARA。山内彰馬さんは元Shout it Outというバンドの方ですが、ヴィレッジヴァンガードで売れているのがソロ活動の作品。まだ23歳なのに声が綺麗で歌もうまい。アンプラグドの声とギターの音だけなのに、人を引き込む力があります。
そして、uguisとSONOSUKIMAKARAは、どちらも立川発のバンド。uguisは、さまざまなジャンルの曲を演奏するバンドで4人全員とても個性的です(笑)。対して、SONOSUKIMAKARAというバンドは、uguisのドラムとベースの子がいるスリーピースバンド。こちらは完全なインストゥルメタルで、最近は電子音も取り入れてより面白いサウンドを奏でています。
この3アーティストはヴィレッジヴァンガードとしては特にプッシュしていきたいアーティストですね。
ーーこれまでご紹介してくださった、ヒットしそうなバンド、アーティストに共通するものはなんですか?
大野 やっぱりバンドごとの個性が強いものが多いですね。既存のジャンルなどのバンドではなく、自分たちのスタイル、個性を貫いているような。そういうバンドって、最初はなかなか伝わりにくいかもしれないですが、一度伝わると、頭から離れなくなります(笑)。特に今年ヒットしそうな、今回紹介したバンドは、どれもそういう病みつきになるようなものが多いと思います。ぜひチェックしてみてください。
さすがヴィレヴァン! どれも個性的なコミック、音楽ではありましたが、ちゃんとヒットのツボをリアルに抑えて紹介していただきました。ぜひこの記事を参考に、今年ブレイクしそうなエンタメをいち早くチェックしてみてください!
撮影/我妻慶一
【フォトギャラリー(GetNavi webにてご覧になれます)】