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2023/11/11 10:00

「これは“もう一人の自分”が綴っている言葉なんです」キャイ~ン・ウド鈴木が自身で書き溜めた短歌を書籍化「ウドの31音」

お笑いコンビ・キャイ~ンのウド鈴木が、短歌集『ウドの31音』(飯塚書店)を発売した。何年もの間、X(旧Twitter)で投稿をし続けた自作の短歌をまとめた一冊で、4月に発売されて以降、各所で話題になり「あのウドちゃんが短歌!?」と驚くお笑いファンも多い。今回は、念願であった書籍化について、その思いを聞いた。

 

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:kitsune)

ウド鈴木●うど・すずき…1970年1月19日生まれ。山形県出身。天野ひろゆきとコンビを組むキャイ~ンではボケを担当。X(旧Twitter)

【ウド鈴木さん撮り下ろし写真】

言いたいことが多すぎて…「短歌というルールがあれば、伝えられるんじゃなかって」

──今年4月に短歌集を発売するまで、長い間、X(旧Twitter)で短歌の投稿を続けていらっしゃいました。初めに投稿を始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

 

ウド そもそもなんですけど、僕がX(旧Twitter)を始めたのは、当時放送されていたバラエティ番組「リンカーン」(TBS系)の企画からだったんです。特にこれを伝えたいって強い意志があって始めたわけでもなかったので、何も考えず頭の中に浮かんだことをふんわり綴って行って、108投稿目で一旦辞めたんです。

 

──煩悩の数で辞めたんですね。

 

ウド はい。それで3年以上経ってから、今度は自分の考えや思うことを発信してみようかなと思い立った時期が来た。明確な意思がありましたね。そこでまた、投稿を再開したのですが、今度は文字数の問題が……。

──140字という制限がありますもんね。

 

ウド 自分の思ったことを投稿しようとすると、すぐ文字数がパンパンになっちゃうんですよ……。僕、昔からそうで、番組のアンケートなんかも回答欄のカッコから、いつも文字が溢れちゃう。仕方ないから、余白部分に縦で書いたりしてたら、昔はファックスで返信していたから、全部答えが切れちゃったりして!

 

──あははは。伝えたいことが多すぎるというか。

 

ウド そうなんです。天野(ひろゆき)くんは、簡潔に分かりやすく書くのがうまくて、同じアンケートを書いても2行とかで終わっている。でも、その一言で天野くんの文章は面白い。僕の方はと言うと、面白い要点まで行きつかず寄り道ばかり。そこで、この癖をどうにかしようと思って、文章を端的にするために、ある一定のルールを決めようと思い立った。それが短歌だったんです!

 

──なるほど。文字数を制限するためだったんですね。

 

ウド はい。短歌は五七五七七の31文字。俳句や川柳だと五七五だから、ちょっと短いな……というのもあって、短歌の文字数がぴったりちょうど良かった。31文字という枠組みを決めておけば、言いたいことをまとめられるんじゃないかと考えたんです。

 

天野くんに「もう1人のウドちゃんの言葉だねと言われました

──短歌を投稿し始めて、周りの方の反応はいかがでしたか。

 

ウド 最初は全然(笑)。特に何も言われなかったですよ。ただその後、ツイートを見てくださる皆さんから、「ウドちゃんいいこと言うね」とか「私もそう思う」など、だんだんコメントを頂けるようになりました。

実は僕の短歌は、誰かに強いメッセージを込めて放っていた言葉じゃなくて、自分自身に向けて発している言葉が多かったんです。なので、見てくださっていた方々も初めは戸惑っていた部分があったのではないか、とは思います。

 

──なるほど。ご自身だけに言い聞かせているような言葉が多かったから、ということでしょうか。

 

ウド そうです。自分が言われたいようなことを綴っている、自分が元気になったり、自分の胸がほっこりしたりすることを書くようになっていたんですよね。それは、たぶん“もう一人の自分”がいて、僕を励ましてくれているんです。実際、天野くんにも「もう1人のウドちゃんの言葉だね。普段の仕事では表現できないことが、短歌に表れているんだね」と言われました。

 

──自分自身への言葉が多い理由は何なのでしょうか。

 

ウド 僕は人生で、何か大きなことを成し遂げたという経験がほとんどない、と根底では考えているんです。小さい頃から甘えん坊ですし、自分の甘えた部分を見ないふりをして生きてきた人間だと思っていて、途中で投げ出したり、やり遂げられなかったり、たくさん失敗をしてきました。

ただ、そこでさらに自分を責め立てて、自分を追い込むと余計悲しくなって、悪い方向に進んで居場所がなくなってしまう。それが分かっているので、ダメな僕でも認めてあげて心の拠り所になるようにと“もう一人の自分”が励まし始めたんだと思います。もう十分周りの皆さんには甘えさせて頂いてはいるんですけど…(笑)。

 

──そうなんですね。実際に、ポジティブな言葉が多くて素敵だなと感じていました。

 

ウド 僕自身に向けた私的な言葉ではあるんですが、見てくださる人が 僕と同じように自分に対してそう思ってもらえればいいな、とは思っています。

 

中学生の時のある失敗で…「幸せになるための方法に気づいたんですよ」

──子どもの頃や学生時代から文章を書くのは得意だったんですか。

 

ウド いや、全くでしたね。読書感想文でも、ほとんどあらすじになっちゃって、自分の感想は書けず、てんで駄目でした。卒業文集で書いたのも一言だけで、それは俳句でした。「大晦日 賽銭箱に 手を伸ばす」って詠んで。

 

──あははは! その頃から五七五のリズムはお好きだったんでしょうかね。でも、それはどういった意味で?

 

ウド 分からないです(笑)。もちろん実際にやってはいないですけど、大晦日にふと浮かんだ一句がなぜか頭の中に残っていて、文集に載せようと思ったんです! ほんとリズムだけは良いですよねえ。ただ、そういう一句を文集に載せてしまうような奴というか、褒められた子どもじゃなかったんですよ。

 

──あまのじゃく的な気質があったんでしょうか。

 

ウド そうかもしれません。人に認めてもらいたいけど、人見知りで何もできない。目立ちたいけど、面白いことができない。だから、みんなが静かにしている時に限ってワーッと騒いでみたりとか、誰かの邪魔をしに行ったりとか、そういう目立ち方をしていました。注目の集め方が分からなかったんですよね。

──なるほど。当時のウドさんなりに試行錯誤されてたんだとは感じます。

 

ウド 何の工夫もセンスも才能もないやり方ですよ。でも、そんな僕でも人一倍幸せになりたいって気持ちは強くて、何かやらなきゃとだけは考えていたんでしょうね。

それである時、雑誌の通販広告で「幸運のペンダント」ってものが載ってて、僕、それを買ったんです(笑)。送料込み7,700円で中学生にとっては大金です。でも、これで幸せになれるんだって思ったら、1週間で失くしちゃったんですよ!

 

──なんと!(笑)  それは辛いですね。

 

ウド 打ちひしがれましたね。それで、どうしたと思います? 今度は、おばあちゃんに「お小遣いくれ!」って泣きついて、もう1個同じペンダントを買ったんですよ! これでやっと幸せになれると。でも、結局そのペンダントも1週間で失くしてしまった!

 

──ええ……!? それは不運すぎます……。

 

ウド さすがに自分の学ばなさには、呆れましたね(笑)。でも、そんな時、ペンダントの箱と一緒に入っていた小さな手引きを手に取ったんです。すると、そこには「物事に積極的に取り組んで、人に感謝をして、いつも笑顔で過ごそう」と書いてあった。衝撃でした。幸せになるための本当の方法は、これなんだと気づいた瞬間でしたよ。それからは、幸せはお金で買えないし、人に感謝して生きようと考え始めたんです。

 

──その経験で、しかも中学生でその考えに至るのはすごいことです。

 

ウド それは、ずっと僕の心の中にあることで。それこそ短歌にも、その思いが宿っている。自分は立派な人間ではないし、天野くんや周りの人にも迷惑をかけてしまうけれど、感謝を忘れずに、ちゃんとした人間になろうよって。自分が自分に言い聞かせている。言い続けていれば、実際に本当になるかもしれないからと。

 

自分で出版社に営業も!「(書籍化は)人生を終える前にやっておきたいことの一つでした」

──そして、ついに短歌集を発売されました。こちらの本は、1ページに一首、短歌のみが掲載されている、なかなかシンプルな構成になっていますね。

 

ウド 僕の好きな詩人の三代目魚武濱田成夫さんの詩集が、そういったスタイルだったんです。それに感銘を受けまして。でも、僕がそういった構成や形式にこだわりすぎて、最初は書籍化が実現できなかったんです。周囲の方にはすごく頑張って頂いたんですけど、僕に柔軟性がなくて。でも、そこからやるだけやってみようと思って、自分で出版社さんに電話したんです。

 

──ご自身で営業したんですね。すごい。

 

ウド そこで、今回書籍化してくださった飯塚書店さんに出会うことができました。短歌集を多く手掛けている出版社さんで、社長さんが電話に出られたんですが、ものすごくビックリされていましたね(笑)。聞くと、うちの事務所の浅井企画と仕事をされた経験もあるそうで、そういったご縁も繋がって、書籍化することができました。

──本当におめでとうございます。紆余曲折ありながらも、本が発売されたお気持ちはいかがですか?

 

ウド 本当に感無量です。本を出したかった自分と、短歌を綴ってきた自分、そして自分が読んだ一首一首が喜んでくれてるんじゃないかなと感じます。自分のことだけど、もう一人の僕がいるのもあって、自分のことのように嬉しいというか。

 

──周りの方の感想はお聞きになられましたか?

 

ウド 正直、天野くん以外誰にも差し上げてないんですよ。気恥ずかしさもあるし、押しつけがましいかなって思う部分もあって(笑)。

 

──ウドさんらしい考え方だなと感じます。

 

ウド 誰かに読んでほしいというよりかは、自分自身が本を出して一つやり遂げたいという気持ちが一番強かったからだと思いますね。人生を終える前にやっておきたいことの1つだったので。なので、読者の皆さんにも、集中して読んでもらうというよりかは、何も考えずにぺらっとめくって閉じてもらう……そんなふうに読んでもらいたいですね。

 

「これからも天野くんと漫才をやっていきたい!」

 

──今後も短歌は詠まれますか?

 

ウド 一応、今回本を出したことで「短歌で気持ちを表す」ことは一区切りついたかな、と感じています。でも、また川や月を見ながら浮かんだ時に、ぽつりぽつりと詠みたいと思います。

 

──またウドさんの書く言葉が読みたいとは思います。

 

ウド 一度、ポケットビスケッツの活動で、「GREEN MAN」という歌を作詞したことがあるんです。その時は、テル(内村光良)さんに突然「次の曲のボーカルはウド!」と言われて、千秋ちゃんと共に、ビックリ仰天! そして「作詞もウド!」というテルさんの一声もあり、歌詞を書くことに。まさに青天の霹靂でした! ありがたかったですね〜! 改めて振り返りますと、いろいろな企画で歌詞を書かせていただいていて、ある時は、アーティストの後輩にお願いをして作詞をさせていただいたこともありました。また機会があったら、挑戦してみたいです!

──それは楽しみです。では、今回夢を1つ実現されたウドさんですが、今後やりたいことや、新たな目標はありますか?

 

ウド やっぱりキャイ〜ンの活動、そして漫才をやりたいっていうのはありますね。漫才は一番楽しい。ただ、今までは、天野くんが書いてくれた100%面白いネタを僕が120%でしっかり覚えるっていうシステムできてるんですが、最近は満足に覚えられなくなっちゃってきて。今後はちょっとパーセンテージを変えなきゃいけないですねえ~。

 

──(笑)。これからもお二人で漫才が見たいです。

 

ウド はい、ぜひとも! 漫才はやりたいですし、天野くんと一緒だったらなんでもいいんですけど、テレビ、ラジオ、舞台いろいろ続けていきたいです。

あと、個人的なことでいうと、僕の旅の師匠、神様である伊能忠敬が歩いた道を巡って旅をしてみたいですね。55歳から旅に出て、全国の測量を始められたそうで、私も自分の年齢を重ねてもいつか旅をしてみたい。いつかこの人生で成し遂げたいです。

 

──今後も応援しています。ありがとうございました。

 

【ウドさんが、いまのお気持ちとGetNavi WEBについて短歌を詠んでくれました】

 

 

<書誌情報>

ウドの31音

著者:ウド鈴木

出版社:飯塚書店
価格:定価800円(税別)

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