嶽本野ばら氏の同名小説を映画化したラブストーリー『ハピネス』が5月17日(金)より公開。本作で、余命1週間と告げられた高校2年生のヒロイン・由茉を演じる蒔田彩珠さんが本作の魅力や役づくり、劇中で印象的なロリータファッションへの挑戦などについて語ってくれました。
【蒔田彩珠さん撮り下ろし写真】
ロリータファッションをすることで由茉の気持ちが理解できました
──最初に、原作や脚本を読まれたときの感想を教えてください。
蒔田 恋愛映画自体がほぼ初めてでしたし、由茉は自分がこれまでやってこなかった役柄だなと思いました。言葉遣いや言葉の選び方がとても女の子らしく、かわいらしい役柄なので、それを自分が演じているところがあまり想像できなかったんです。そのため、不安な部分もあったのですが、雪夫役が窪塚(愛流)さんだということを聞いて、安心というか、楽しみになりました。脚本を読みながら、窪塚さんが演じる雪夫がすごく想像ができたので。
──南沙良さんとW主演された『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』以来の主演映画になりました。
蒔田 今回も窪塚さんとのW主演なので、そこまで不安はなく、窪塚さんと一緒に頑張れたらいいなって思っていました。そこで脚本を読んだとき、由茉には雪夫にはない強さや優しさがあって、幸夫には由茉にはない包容力を強く感じたんです。だから、役を演じるうえでも、そんなお互いに長けている部分で支え合う、寄り添い合うことを意識しようと思いました。
──由茉はロリータファッションに憧れているという設定です。
蒔田 その設定も、私の中ではかなり挑戦的でしたが、最初に衣装を着て撮影したときは、「見た目から役に入り込むことができた」という気持ちになりました。今回初めて着たのですが、由茉が一番好きなもの、キラキラ輝いて見えるものなので、ロリータファッションに身を包むことで由茉が幸せな気持ちになるのが、とても理解できました。
頻繁にコミュニケーションを取らなくても、役同士で通じ合える
──原作では「彼女」表記だった役柄が、今回の映画化に伴い、「由茉」という名前が付きました。演じるうえでの心境の変化はありましたか?
蒔田 「由茉」という名は、原作者の嶽本野ばら先生が付けてくださったのですが、役名は付いても、雪夫とお互い名前で呼び合うことはないんです。だから、それによって、お芝居が大きく変わるとかはなかったです。ただ、雪夫が「由茉!」と叫ぶシーンがあるのですが、そこだけ一瞬、無音になるんです。完成した映画を見たとき、そこの演出に鳥肌が立ちました。
──そのほか、役作りにおいて意識されたことは?
蒔田 雪夫に向ける表情と家族に向ける表情は、微妙に差をつけて演じました。家族の前の方が、ちょっと強め、逆に雪夫の前では甘えているというか、少しわがままを言える関係性を出そうと思いました。そういう意味では、雪夫は由茉を包み込んでくれる相手なのかなと思います。もし、私が病気になったときは、由茉のように強く優しくいられないと思ったので、由茉には共感というより、尊敬の気持ちの方が強いです。
──雪夫役の窪塚さんとの関係性は、どのようにして作られたのですか?
蒔田 窪塚さんはとても真面目な方で、近くで見ていても、ずっと雪夫という役に集中されていたと思います。そうやって、真っすぐ役に向き合いつつ、由茉に対しても、真っすぐ愛情を向けてくださっていたので、頻繁にコミュニケーションを取らなくても、何となく役同士で通じ合える気がしました。長いシーンや難しいシーンに関しても、篠原哲雄監督と3人で、「どのようにしたらいいか?」ということを話し合いながら作っていきました。
大阪ロケでは、たこ焼き三昧
──篠原監督の印象に残っている演出は?
蒔田 自分の病気を説明するシーンや発作が起きた後のシーンでは、どうしても沈んだ空気になってしまいがちなので、「なるべく雪夫が明るくいられるよう、由茉が明るく振る舞ってほしい」ということは、篠原監督から何度も言われました。なので、逆に由茉が雪夫を元気づける感じになれたかなと思います。
──大阪ロケでの印象的なエピソードを教えてください。
蒔田 道頓堀でのシーンではロリータファッションで撮影していたので、本当に多くの方から注目されていました。そのため、ちょっと緊張していたのですが、窪塚さんも背が高いので、さらに目立つんですよ(笑)。あと、たこ焼きを食べるシーンを撮って、ほかのシーンを撮り終えた後、みんなで閉店ギリギリの別のたこ焼き屋さんに行って、ホテルに持ち帰ったぐらい、たこ焼き三昧でした(笑)。
──もし、蒔田さんが由茉のように、あと7日間しか生きられないと分かったら、どんなことをしたいですか?
蒔田 私も由茉と同じで、好きな人と好きなところに行って、好きなものをたくさん食べると思いますね。お寿司が好きなので、お寿司のおいしいところに行きたいです。好きな人といえば、やっぱり家族や友だちは外せないので、みんな引き連れて行って、みんなと思い出を共有したいです。
ぜんぜんケンカしないペットたち
──Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」も話題の蒔田さんですが、周囲の反応はいかがでしたか?
蒔田 いろんな方から連絡があって、もうすごいです! 皆さんから「そんなに動けるんだ!」って言われました(笑)。撮影に入る4か月前ぐらいから、皆さんとアクション練習していたのですが、自分のアクションがどんなふうに映っているのか不安もありましたけれど、結果よかったですね。
──蒔田さんのこだわり、他人に負けないと思えることを教えてください。
蒔田 今、実家で犬と猫とフェレットを飼っているんですが、動物へのこだわりもありますし、性格がよくて、優しいいい子しか飼っていないので、ペットを選ぶ能力はすごいんじゃないかと思いますね。ウチは代々、犬派の家庭だったのですが、私の決断で初めて猫を飼ったんです。その後にフェレットが入っても全然けんかをしない。本当にいい子たちで、みんな仲よく過ごしています。
──現場に必ず持っていくモノやアイテムについて教えてください。
蒔田 セリフを覚えるとき、撮影日の前々々日ぐらいに、当日撮るシーンのセリフを必ずメモ帳に書き出すのですが、そのメモ帳は必ず持っていきます。それで台本がなくても、すぐにセリフが出てくるようにするんです。あと、緑茶を飲むと落ち着くので、お水より緑茶を飲むことが多いです。コンビニで売っているものなら、利き緑茶もできますね(笑)。
──ちなみに、最近ハマっていることは?
蒔田 冬から春にかけては、ペットを膝に置いて、編み物ばかりしていました。コロナ禍で何もすることがなかったときに、手芸が得意な母に教えてもらったことで、一気にハマったんです。とても集中してやっているので、イヤーマフなら5時間ぐらいで編めますし、たまにドラマの現場にも毛糸と編み棒を持っていって、控室でずっと編んでいます。
ハピネス
5月17日(金)より全国公開
【映画「ハピネス」よりシーン写真】
(STAFF&CAST)
監督/篠原哲雄
原作/嶽本野ばら「ハピネス」(小学館文庫刊)
脚本/川﨑いづみ
出演/窪塚愛流、蒔田彩珠、橋本愛、山崎まさよし、吉田羊
(STORY)
高校の美術室で出会い、恋に落ちた雪夫(窪塚愛流)と由茉(蒔田彩珠)。幸せな日々を過ごしていたある日、雪夫は由茉から突然、彼女の余命があと1週間しかないことを告げられる。心臓に病気を抱える由茉は、すでに自分の運命を受け止めており、残された人生を精いっぱい生きようと決めていた。憧れていたファッションに挑戦し、大好きなカレーを食べに行き、そして何よりも残り少ない日々を雪夫と一緒に過ごしたいと話す由茉に、雪夫は動揺しながらも寄り添うことを決意する。
公式HP:https://happiness-movie.jp/
(C)嶽本野ばら/小学館/「ハピネス」製作委員会
撮影/映美 取材・文/くれい響 ヘアメイク/山口恵理子 スタイリスト/小蔵昌子