「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!」の後編「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:」が8月9日(金)より公開される。原作は「まんがタイムきららMAX」で連載中のはまじあきの4コマ漫画。極度の人見知りで陰キャな“ぼっち”こと後藤ひとりが伊地知虹夏、山田リョウ、喜多郁代という個性的なメンバーと共に“結束バンド”としてバンド活動をする物語だ。2022年秋のテレビアニメが楽曲とともに人気を集め、劇場総集編として劇場のスクリーンへ。6月に公開された前編「劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:」も大ヒットし、興奮冷めやらぬ中で迎える後編を前に、後藤ひとり役の青山吉能さんに話を聞いた。
◆劇場総集編の話を最初に聞いた時、率直にどう思いましたか?
めちゃくちゃさらっと伝えられたんです。今いるような会議室みたいなところで、別件の稼働をしている時に、「そういえば劇場総集編をやるんですけど、その後にどうのこうのどうのこうので……」「えええ、ちょっと待って、ちょっと待って!」みたいな(笑)。本当すごいことですよね、劇場総集編になるって。映画館で観るということはテレビシリーズとは違ってお金を頂くわけですから、映像も音楽もそれに見合うクオリティーでないといけないですし、期待値だって上がる。せっかくお金を使っていただくのに損したなって思われないように。その責任はいち演者として感じました。新録がない以上、声優にできることが何もないのがもどかしかったですが、その分、スタッフさんの妥協のない仕事ぶりが皆さんに直で届くでしょうから、“スタッフさん頑張れ!” ってとにかく応援していました。
◆テレビシリーズの最初のアフレコのことは覚えていますか?
今でも忘れられません。かなり長時間かかってしまったんです。帰れるかな、電車まだあるかな……ってくらい。1話はほとんど後藤ひとりしかしゃべっていないので、私のせいなんですけど。どの作品でも1話はキャラクターを固める作業にどうしても時間がかかってしまいがちではあるのですが、後藤ひとりは本当に難しくて。“内側にいる後藤ひとり”と、“外側から見えている後藤ひとり”が全然違うんです。
例えば、本人は明るく「おはよう」と言っているつもりでも、周りにはそうは聞こえない。だから、ただ明るいだけだと、相手に明るいまま届いてしまう。それだとダメだというディレクションを何度も頂きました。「あ、はい」のひと言にしても、全部床に、地に投げるように。虹夏ちゃんに向けてしゃべっているんだけど、そうなっていないように。そこのコントロールをしないといけないのに加えて、モノローグになると感情をそのまま発するので、そのスイッチの切り替えも難しかったんです。
それでも音響監督の藤田さんが「まぁ、こんなもんかな」と妥協せず、「もっとできるはず!」と期待を込めて向き合ってくださったんだと思います。おかげで何とかその日は終えられたのですが、きっとみんな私を選んで後悔しているだろうな、青山にしなければよかったなって思っているだろうなって。正直、達成感とか、この作品に携われた幸せとかよりも、自分を責める気持ちの方が強かったんです。
そしたら、CloverWorksの梅原さん(梅原翔太アニメーションプロデューサー)が席を立って拍手して、スタンディングオベーションで私たちキャストを迎えてくださって。そんなこと、最終回でもなかなかないんです。その後、原作のはまじ(あき)先生からも「皆さん、完璧でした。後藤ひとりを青山さんに任せてよかったです」というお言葉を頂いて、恥ずかしいくらい“でぇ号泣”しました(笑)。座長だし、この座組の中では先輩でもあるのでカッコいいところを見せたかったのに、私ばかり時間を取らせて最悪だ、情けないと思っていた時だったので余計に。もう本当、神か、舞い降りて来た天使かみたいに思えるお言葉で、めちゃくちゃ泣いたのを覚えています。
◆結束バンドのライブシーンについても、テレビシリーズの時の思い出をお聞かせください。まずは、劇場総集編前編のクライマックスにもなった、「STARRY」での初ライブシーン。
アニメのアフレコの歌録りって、大抵は別日に、別スタジオでしっかり行うんです。でも、あそこは緊張のあまり結束バンド全員がグダグダになってしまうシーンだったので、「ギターと孤独と蒼い惑星(ほし)」は今この場で歌録りしちゃおうと急に決まったんです。当然、(喜多役の)長谷川(育美)さんは歌う準備をしてきていないから「え、歌うんですか!?」みたいな。歌わない私たちにまで緊張感が走る中、譜面台が持って来られて、歌詞が置かれて。セリフとも分けずに流れのまま歌録りを始めるという、前代未聞のやり方だったんです。でも、そういうやり方だったからこそ生まれた緊張感や臨場感が歌に乗っていて、めっちゃいいんですよね。長谷川さんはそれどころじゃなかったと思いますけど(笑)、見ているこっちは“激感動”していました。結束バンドのアルバム収録バージョンとは違うので、ぜひ聴き比べてみてほしいです。
で、そのグダグダの空気を変えたくて、後藤ひとりは「あのバンド」のイントロをアドリブで弾き始める。あそこは後藤ひとりが頑張ったシーンで、私が声優として何かできたことはあまりないんですけど。人前が苦手で緊張しいの後藤ひとりがああやって先陣を切って、それに呼応するように虹夏ちゃんとリョウさんが目配せして続いて、喜多ちゃんが歌う、というのはエモすぎましたね。
◆後編の見せ場にもなっている、文化祭でのライブシーンはいかがでしょうか?
あのシーンは当時、キャスト全員で集まって見たんです。アフレコをしてからしばらくたっていましたし、画や音がちゃんとついた状態で見るのは初めてだったのもあって、こんな臨場感ある始まり方をするんだ! ってすぐ引き込まれて。実際にライブに来たような、いち観客になったような気分でした。あれが劇場で流れたら暗闇の中で画面だけが光って、まさにライブのような環境になるでしょうから、より観客に近い気分を楽しんでいただきたいです。
◆最後に、ファンの皆さんへメッセージをお願いします!
そもそも原作の「ぼっち・ざ・ろっく!」は4コマ漫画なので、起承転結がたくさんあるんです。それを脚本の吉田恵里香さんが、テレビシリーズでは24分×12話にまとめてくださって。その手腕が光った“神脚本”を、劇場総集編ではさらにどうまとめてくださっているのかが注目ポイントだと私は思っています。4コマ漫画だからこその面白いワード、面白いシチュエーションがポンポン出てくる作品なので、そこだけをぎゅっとするとオチだらけ、ボケだらけになりかねない。どこを削ってどこを出すのか。その大ボケ・小ボケのさじ加減を劇場で味わっていただきたいです。
「ぼっち・ざ・ろっく!」がお好きな方は、物語の内容はもうある程度分かっていると思うんです。そういう方には、背景の描き込みや、手に持っている小物などの細かい小ネタにも注目していただきたいです。「STARRY」に貼ってあるポスターの人ってひょっとして……とか。スクリーンの大画面ならきっとよく見えるはずです。
一方で、「ぼっち・ざ・ろっく!」の内容まではあまりよく知らないけど、結束バンドの曲は何となく知っているという方もいらっしゃると思うんです。そういう方には、その曲がこの作品でどんな影響を及ぼしているのか、この機会に知っていただきたいです。そうすることで、曲の意味もより深く知ることができるはずです。もちろん曲単体でもめっちゃいい曲ばかりなのですが、例えば作詞は後藤ひとりで、作曲は山田リョウなんだ、とか。それを知るだけでも、「後藤ひとりってこんな歌詞書くの?」「リョウさんの作曲センス、ヤバっ!」ってなりますし。結束バンドって特にベースがバチイケの曲が多いので、リョウさんっぽさが出ているなとか。リョウさんが何でこういう楽器編成にしたのかとかも見えてきたりするので。曲が作品と密接に関わっているので、そこをぎゅんってつなぎ合わせてみていただきたいです。
PROFILE
青山吉能
●あおやま・よしの…5月15日生まれ。熊本県出身。出演作は、『ポケットモンスター』(ぐるみん役)、『劇場版 オーバーロード 聖王国編』(ネイア・バラハ役)、『僕の妻は感情がない』(小杉あかり役)など。
作品情報
劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:
2024年8月9日(金)全国公開
原作:はまじあき
監督:斎藤圭一郎
シリーズ構成&脚本:吉田恵里香
制作:CloverWorks
キャスト:青山吉能、鈴代紗弓、水野朔、長谷川育美 ほか
(c)はまじあき/芳文社・アニプレックス