ファッション
2020/3/4 18:30

サステナビリティを語るなら「生分解可能なデニム」をはくべし!

英国のファッションデザイナーであるステラ・マッカートニーは1月14日、自身のブランド「Stella McCartney」で生分解可能なデニムを展開すると発表しました。ミュージシャンである父のポール・マッカートニーと同様に厳格な菜食主義者として知られるステラは、動物愛護、環境保護活動にも積極的です。そんな彼女が打ち出した、プラスチックやマイクロプラスチックを一切使用しないこのデニムはどのようなものなのでしょうか?

 

環境に良いだけじゃない

↑デニムからファッションと社会を変える

 

2020年5月に発売予定のStella McCartneyのストレッチジーンズは10 種類ほど用意されています。このデニムシリーズは、イタリアの老舗ジーンズメーカーのカンディアーニが開発した、化学繊維を一切使用しない「コレーバ」というストレッチデニム生地が使われているのが最大の特徴。

 

天然素材のデニムを強調するなら質のよいコットンをアピールすれば済むところですが、ストレッチデニムの伸縮性を生み出すにはコットンだけでは不十分とされています。また、伸縮性機能を出すためには、本来は石油由来の化学製品である弾性素材を織り込まなければなりません。

 

しかし、カンディアーニ社は化学製品を使用せずに、特殊な技術で天然の弾力素材をコットン生地のなかに織り込み、伸縮性に優れた製品の開発に成功したのです。しかも耐久性は通常のデニムとほとんど変わらず、洗濯などのメンテナンスもデニム製品並みに可能であると同社は説明しています。

 

さらに染料もすべて生分解可能で、オランダのキングピン社が開発した「キロテックス・ベジタル」という天然由来の染料が使われています。ポリビニルアルコールのような合成樹脂や化学製品の代用品には、キノコや海藻から抽出された成分を用いるとのこと。そうした結果、コレーバは100%生分解が可能な、極めてサステナブル性の高い製品となりました。

 

実は、デニムにコレーバを使用するのはStella McCartneyが初めてではありません。オランダのプレミアム・ジーンズブランドのデンハムが「ライフ・イズ・ムーブメント」と冠したデザインラインの1つとして初めて用い、昨年11月に世に送り出しています。

 

カンディアーニ社がコレーバの開発をスタートさせたのは2015年。サラミの表皮に生物由来の弾力性のある“糸”があることから着想を得て開発に成功しました。さらに、サステナブル性だけではなく、パフォーマンス面でも商品としての価値を満たそうと工夫に工夫を重ね、コレーバは従来のデニムと同じように洗濯ができるうえ、耐久性でもまったく遜色のない製品として仕上がったそうです。

 

コレーバを使ったデニムの価格は3万円前後と一般的なデニムよりも高くなっていますが、その点についても、今後は生産量のスケールアップなどで価格調整したいとカンディアーニ社は考えているようです。

 

「現代は資源がどんどん減り、一方で地上は廃棄物で溢れているような環境。その状況で生分解できるような原料を使い再生可能な商品をつくり出すことは、私たちにとって義務であると考えています。デニムはこの革命の旗印になっていかなければなりません」と、カンディアーニのアルベルト・カンディアーニ社長は、スポーツウェア・インターナショナルに対して語っています。Stella McCartneyへの生地提供は、いわばこのビジネスが次の段階へ進んだと証拠とも見れるでしょう。

 

再生可能な素材を活用することは、アパレル業界でも盛んになってきました。化学製品にとらわれず天然資源の利用をうたったり、水の使用が少ないことをアピールしたり、ブランドが衣服を通してサステナブルなメッセージを社会へ向けて発信することは、ますます大切になっています。消費者もSDGsについて語るなら、生分解可能な伸縮素材コレーバなどを使ったサステナブルデニムをはかないといけなくなるかもしれませんね。