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2020/11/19 18:00

商品はすべてガチの1点モノ! SDGsと機能美が同居するモンドデザインの戦略

廃棄ビニール傘の再利用製品が、これまでになかった理由とは?

ーーいずれのブランドもどのようにして廃材を入手し、製品化されているのかが気になります。大変そうな先入観がありますが。

 

堀池 まず、廃タイヤチューブは、タイヤの履き替え時に廃棄されることとなり、日本国内では産業廃棄物としてある場所に集まります。そこで選別をして回収していました。今は海外から1~2か月に一度、何千枚かを素材として輸入しています。

↑日本国内の縫製技術が生かされた4ポケットのビジネスリュック。「SEAL モバイラーズバックパック」3万3990円(税別)

 

堀池 また、廃棄ビニール傘は主に駅や大きめの商業施設などで集めています。こういう場所では、意図的に捨てられるものもありますが、ほぼ「忘れ物」の傘です。しかし、忘れたビニール傘を取りにくる人はごく少数なため、一定期間保管された後、大半が廃棄されることになります。そういった廃棄される際のビニール傘を収集して素材にしています。

 

ーー想像では、廃タイヤチューブは洗浄と切り出しをすればすぐ素材になりそうです。しかし、廃棄ビニール傘は金属部品なども多く、素材にするのは結構な手間がかかりそうに思います。

 

堀池 そうですね。ビニール傘は、大きくわけてビニール、鉄、プラスチックの部品で成り立っています。「廃棄する」「リサイクルする」といった際は、すべて分解しないといけません。その手間とリサイクルに回した際に得られる費用が見合わなくて、だから皆さんが「やりたくてもできないもの」だったんです。

 

ーーそうなると、ビニール傘はどうやって処分されていくのですか?

 

堀池 埋め立てられたり、焼却に回されたりするという流れです。環境的には良くないことですが、再利用する際の費用が見合わないので敬遠される素材だったんですね。弊社でもずっと「ビニール傘を何かに使えないか」と思っていたんですけど、前述のような事情もあり、なかなか良いアイデアが浮かびませんでした。

しかし、ある時、齊藤明希さんというアーティストが「ビニール傘に手作業でアイロンをかけ、何枚か重ねて一枚にして販売する」という展示会をされていて、これがすごく面白かったのです。独特の質感に仕上がっているし、良いなと思いました。ただ、この時の齊藤さんは一点一点手作業でしたので、「量産させるためにはどうしたら良いか」という話をさせていただいて、そこで共同でPLASTICITYをはじめることにしたんです。

これまでに集めた廃棄ビニール傘は5000本くらい。廃棄ビニール傘を分解した後、齊藤さんが展示会で行っていたように4~6層に重ねてプレスして、それを縫製職人さんに出して、パターン通りに仕上げて製品化……というフローです。

↑まず廃棄ビニール傘を入手し、分解した後、綺麗に洗浄します

 

↑4~6枚重ねてプレス。強度を高めることに加え、メーカーごとに微妙に異なるビニールの厚みを均一にするための理由もあるそうです

 

↑プレスされたビニール。ここで独特の質感が生まれました

 

↑出来上がったビニール素材を職人さんに依頼。パターン通りの縫製へ

 

↑完成! 写真は「PLASTICITY サコッシュバッグ」8000円(税別)

 

↑これらのアナログ的な工程から2つと同じ表情がないのも特徴。こちらはしずく柄の廃棄ビニール傘の絵柄をそのまま活かしたもの。「PLASTICITY マルチショルダーケース」6700円(税別)

 

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