マスク姿が当たり前になった2020年以降、アイメイクが重視され、リップメイクはオフが常識となりました。でもやっぱり、リップメイクも楽しみたい———反動と、マスクプルーフのリップやリップが付着しにくい立体型マスクが登場したこともあり、いまマスクの下でリップを楽しむ人が増えています。
そして「屋外では条件次第でマスクを外しても良い」という政府の発表を受け、いよいよ“フルメイク回帰”が起きている模様。そこで、リップメイクの押さえるべきコツと今シーズンのトレンドについて、資生堂ヘアメイクアップアーティストの西森由貴さんに聞きました。
コロナ禍以降、メイクトレンドはどう移り変わった?
ヘア&メイクのトレンド情報分析を得意とする西森さんは、定期的に10代後半~70代までのメイクを楽しむ女性へのヒアリング調査や雑誌、コレクションから、時代が求めているニーズをキャッチしているといいます。マスク生活になって以降、メイクトレンドはどのように移り変わったのでしょうか?
・2021年春夏シーズン
「甘さのあるかわいらしいメイクが流行りました。ピンク系のやわらかい色味のアイメイクを、ふわっとぼかす感じです。マスク生活になったこともあり、目元を強調したくなる心理から、アイラインもマスカラも力を入れすぎてしまう傾向だったので、いかに引き算して抜け感を出すかがポイントでした」(資生堂ヘアメイクアップアーティスト・西森由貴さん、以下同)
・2021/2022年秋冬シーズン
「目元にラメを足すことで、かわいらしさから華やかさへと移行していきます。2021年はコロナ禍のマスク生活がすっかり定着したことで、リップの売れ行きが低迷した一方、雑誌では、気持ちを高揚させるアイテムとしてリップメイクの特集が増えました」
・2022年春夏シーズン
「甘さや抜け感、軽やかさというよりも、キリッとした女性像へとシフトしました。目元のアイラインにポイントを置いて、メイクでかっこいい印象に仕上げる傾向に」
2022/2023年秋冬シーズンのコンセプトは“同性があこがれる、かっこいい女性”
「今シーズンは、マスクの有無に関わらず、リップもチークも含めたフルメイクをプランニングすることに回帰していきそうです。カラーアイテムは、ほんのり足して肌なじみのよい雰囲気を演出。血色を出しながら、女性があこがれるかっこいい女性『ガールクラッシュ』へのニーズが求められています。媚びない力強さや、同性が見惚れる魅力がキーワードです」
ポイントを強調するのは、もう古い!?コロナ前と今シーズンのリップメイクはどう変わる?
フルメイクが当たり前だった2020年以前と、フルメイク回帰の2022年は、そのこだわり方に大きな違いがあるそう。
「2020年以前は、赤リップで口元を強調して目元はシンプルにする、逆に、目元を強調して口元はヌーディにするというような、ワンポイントを強調しつつ、全体でバランスを調整する傾向が好まれていました。
それが今シーズンは、すべてのパーツで“肌なじみ感”を大切にするのが特徴です。リップで言えば、輪郭をしっかりと描いて境目を作るのではなく、ナチュラルな色味が自然になじんでいるように仕上げていきます。全体の色味も肌との相性を見ていき、その人が持つ顔の雰囲気やパーツの魅力を引き出すように仕上げていくイメージです。
以前はまつ毛のボリュームアップとカールの強調がブームでしたが、今期は韓国メイクの影響もあり単純に濃さで際立たせるのではなく、自然なカールや長さなど、本来のまつ毛を生かして仕上げるのがトレンドです」
カラーや質感はなにが正解?最新のリップトレンド
なじみ感や血色感が最新トレンドというメイク。では、リップはどんな色味を選べばいいのでしょうか?
「数年前から、パーソナルカラー診断で自分の肌の色の傾向やどんな色が似合うのかを知ることができるようになりました。それにより、自分がイエベ(イエローベース)なのか、ブルベ(ブルーベース)なのか判断した上で、肌や唇の色味が映えるカラーのリップを選ぶ傾向が好まれるように。
今期は青みピンク系のリップが人気で、自分の肌の色の特徴を知りつつ、好きなカラーのリップ選ぶのがトレンドです。ちなみに青みピンク系とは、ローズやチェリーピンク、マゼンダなど、ほんのりと青みを感じる色合いのことで、顔の透明感のアップにも役立ってくれます」
・見た目以上に肌なじみがいい、淡いローズピンクリップ
「SHISEIDO メーキャップ カラージェル リップバーム 104」3850円(税込)
「一見、ピンク味が強そうに感じますが、つけてみると肌なじみのよいタイプ。唇の色味が強い方は、ファンデーションで軽く元の唇の色味を抑えた上から塗ると、よりナチュラルな印象に」
・温かみと艶をプラス。血色感を引き出すティントリップ
「マキアージュ ドラマティックリップティント BE203」2530円(税込)
「血色感のあるベージュで唇の色味を引き立てます。艶が出るティントタイプで乾燥せずに色持ちが良いのも魅力です」
・大人女性のこなれ感に。秋冬カラーの赤みブラウン系リップ
「クレ・ド・ポーボーテ ルージュアレーブル 22」6600円(税込)
「唇の色になじみつつも、しっかりと発色する赤みのあるブラウン系のリップ。大人の女性の血色アップにおすすめです。グロスタイプのリップを重ねて艶感をアップすれば、今季らしさがアップします」
・洗練されたうるおいを満たすリップグロス
「クレ・ド・ポーボーテ ブリアンアレーブルエクラ 2」4400円(税込)
「肌なじみの良いカラー。艶感が出て華やかな印象に。上の『クレ・ド・ポーボーテ ルージュレーブル 22』を軽くテイッシュオフしてから、重ね付けすると大人の洗練された唇が演出できます」
リップメイクからすっかり遠ざかっていた人も多いはず。リップメイクの手順やマスクに付着させないコツなど、プロのノウハウを教えていただきましょう。
プロが直伝! こなれ感が出せるリップメイクの手順
リップメイクからすっかり遠ざかっていた人も多いはず。さらに、こなれ感やなじみ感が求められる今期だからこそ、過去の塗り方では古臭さが出てしまう可能性もあります。プロのノウハウを参考に、流行りのリップメイクを極めていきましょう。
1.美容成分配合のリップを全体に塗る
「リップメイクをする際には、まず無色のリップクリームで唇に潤いを与えておきます。美容成分配合のものがおすすめです。ドラックストアで買えるような薬用リップでも大丈夫です」
2.使用する口紅を太めのブラシか指先に取る
「さきほどご説明したように、なじみ感がポイント。リップブラシを使う際には、こちらのような先端が太めで丸いタイプを使うことをおすすめします」
3.下唇の中央に色を置き、輪郭に向けて左右に伸ばしていく
「口紅を取ったブラシまたは指先を下唇の中央に置き、そこから左右に伸ばしてなじませていきましょう」
4.上唇の中央に置き、同じく輪郭に向けて左右へ
「再び、口紅をリップブラシか指先に取り、下唇と同様に、中央から輪郭への流れで左右に伸ばしていきます」
5.全体のバランスを見て、完成
「塗り残しやムラがないか、全体のバランスを確認すれば完成です。唇の色味が強くて、口紅の色味がうまく発色しない場合は、リップを塗る前に、ファンデーションで唇の色味を抑えてから3の工程に進みましょう」
マスクへの付着や落ちを抑えるリップメイクのコツ
マスクを付けた際にリップの色落ちを抑えるコツも、マスターしましょう。
「最近はマスクプルーフ対応の落ちにくいリップが出ているので、そちらを活用するのがおすすめです。普段のリップメイクで対策をする場合は、ティッシュオフをした後、唇中央のみに重ね塗りをしておくのがいいでしょう」
1.リップメイク完了後に唇の上からティッシュオフをする
「唇の上に半分に折ったティッシュペーパーを置き、親指で唇全体を軽くなぞるようにして表面の口紅を押さえます」
2.マスクに付きづらい唇中央に口紅を重ねる
「マスクに擦れづらい唇中央に色を足すイメージで口紅を重ね塗りします。この重ね塗りをすることで、色もちがよくなり、マスクにも口紅が付着しづらくなります」
今シーズンのメイクのテーマは、各パーツを丁寧に仕上げること。なじみ感と艶感を意識し、内側からの魅力を引き立てるようなカラーを選ぶのがポイントのようです。リップのトレンドカラーは青みピンク系ですが、自分好みの色で肌になじむように塗っていくのがコツだそう。
マスクをつけていても外していても、すべてのパーツのフルメイクで、大人っぽいクールな女性モードを楽しみましょう。
プロフィール
資生堂ヘアメイクアップアーティスト / 西森由貴
ニューヨーク、パリ、東京のファッションウィークでヘアメイクとして活動。2014年入社、資生堂ヘアメイクアップアーティスト。5年のサロン経験を経て、資生堂によるヘアメイクアップアーティスト育成所「SABFA」卒業。資生堂ではトレンド情報分析を担当し、定期的にメイク好きな女性たちへの聞き取り調査を行っている。そこで培った知識をヘアメイクに落とし込んで表現するのが得意。趣味はライブやフェスに行くこと。
資生堂ヘアメイクアップアーティスト HP