【西田宗千佳連載】iPhoneへの過酷なテストからわかった“故障の原因になるもの”とはなにか

ink_pen 2025/8/12
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【西田宗千佳連載】iPhoneへの過酷なテストからわかった“故障の原因になるもの”とはなにか
西田宗千佳
にしだむねちか
西田宗千佳

モバイル機器、PC、家電などに精通するフリージャーナリスト。取材記事を雑誌や新聞などに寄稿するほか、テレビ番組などの監修も手がける。ツイッターアカウントは@mnishi41。

Vol.152-3

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はApple製品の信頼性を支える、同社の「堅牢性ラボ」の話題。iPhoneやMacの故障を減らすためにどんな試験が行われているのか。

 

今月の注目検査施設

Apple

堅牢性ラボ

↑Appleの「堅牢性ラボ」では、iPhoneの耐水性試験も行われる。あらゆる方向から大量かつ高圧で水をかけるという、現実では起こりにくい状況で試験が行われている。

Appleは、iPhoneやMacなど、同社製品の堅牢性を確認するための「堅牢性ラボ(Durability Lab)」という設備を、世界各地に設置している。製品に過酷なテストを課して、どこまで堅牢で、どんな時に壊れるのかを確認するための設備である。

限界をチェックするためのものなので、なかなかに痛々しいテストも多い。iPhoneに猛烈な水圧でホースから水をかけたり、高い場所から落としたりといったテストを、筆者は実際に見学している。見学の範囲で製品が壊れることはなかったが、見ているとなかなかに心が痛む。

しかし、こうしたテストを日々繰り返しているからこそ“ちょっとした不注意でスマホをお風呂の中に落とした”ような時でも、壊れることは少なくなっているのだ。もちろん、絶対に壊れないことを保証するものではなく、“故障する確率を減らすもの”という性質なのだが。

取材中に聞いた面白い話がいくつかあるので、参考までに紹介する。

1つ目はスマホの画面割れの話。スマホを落としてガラスを割る……という故障はよくあるものだが、この故障、“床などに落ちた時より、そこから跳ねて2度目に落ちた時に壊れることが多い”ことが、検証によって明らかになっているそうだ。だからといって“1回目で拾えば壊れない”という話ではないのだが、どこから落ちると壊れやすいのか、どんな落ち方をすると壊れやすいのか、といった情報を分析し、落下に強い製品を作るには重要なものだ。

2つ目が防水の話。iPhoneには防水機能があるが、すべてのシーンで問題がないわけではない。お湯の中に長時間浸けたりすることは対象外。同時に、石鹸などの物質が付着した場合には速やかに拭くことが推奨されている。

実は石鹸よりも苦手なのが「サンオイル」や「濃い香水」だそうだ。こうしたものは水というよりは油に近いもので、使っている素材によっては、スマホの防水に使われている封止用パッキンを侵す可能性がある。過去に比べて改善はされているようだが、サポート対象ではないので、やはりこちらも速やかに拭き取ることが望ましいだろう。

我々の日常には様々な条件がある。ポケットの中の埃や手に付着した水ですら、本来は機械にとっては苦手なものだ。iPhoneに限らず、どこのスマホもそうした問題に対処するために様々な工夫をしている。不運にもそうした努力を潜り抜けるようなトラブルがあったとき、スマホは故障してしまうことになる。

では、故障対策や長期的な利用について、現在のスマホメーカーはどのように取り組もうとしているのだろうか。そうした部分については、次回のウェブ版で解説する。


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