ライブ翻訳って本当に便利? アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods Pro 3」を海外で試してみた

ink_pen 2025/10/3
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ライブ翻訳って本当に便利? アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods Pro 3」を海外で試してみた
山本 敦
やまもとあつし
山本 敦

オーディオ・ビジュアル誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。ハイレゾに音楽配信、スマホなどポータブルオーディオの最先端を徹底探求。海外の展示会取材やメーカー開発者へのインタビューなども数多くこなす。

先進的なノイズキャンセリング機能を搭載するアップルのワイヤレスイヤホン「AirPods Pro 3」が発売されました。筆者はちょうど海外取材に出かける用事があったので、さっそく新しいAirPods Pro 3を旅のお供にしています。実際に、飛行機内や旅先で上手に使いこなす方法を紹介しましょう。

↑アップルの最新ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro 3」を様々な角度からテストしました。

AirPods Pro 3から最高のサウンド・ノイキャン効果を引き出す方法

AirPods Pro 3は、アップルによる独自の強力なノイズキャンセリング、外音取り込みモードや空間オーディオ再生など、多彩な機能を搭載するワイヤレスイヤホンの最新フラッグシップです。今年のモデルには心拍センサーが内蔵され、iPhoneやiPadと組み合わせればワークアウト中に心拍を計測したり、ヘルスケアアプリに記録を保存したりできるようになりました。

筆者は発売前の先行レビュー期間から、3週間ほどAirPods Pro 3を試しています。AirPods Pro 2に比べると、サウンドの立体感がアップした印象です。特にボーカル、楽器による演奏の鮮明度が増しており、音場の空間再現も広々としています。

旅の道中、iPadに保存した映画を機内で視聴すると、映像の中に引き込まれるような感覚が楽しめました。映像の空間内に配置された効果音の位置、音の移動感などが従来モデルより鮮明にわかります。ノイズキャンセリングの実力についてはこの後に触れますが、エンジンノイズなどがうるさい機内でも、まるで映画館のようにシンと静まりかえった環境でコンテンツを楽しめます。

↑トレードカラーのホワイトを継承したAirPods Pro 3。デザインも第2世代のモデルから大きく変わっていません。

これだけの完成度なら、機内に持ち込む手荷物に大きなヘッドホンを入れるスペースを確保する必要はもはやないと言っていいでしょう。最近は特に、海外行きの飛行機に乗るとヘッドホンではなくAirPods Proを使っている人をより多く見かけます。

ただし、AirPods Pro 3を持って旅に出かける前に、自身の耳のサイズにベストフィットするイヤーチップを選ぶ作業を必ず済ませておくことをオススメします。面倒に思う人もいるかもしれませんが、遮音性や装着感を向上させられることを思えば、購入後に最初にやっておくべき「ユーザーの心得」と言っても過言ではありません。

イヤホンをiPhoneにペアリングすると、「設定」アプリの中にAirPods Pro 3が現れます。「音響の密閉状態をテスト」というメニューがあるので、こちらを選択してイヤホンの装着状態を確かめます。耳にあうサイズのイヤーチップを選んで、イヤホンを正しく装着できていれば、密閉状態が良好であることを知らせる緑色のアラートがiPhoneの画面に表示されます。

↑同梱される5種類のイヤーチップから自分の耳のサイズに最も合うものを選びます。左右のサイズが異なる場合も十分にあり得ます。

音響の密閉状態が最適でないと、例えるなら夏場に窓を開けたままクーラーをかけて部屋を冷やしているような状態になります。イヤホンの場合、これは音質・ノイキャン効果などを十分に引き出せていない残念な状況であることを意味しています。

特にイヤーチップは、最適なサイズのものを選んで耳にしっかりとイヤホンを固定しないと、うっかりイヤホンを落として紛失する原因にもなりかねません。今日は音の聞こえ方やノイキャンの効果がいまいち……と感じることがあれば、都度「音響の密閉状態をテスト」してもいいと思います。

↑AirPodsの設定メニューから「音響の密閉状態をテスト」を実行。最適なサイズのイヤーチップが選択できていると、iPhoneの画面に緑色のアラートで知らせてくれます。

従来機種よりも伸びやかなリスニング感、バランスのよい消音効果

イヤーチップの選択を済ませてから、いざAirPods Pro 3を持参して旅に出ました。今回は比較のため、AirPods Pro 2も機内に持ち込んでいます。

ノイズキャンセリング機能は、「消音効果の高さ」で言えばPro 2もPro 3に負けない十分な実力を備えていると思います。一方で、新しいPro 3は消音効果が高いうえ、長時間リスニングに最適な「バランスの良さ」が向上していると感じました。

ノイズキャンセリングをオンにした後も「音の広がり」が、前世代のモデルと比べて伸びやかに感じられます。先に触れたサウンドチューニングが奏功しているのだと思います。音楽・映画のサウンドを長時間聴き続けていても、疲れにくくなった実感があります。

↑新旧AirPods Proを機内で試しました。最新のPro 3は静かなクラシック系の音楽を小音量に絞っても心地よく聴けます。

そして、サウンドのボリュームを下げたときにも音質が損なわれません。音楽、映画のセリフが明瞭に聴き取れるうえ、アクションシーンの低音も肉厚さがキープされています。乗り物での移動中に静かなクラシック音楽を聴いてリラックスしたり、あるいは仕事に集中したい人には、AirPods Pro 3の「バランスの良さ」が、使い込むほどに実感されてくるでしょう。

適応型オーディオモードを活用したい

筆者は機内ではほぼイヤホンを耳に装着したまま過ごしています。今回は東京からハワイまで約7時間半の旅だったので、イヤホン単体で約8時間(ノイズキャンセリング機能オン)のバッテリーライフを実現しているAirPods Pro 3は、途中で何度かケースに戻して充電すれば、道中はバッテリー残量を気にすることなく使えました。

イヤホンを装着している間にキャビンアテンダントの方に話しかけられたり、途中で席を立ったりするときには、AirPods Proを外音取り込みモードに切り替えて使えば良いのですが、切り替え操作が面倒に感じられることもあります。その場合はイヤホンを耳に装着したまま、AirPods Proのリスニングモードを「適応型」にすることをおすすめします。

↑iPhoneのコントロールセンターなどから「適応型」を選択。ノイキャンと外音取り込みモードのバランスを、周囲のノイズの量・強さなどに合わせてAirPodsが自動で最適化してくれます。

適応型モードはAirPods Pro 3のノイズキャンセリングと外音取り込みモードを組み合わせ、周囲の雑音状況の変化に応じて聞こえるノイズのレベルを自動的にコントロールする機能です。機内の騒音に自動最適化するので、十分な消音効果が得られるうえ、機内を歩いて移動しはじめると少し環境音が聞こえるようになるので安全でした。

加えてAirPods Pro 3の設定から「会話感知」をオンにしておけば、キャビンアテンダントの方と話しはじめた瞬間に再生中のコンテンツの音量を下げて、周囲のノイズが軽減されます。

AirPods Pro 3はイヤホン、充電ケースがともに「探す」アプリによる探索に対応しています。万一、機内でイヤホンが見当たらないときにも助けてくれる頼もしい機能です。ペアリングしているiPhoneが機内モードになっていると「探す」機能が使えないので、Bluetoothはオンにしましょう。

↑AirPodsを紛失してしまった“もしものとき”には「探す」アプリが大活躍。イヤホン、ケースの両方を遠隔探索できます。

取材では超便利。目玉機能「ライブ翻訳」を試す

今回の出張は、海外企業の発表会に参加するための旅でした。現地では英語オンリーで開催される発表会が多数あったので、AirPods Pro 3に新しく搭載された「ライブ翻訳」機能も試しました。

ライブ翻訳は、AirPods Pro 3にペアリングしているiPhoneのApple Intelligenceと「翻訳」アプリを併用する機能です。iPhoneにiOS 26の導入を済ませて、AirPods Proのファームウェアを更新すれば使用できます。対応する言語は英語(英国、米国)、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語、スペイン語の5種類ですが、iOS 26.1のベータ版ではすでに日本語が利用可能となっています。

↑英語による記者発表会にAirPods Pro 3のライブ翻訳機能は活躍してくれそうです。

ライブ翻訳の起動方法はいくつかありますが、一番シンプルなのはiPhoneで「翻訳」アプリを立ち上げて、画面右下に追加されている「ライブ」アイコンをタップすると開けます。あらかじめライブ翻訳に使う自分と相手の言語モデルをiPhoneにダウンロードしておきましょう。言語モデルのファイルサイズがわりと大きいので、ダウンロードに時間がかかります。

↑言語のダウンロードに少し時間がかかるので、事前に済ませておきます。

今回は英語のトーク音声を、ライブ翻訳を介してフランス語で聞いてみました。話者がひとつのフレーズを話し終えたころに、翻訳が追いかけ始めるぐらいのリズム感です。目の前の会話から大きく遅れることがないので、ステージ上で紹介されているプレゼンテーション資料がめくられるペースと大きくズレることもありませんでした。途中で翻訳をギブアップしてしまうことがないところも、AIを活用する自動翻訳機能の良いところです。

持参したもう1台の別のiPhoneにはiOS 26のパブリックベータを投入して、ライブ翻訳の「日本語」を軽く試してみました。こちらはベータ版ということもあってか、フランス語に比べるとライブ翻訳のペースが少し落ちていました。漢字を読み間違えたりする部分もあったので、やはり実装済みの言語に比べればまだ未熟な印象です。正式リリースまでに完成度が高まることを期待しましょう。

↑フランス語のライブ翻訳を実行中の写真。日本語に比べると翻訳のスピード、精度が高い手応えがありました。

ライブ翻訳は外国語スピーカーの方と目の前で対峙しながら使う場合、やや会話のリズムがもたつく感じを相手がどう受けとめるかによっても利便性の評価が変わる機能です。例えば、混雑しているスーパーのレジでお会計をするような場面では、周囲のプレッシャーも気になって使いづらいかもしれません。筆者が今回試した記者発表会のように、相手が話している内容を翻訳しながら聞く用途にはとても向いていると思います。

お値段据え置きでも総合力高し。従来機種からの買い替えも検討すべき

新しいAirPods Pro 3は音質、ノイズキャンセリングの効果、様々な機能がすべてレベルアップしています。にもかかわらず、前世代のAirPods Pro 2から価格は据え置きで、ライバルのノイズキャンセリング機能を搭載するプレミアムなワイヤレスイヤホンに対してもお得感があります。新規購入する方はもちろんですが、すでにAirPodsを愛用している方が、買い換え・買い増ししても後悔しなさそうなワイヤレスイヤホンとしておすすめできそうです。

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