ゲーム&ホビー
2021/1/1 19:00

ボードゲーム芸人が選出した2020年発売の「やらないと人生損するボードゲーム」10選

お笑い芸能プロダクション・人力舎所属で、ピン芸人として活躍するいけだてつやさん。本業以外に、ボードゲームの造詣の深さと偏愛ぶりはテレビ番組でもたびたび紹介されるほどで、今や「ボードゲーム芸人」として呼ばれることもあります。今回は、そのいけださんオススメの2020年に登場したボードゲーム10個を紹介しながら、現在のボードゲーム市場、今後の盛り上がりについても聞いていきます。

↑いけだてつやさん。1982年・熊本県出身。三福星というお笑いトリオ解散後、ピン芸人に。本業のほかに高校野球を年間160試合も観戦する、燻製料理を作るなど、多彩な趣味を持ち、ボードゲームはその際たるもののようです

 

「ボードゲームに合うビール」から「ボードゲーム旅館」まで

ーーまず、ボードゲームのトレンドについて教えてください。

 

いけだてつやさん(以下、いけだ) ボードゲームと一口に言っても、本当に様々なものがあり、カードを主体にするものもあれば、テーブルに広げるボードを使って遊ものなどがあります。なおかつ、その遊び方も様々で、将棋のような「対戦型」もあれば、参加者全員が何かの解決に向けて協力し合いながらゲームを進める「協力型」もあります。最近はプレイヤー同士の攻撃がなく、みんなで達成感を得られる「協力型」が流行っている印象です。

 

ーーボードゲーム市場は広がっているのでしょうか。

 

いけだ 増えていると思いますよ。新型コロナウイルスの影響で閉店しちゃったお店もありますけど、日本国内には「ボードゲームカフェ」というお店が各地にできて、知らない人同士が店内にあるゲームで遊んだりしています。「良かったら一戦させてくれませんか」みたいな感じで。

 

ーー雀荘のような(笑)。

 

いけだ まさにそんな感じです。ボードゲームの中には難しいルールのタイプもありますが、そういうボードゲームカフェでは店員さんがルールを教えてくれたりもします。そういったボードゲームカフェで知り合った方同士で結婚した例もあるそうです。

 

あと、サッポロビールからボードゲームビールという「ボードゲームに合う」ビールが発売されたり、ボードゲームを遊べる旅館が出てきたりと、かなり盛り上がっている印象があります。

 

また、海外に目を向けるとドイツの「エッセンシュピール」という年に一度開催されるボードゲームの祭典があります。世界中のボードゲーム好きが集まり、ここで大賞を取ったゲームはかなりのハクがつきます。一説にはビル・ゲイツがボードゲーム好きだとか、海外セレブの誰それがボードゲーム好きだという噂は多くて、この盛り上がりは世界的なものではないかと思っています。

↑いけださんのご自宅。所蔵するボードゲームは400を超えるそうです

 

「面白い」「面白くない」の基準は、リプレイ性があるかどうか

ーーただ、そんなボードゲームの世界も玉石混淆ではないかと思います。いけださんが今回、推薦するゲームにはどんな特徴がありますか?

 

いけだ 様々なタイプのボードゲームを持ってきましたけど、やはりリプレイ性ですね。「何回も遊びたくなるもの」という。これまでに「すごいハズレだった」というゲームに出会ったことはないのですが、「正直、これあまり面白くねぇな。また今度でいっか」みたいになるものはあるんですよ。そういうゲームは外して、本当にリプレイしたくなるものばかりを今回持参しました。

 

ーーありがとうございます。それではさっそくご紹介ください。

 

いけだ わかりました。

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その1】

JUST ONE(2020年・アークライト)

2800円(税別)

3~7名のプレイヤーで楽しむパーティゲーム。プレイヤーの一人が「回答者」となり、伏せた状態のカードを、ランダムに選びます。この時点での回答者は、自分が引いたカードにどんなワードが書かれているかは知らされず、回答者以外のプレイヤーのみ知ることができます。その上で回答者に対し、回答者以外のプレイヤーが様々なヒントを与えて、該当ワードを当ててもらうというもの。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「親に「お題になる答え」を当ててもらえるよう、ヒントを書くんですが他のプレイヤーと「ヒントがカブったら見せれない」というルールが秀逸。攻めすぎたヒントだと当ててもらえないというジレンマが最高! お題目がたくさんあるので何度でも遊びたくなるゲームです。」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その2】

(C)2019 Palm Court.

ウェーブレングス(2020年・ホビージャパン)

4500円(税別)

2人以上が、2つのチームに分かれて楽しむボードゲームで、チームの1人がサイキックとなり、スクリーンの後に隠れたターゲットの位置を、チームメイトに当てさせます。現在の波長カードに表示されている、2つの相反するコンセプト(『熱い:冷たい』)について、その位置にふさわしい度合いの言葉(『溶岩』『熱湯』『焼き芋』『体温』『氷』『ドライアイス』)をヒントとしてチームメイトを導きます。その上で、ターゲットがどこにあるかを予想し、的中すれば得点獲得。また、その間に相手チームも推測して、的中すると得点でき、先に10点を獲得したチームが勝利となります。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「親がお題のパーセンテージを喩えて仲間に伝えるチーム戦のゲームです。繰り返し遊ぶと、テレパシーのように相手の伝えたい思いが伝わりだすという不思議な一体感が楽しい。」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その3】

ピクチャーズ(2020年・ホビージャパン)

5000円(税別)

2019年にドイツで発売された後、高い評価を受け2020年に日本語版となってリリースされたもの。3~5人で楽しむもので、まず16枚の写真を並べ、各プレイヤーはそのうちの1枚の写真を靴紐、色付きキューブ、積木、石と木の棒などで表現。プレイヤー同士、16枚のどの写真を表現したのかを当てたり、当ててもらい点数を加算させていくゲーム。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「初めて遊んだとき、中に「石」「靴紐」「木」などが入っててマジか!? ってなったゲームです(笑)。お題になる複数の写真を、靴紐や石などで表現してどの絵柄か当ててもらうものですが、表現するには心許ない道具ばかり。ただ、そんな中当ててもらった人とは「気が合うなー」と仲良くなれる良ゲームです!」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その4】

クリプティッド(2020年・JELLY JELLY CAFE)

4500円(税別)

2018年イギリスで誕生したボードゲームで、2020年に日本語版がリリースされました。2~5人で楽しむもので、6角形のマス目地盤の中から、未確認生物「クリプティッド」が潜む1マスを探り当て、各自が隠す生息地の秘密条件をもとに推理していくもの。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「次第にわかって来る未確認生物の生息地をロジカルに探す感じは冒険家になったようでワクワクソワソワします! クリプティッドは未確認生物の英語でUMAは和製英語ということもこのゲームで知りました!」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その5】

ザ・クルー(2020年・株式会社ジーピー)

2000円(税別)

ドイツ年間ゲーム大賞でエキスパート賞を受賞したカードゲーム。2~5人で楽しむもので、プレイヤーは宇宙船のクルーとなり、他のプレイヤーと一緒に協力しながら「第9惑星の発見」を目指して奮闘する協力型フローです。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「トリックテイキングというジャンルのゲームで、プレイヤー全員が協力し頭を悩ませるのが楽しいです。気がつくと「もう一回やろう!」と誰かが言い出すリピート率の高いゲームです!」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その6】

Q.E.(2020年・サニーバード)

4364円(税別)

3~5人で遊ぶ、競りをテーマにしたゲーム。舞台は2008年の景気後退期で、プレイヤーは各国の代表として「量的緩和対策」を実施。企業を救済するためにお金を使っていきますが、そのお金には上限がありません。ゲーム終了時、最もお金を使ったプレイヤーが負けというルールなので、他プレイヤーとの相対的なバランスで金額を決めないとすぐに脱落へ。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「見えない金額の相場を読み合うのが肝になるゲーム。最終発表の総額公開で1人脱落の瞬間が大盛り上がりで何度も遊びたくなります!」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その7】

ミリオンヒットメーカー(2020年・アークライト)

3200円(税別)

イラストレーター・326によるゲームデザイン&イラストのカードゲームで1~12人で遊べるもの。プレイヤーの立場は広告代理店のプランナーで、ワードカードを2枚つなげて100万人が欲しがる「ミリオンヒット」商品を作っていきます。12枚の手札から2枚を組み合わせ、ヒット商品の名前を考え、プレイヤーが順番に発表。全員が発表し終えた後、一番ヒットしそうな商品に投票するというゲームフロー。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「カードの組み合わせでできた言葉でプレゼンする大喜利ゲーム。「大喜利」と聞くとハードルが上がる感じがしますが、カードに書かれたワードを組み合わせるだけなので誰でもミリオンヒットを出せます。私は5時間ぐらいプレイしていたこともあります(笑)。」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その8】

ザ・キー:岸壁荘の盗難事件(2020年・すごろくや)

3800円(税別)

1~4人で楽しむゲームで、謎のヒントになるカードを早どりしながら、カード毎に表示される4要素〈犯人〉〈犯行時刻〉〈盗まれた物〉〈逃走手段〉に結びつく謎を解いていく流れ。手がかりのカードの組み合わせは最小限になることを目指しつつ、有益な情報を早どりする素早い判断力も求められる話題の推理系ボードゲーム。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「「いつ、どこで、だれが、何を、どうやって持っていった」という全ての条件を満たす犯人は誰なのか? 数あるヒントカードを頼りに誰よりも早く見つけることを目指します、ただヒントカードはできる限り少ない数の方がポイントが高いので想像も大事。ワイワイ捜査できる楽しさは格別です。」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その9】

フィニッシングタイム(2020年・バネスト)

5910円(税別)

労働者に癒しを与えリラックスしてもらうことを目指すボードゲーム。1~6人で楽しむもので、プレイヤーは7人の労働者のチームを担当。自分の手番では労働者のうちの1人または複数を空いているアフターワークスペースに配置し、アクションをそれぞれ行います。実行後はすべての労働者を自分のファクトリーボードに、また置きます。これを繰り返し、アクションで得られるリラックスポイントが40ポイント以上になった際、もう一度アフターワークスペースの配置、アクション、ファクトリーボードへの配置をしてゲーム終了。その時点で最もリラックスしているチームが勝者に。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「超がつくブラック企業で働く人達を、「癒やして、リラックスさせてあげる」というトンデモテーマ(笑)。変わった設定ですが、ゲームは悩みどころ満載で、しっかり考え込め、クセになる良作です。」(いけだ)

 

【いけだてつや推薦ボードゲーム・その10】

(C)DEAR SPIELE

クルセイダーズ 多言語版(2020年・Dexker Games/Tasty Minstrel Games/ディアシュピール)

6800円(税別)

オリジナルはアメリカのTMG社が2018年にリリースしたボードゲームで、多言語版として2020年にリリース。2~4人で楽しむもので、十字軍を率いて異教徒を鎮圧し、建物を建て、騎士団の影響力を高めることを目指すもの。プレイヤーは移動、召集、聖戦、建築、影響力という各自のアクションをボードで選択でき、アクションスペースに置かれたコマの数だけアクションができます。実行したアクションスペースのコマは、他のマスに振り分けられる「マンカラ」システム。すべてのアクションを満遍なく行わなければいけないルール。

【いけださんがススめる。ココが面白い!】

「初めて遊んだとき夢中になったゲーム。「マンカラ」システムは古代からゲームに採用された独特のもので、ルールがわかると同時に悩ましさが出てきます。」(いけだ)

 

ボードゲームの難解であえて手間がかかるところこそが魅力

ーー解説だけを見ると、すごく複雑そうなゲームフローのものが多い印象です。

 

いけだ そうですよね。特に海外のボードゲームの解説は、ゲームフローの中にちょっとジョークを入れているものもあって、話をややこしくしてるという(笑)。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、家の中でボードゲームを楽しむ方が通販などで買うケースも増えたようですが、そこでも皆さん「こんなにルールがあるの?」「ルールの意味がよくわからない」といった声は多かったようです。でも、そんな中でボードゲームのルールをわかりやすく解説するユーチューバーが出てきたりして、結果的にさらに裾野を広げることにもなっているようです。

今回おすすめしたゲームは様々なタイプがあり、たしかに解説するとなると難しそうだし、実際に人を集めて、ボードを広げてするというのもデジタルゲームに比べれば実に手間がかかる。でも、いろんなものが便利になる今の時代だからこそ、手間のかかるゲームっていうのがエモいんじゃないかと思います。

ーー今、静かに人気が拡大しているというボードゲームの世界ですが、2021年以降はどうなっていくと思いますか?

 

いけだ ボードゲームのファンには、大きく分けるとコアゲーマー、ライトゲーマーがいますが、ライトゲーマーが増えてきて、全体の遊戯人口を増やしているようなので、今後はよりシンプルなわかりやすいボードゲームが増えるかもしれませんね。

その一方で、既存のボードゲームをスマホのアプリで楽しめるようなものも結構出てきていて。カードに書いてある日本語以外の言葉を、Google翻訳の発音で聞きながら進めていく「ホッタイモイジンナ」というゲームが有名ですけど、デジタルとアナログ、それぞれの良さを融合させたゲームも増えるかもしれません。

いずれにしても、自分とは違う誰かと楽しめるもので、繰り返しやりたくなるようなゲームが増えると良いなと思います。一緒にやる相手によっても、面白さがまるで変わるところもゲームの楽しさの一つ。今回ご紹介したボードゲーム、ぜひ挑戦してみて欲しいですね。

↑各ボードゲームが持つ難解なルールを、できる限りわかりやすく解説してくださったいけださん

 

事前の情報だけでは、完全な理解ができないボードゲームが多かったですが、「やりながら覚える」「やりながら面白さを見つける」こと自体もまた、ボードゲームの魅力の一つでもあるように思いました。ハードルが高そうに感じながらも、一度ハマると抜け出せなくなるようにも感じるボードゲームの世界。ぜひ触れてみてはいかがでしょうか。

 

撮影/我妻慶一

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】