知らないのはもったいない!気づかぬうちに進化していたあの商品のおいしさの秘密

ink_pen 2025/8/28
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知らないのはもったいない!気づかぬうちに進化していたあの商品のおいしさの秘密
GetNavi web編集部
げっとなびうぇぶへんしゅうぶ
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提供:KIRIN

「糖質オフ・ゼロビールは、妥協して選ぶもの」「回転寿司は早くて安いが、味はそれなり」。そんな先入観を今も引きずっていませんか? 最近、「むしろ選ばないのはもったいない」くらいにおいしい商品が増えているのをご存知でしょうか。固定観念を変え、“革命”を起こした話題のフードに秘められた事実とは? 実際、本当においしくなっているの? その真相を探りました。

市場のゲームチェンジャーはこの2ブランド

回転寿司やインスタントコーヒー、糖質オフ・ゼロビール、冷凍食品など。価格や簡便性に優れていたり、味以外の付加価値を訴求していたりする食品に対して、「味は二の次」「食卓の主役には選ばない」といったマイナスなイメージを持っている人は多いのでは? ところが昨今では、選ばない理由が見当たらないほどにおいしさアップ。

たとえば「回転寿司」。職人仕込みの技術を取り入れた店舗や、ネタの品質で専門店顔負けのクオリティを打ち出すチェーンも登場し、「値段以上の満足感が得られる場所」として再評価されています。同様に「インスタントコーヒー」も、豆の産地や焙煎へのこだわりはもちろん、抽出やフリーズドライ技術の革新によって、“簡易的な代用品”というイメージから大きく脱却。なかには、そのブランドが登場したことで生活者のイメージが覆り大ヒットした、革命的な名作も! それが「一番搾り 糖質ゼロ」と「ニチレイ 特から」です。


前者は、国内で初めて(※1)ビールカテゴリーで「糖質ゼロ」(※2)を実現した商品で、まさにビールユーザーにとって革命的な商品です。この「一番搾り 糖質ゼロ」の登場により、糖質ゼロでもおいしいビールを楽しめるように。さらに発売以降もリニューアルを繰り返し、おいしさを追求。そして今年9月には、10年かけてたどりついたおいしさを楽しめるリニューアル品を発売予定(※3)です。このリニューアル品では、ビールならではの飲みごたえを高めながら、飲みやすく飲み飽きない味わいを実現しています。

そして後者の「特から」は、食べごたえのある大きさとご飯に合うジューシーなおいしさで、冷凍からあげを“お弁当のおかず”から“食卓の主役”へと押し上げた画期的商品。こちらもアップデートを繰り返しており、直近では、今年の春にリニューアルしています。

共通点は、2015年より開発がスタートしており、“冷凍”や“糖質ゼロ”といった難しい条件下でもおいしさを実現することを追求し、発売後も繰り返しアップデートしていること。リニューアルに向けた開発を含めると、開発期間は10年。まずはそれぞれの開発秘話を見ていきましょう。

※1 ビールで糖質ゼロを実現した国内で初めての缶商品(Mintel GNPDを用いたキリンビール調べ)
※2 食品表示基準による
※3 2025年6月製造品より順次切替

 

【一番搾り 糖質ゼロ】「糖質ゼロはおいしくなさそう」というイメージを覆した開発の軌跡

2020年に初の糖質ゼロビールとして誕生した「一番搾り 糖質ゼロ」。開発担当者のパパ友が、お花見中に「ビールが好きなんだけど、体型が気になるから、(ビールは)最初の一杯だけ」と発したことをきっかけに、「ビール好きの人が気兼ねなく飲めるおいしいビールを作りたい!」と、開発がスタートしました。

 

開発開始から発売まで5年! 不可能を可能にしたおいしさへの探究心

しかし、開発は一筋縄ではいきません。そもそも、ビールは麦芽の使用率が50%以上と定められています。麦芽は、ビールのおいしさを左右する要素のひとつですが、そこには糖質が豊富に含まれているため、麦芽使用率が50%を超えるビールで“おいしさ”と“糖質ゼロ”の両方を実現させることは、大きな困難を伴う挑戦でした。

そんな困難を打破したのは「糖質を気にする人にも、おいしいビールを楽しんでほしい」という企業姿勢とおいしさへの探究心でした。トレードオフの関係にある“おいしさ”と“糖質ゼロ”の双方を実現させるために要した、開発開始から発売までの期間はなんと約5年、試作回数は350回以上にもおよびました。

↑350回以上の試作を経て生み出されたのが、「新・糖質カット製法」です。糖質低減に適した麦芽を選定するとともに、麦芽に含まれるでんぷん(糖質)を酵母が食べられる状態(糖)に効率よく分解できるよう、独自の仕込技術も進化。酵母もより厳しく管理された元気なものに変えることで、糖の食べ残しを減らし、糖質ゼロを実現しました。

こうして誕生した「一番搾り 糖質ゼロ」は多くの消費者に歓迎され、累計2億本(350ml換算)の販売数量を発売1年後に達成。これは同社過去10年のビール新商品で最速です。

 


お客様の声に向き合い進化し続けるビール

しかしキリンビールの挑戦はここで終わりではありません。なぜなら、「『一番搾り』ブランドの商品なだけあって、やっぱりおいしい」「2本目以降もビールを選べるようになった」といったポジティブな声が多く寄せられる一方で、「通常のビールよりも物足りない」という声がゼロではなかったからです。

また、糖質オフ・ゼロビール自体に対し、「通常のビールよりおいしくなさそう」「健康診断で引っかかったり糖質を気にしたりしている人が飲むもの」といったイメージが先行し、候補に挙げてさえもらえないという現実を変えたいという思いも。

そこでキリンビールは、“ビール好きが求める飲みごたえとビールらしさ”を高めるために、発売後も毎年のようにおいしさをアップデート。それが結果的に、市場イメージを覆すことにもつながりました。

最初の契機となったのは、2022年のリニューアルでの麦芽の増量です。前述した通り、「おいしさ(麦芽量)」と「糖質ゼロ」は二律背反の関係。麦芽の量をほんの数%増やしただけで、糖質はゼロではなくなってしまうため、その調整作業を抜本的に見直すという手間をかけながら、麦芽量の増量によるおいしさアップを実現しました。

↑「一番搾り 糖質ゼロ」は、“おいしさ”という感性的な価値と、“糖質”という数値的な指標、その両輪をうまくかみ合わせて回さなければならないのが難しいところ。

難題を乗り越えて、たどりついたおいしさ

そして開発開始から10年、様々な障壁を乗り越えてたどりついたのが、2025年9月に行われるリニューアルです。飲みごたえのあるビールらしいおいしさを高めるために、あらゆる製法を試し、なんと「糖質ゼロ」と相性の悪い製法を取り入れることにしたのだとか。

そんな不利な製法を取り入れていることもあり、試験醸造の段階から安定的に糖質ゼロを達成できない、試験醸造で達成しても工場醸造では達成できないなど困難は続き、今回のリニューアルに向けた試作回数は、110回以上。その多さからも、おいしさと糖質ゼロを両立する難しさがうかがえます。しかもビールの醸造にかかる時間は通常約1ヶ月。これだけの試行錯誤を繰り返すとなると、かなりの時間が必要になります。

新ブランドの立ち上げ時ならまだしも、リニューアル品でなぜそこまでするのか。その理由はただひとつ、“おいしい糖質ゼロビールを楽しんでほしいから”。そのためなら、苦労もいとわないのです。

そんなリニューアル品における具体的な刷新ポイントは次の2つです。

・ビールならではの飲みごたえを向上

今回のリニューアルでは、飲みごたえを強化しながらも、後味が強すぎない「一番搾り」らしいスムースな余韻を引き出すことを目指したとのことですが、そのためには、糖質ゼロの実現にはデメリットになるダブルデコクション製法を採用する必要があったそうです。このデメリットに対しても、仕込の時間や温度など、あらゆる条件を細かく調整することで、目指す味にたどり着けたとのこと。

↑もろみ(麦芽にお湯を加えたもの。これを搾ったものが麦汁)の一部を高温で2回煮沸することで、原料のコク味成分を最大限引き出すことができる製法で、キリンビールの糖質オフ・ゼロビールでは今回が初採用。(※2025年9月時点)

・華やかな香りを高め、飲みやすく飲み飽きない味わいにアップデート

もうひとつは、ホップに関わるアップデートです。使用するホップの種類を増やし、それぞれのホップの魅力を引き出すため、細やかな添加量の調整や、投入タイミングも再検討。華やかな香りを高め、飲み飽きない味わいを実現させたそうです。

↑華やかでフルーティーな香りのホップを新たに採用。

麦の甘みと余韻スッキリ、泡まで旨い!

↑糖質はゼロでも、「一番搾り」同様にクリーミーな泡を楽しめます。

あらためて最新の「一番搾り 糖質ゼロ」をテイスティングし、その味わいを解説しましょう。レビューしたのは「GetNaviお酒・グルメアドバイザー」のフードアナリスト・中山秀明さんです。

「『一番搾り麦汁』特有のモルティな甘みが十分にあって、ホップの爽やかな香りと苦みもしっかり。すっきりした余韻が心地よく、おかわりしたくなるような飲みやすさがあります。フレッシュな爽快感は濃厚なフードや辛い料理にも合い、一方で繊細なニュアンスもあるので和食にもマッチしますね。休日昼間のリフレッシュ、食事中、風呂上がりなど、あらゆるシーンで万能な積極的に選びたくなるビールです」(中山さん)

※キリンビールから依頼し、いただいたコメントを編集して掲載しています。

【特から】冷凍からあげの地位を高めた傑作の緻密な大胆設計

「キリン一番搾り 糖質ゼロ」同様に、生活者のイメージを変えたブランドがニチレイの冷凍からあげ「ニチレイ 特から」です。食べごたえのある大きさとご飯に合うジューシーなおいしさで、弁当用だった冷凍からあげを食卓のメインを張れる料理へと生まれ変わらせました。

発売と同時に大ヒットし、2017年の発売翌年には冷凍からあげNo.1(※5)の座を奪取。さらに冷凍からあげ市場全体の売り上げを前年比125%(※6)に拡大させました。

※5 インテージSRI+ 冷凍調理からあげ市場 2018年4月~2019年3月 累計販売規模 
※6 インテージSCI 冷凍調理からあげ市場 2017年4月~2018年3月 平均購入規模(店頭売り)前年比

とはいえ、前例のない“発明”には課題がつきもの。理想の味を定義するために行った市場調査でわかった生活者が求める3つの要素、「ジューシー感」「適度な食感」「味付け」を叶えるために、2年の開発期間を要しました。

特に「ジューシー感」については、ふたつのアプローチで検討。ひとつが、ジューシーさそのものを高める工夫です。商品加工時に肉汁をしっかり保持できるよう工夫し、それをレンジ調理して噛んだときにもジュワッとあふれ出るよう設計。

もうひとつのアプローチは大きさです。開発当時、市場の冷凍からあげは20~25g、専門店のからあげは40g以上が主流でした。その最適解を見つけるために、18~50gのからあげを2g刻みで作っては食べてを繰り返したといいます。

↑試行錯誤の結果たどり着いた、食卓のおかずとお弁当利用、双方のニーズを満たす最適なサイズは32g。

開発の中心者は、年間2000個以上のからあげを食べるなどして研究を重ねたそうですが、それ以上に困難を極めたのが、ジューシーな食感と肉汁あふれるおいしさを「冷凍」で実現すること。というのも、肉は凍らせると繊維質がダメージを受けるため、温めた際にジューシーさが損なわれてしまうからです。また、再加熱時に水分とともに、うまみや肉汁も逃げやすくなります。

「ニチレイ 特から」は、こうした弱点を克服するべく、素材や調味料の選定と配合、味付けや揚げ時間、温度などをサイズとのバランスも計算しながら微調整し、食卓にもマッチする理想のおいしさを実現したのです。

↑肉の旨味を閉じ込め、カラッと仕上がる独自製法「三度揚げ」で、揚げたてのおいしさを再現しています。

こちらも、中山さんが試食して味わいをレビューしました。

「カリッとした衣と、やわらかでジューシーな肉の弾力、ジュワッとした肉汁で食べごたえ満点。ほんのりスパイシーでワイルドな味付けもたまりません。これだけインパクトのある味わいながら、重くないのも魅力ですね」(中山さん)

↑ニチレイにはもう一品、世の中の概念を変えた冷凍からあげがあります。それが「ニチレイ むねから」。塩麹でしっとりやわらかく、米粉入りの衣でカラッと仕立て、「鶏むね肉のから揚げはパサつく」というイメージを覆した人気商品で、こちらも注目です。

取り入れないともったいない! 知らない間に進化し続ける革新フード

それぞれの市場が持つ従来のイメージを覆した“ゲームチェンジャー”ブランドには、開発者の絶え間ない努力があります。加えて、さらなる進化のためには困難もいとわない探求心の強さも、共通点といえるでしょう。「キリン一番搾り 糖質ゼロ」と「ニチレイ 特から」はその代表格。日々スーパーに並ぶこれらを、もう素通りできそうにありませんね。

撮影/山田英博 取材・文/中山秀明 編集/鈴木翔子