本格的な寒さがやってくる季節、気になるのは手足をはじめとする、からだの“冷え”ではないでしょうか。外出時にはムートンブーツを履いたり、靴下を重ね履きしたりしてみても、足先が冷たいままだったり、布団に入っても体が冷えて眠れない、などの症状があったら要注意。冷え性はただ体が冷たいと感じるだけでなく、疲れやすくなったり肩こりがひどくなったり、他のトラブルとしてあらわれることがあるのです。
今回は、漢方専門店の薬日本堂が、日本橋髙島屋S.C.新館1階へ新たにオープンさせた「カガエ カンポウ ブティック」で、冷え性改善のアドバイスを聞きました。
冷え性は万病のもと!
漢方では、そのまま放置しておくと病気になる可能性がある、病名がつく前の不調を「未病」と呼んでおり、冷え性もそのひとつ。
「冷え性は、手足が冷たい、下痢をしやすい、しもやけやあかぎれができやすい、などの自覚症状があるものから、疲れやすい、イライラする、食欲がない、肩が凝るなどの、一見“冷え”とは関係がなさそうに見えるものまで、さまざまな症状としてあらわれる可能性がありますから、自分が冷え性だからと体の冷たさや寒さを我慢することはよくないのです」(カガエ カンポウ ブティック・薬剤師 上之原静佳さん、以下同)
なぜ、冷え性になるのか?
では、なぜ冷え性になってしまうのでしょうか。「原因となるものはさまざまあります。たとえば夏の間に冷たいものを食べすぎたり、冷房で体を冷やしすぎたりしていると、秋冬になったとき体に響くと言われています。また、体は気・血・水で作られているという漢方独自の考え方があり、なかでも血液は寝ている間に体をめぐって修復するとされています。睡眠時間が不足すると、めぐるべき血液も少なくなり、末端にまで届かず冷えの原因となります。冷え性には大きくわけて2つのタイプがあります」
1.温める力が弱まっているタイプ
普段から寒がりで、お腹や足腰の冷えが見られ、体に余分な水分がたまってむくみを感じたりする冷え性の方は、温める力が足りないと考えられます。
「加齢や虚弱体質、慢性的な病気がある方や、無理なダイエットをした方、夏野菜や果物などの冷える食べ物をよく摂取してしまう方に起こりやすくなります。このタイプの方は、エネルギーを生み出す食材を豊富に摂り、冷たいものの摂りすぎに注意しましょう」
2. めぐりが悪く血液が末端まで行き届かないタイプ
自律神経のバランスが崩れていたり、手足の先が冷たくなったりしている冷え性の方は、血液を末端までめぐらせる力が足りないと考えられます。
「運動不足や睡眠不足、イライラしたり気持ちがふさいだり、ストレス過多になると起こりやすく、月経トラブルなどの症状を伴うのが特徴です。このタイプの方は、運動をして代謝をあげ、めぐりをよくすることが大切です」
冷え性改善のポイントは、内側からも外側からも温めること
どちらのタイプの冷え性の方にも共通している改善策は、温かい衣服や入浴などで物理的に体を温めることと、温かいお茶や体を温める食材を使って内側から温めることです。「外側から体を温めるポイントは、首、手首、足首、お腹などのくびれている部分を冷やさないことです。ネックウォーマーや足首を隠す靴下などを使って温めましょう」
積極的に摂取したい、体を温める食材とは?
内側から体を温める方法は、まず温かいものを摂ること。お茶やスープなどの汁物は積極的に摂りましょう。「アルコールは血流がよくなるので適量ならばよいのですが、冷たいビールではなくホットワインやお湯割りなど、温かいものがおすすめ。また、体を冷やすと言われている食材は、温める食材と一緒に食べるといいでしょう」
【内側から温める食材と、効果的な摂り方】
・羊、鶏、にんにく、シナモンは体を温めてくれる
・日本の伝統食(和食)が最もおすすめのメニュー
・フルーツはほとんどが体を冷やすが、ライチと桃は体を温める
・お刺身は体を冷やすが、わさびやしその葉などの薬味と一緒に摂ることでバランスが整う
・大根、豆腐やトマト、ナスは体を冷やすので、温かいスープにすると体を温める
・葛粉は体を冷やすので、シナモンを入れて葛湯にする
漢方薬を取り入れて体調改善をはかろう
漢方薬とは、自然界に存在する植物、鉱物、動物から成る薬のことで、医療用医薬品や一般用医薬品として販売されています。漢方薬は、一人ひとりの体質や体調に合わせて選ぶものです。
「カガエ カンポウ ブティックでは、初回に1時間~1時間半の時間をかけて、症状などをお聞きするカウンセリングして、漢方薬を選びます。食事や運動、休養などのアドバイスもしながら、薬を使わなくても健康でいられる体づくりを目指しています。漢方薬をサプリメントなどと同じようにとらえてしまう方もいらっしゃいますが、あくまでも薬なので、ご家族で共有せずにお飲みください」
冷え性緩和に役立つ漢方煎じ薬
上之原さんによると、漢方薬は人それぞれの体質や体調に合わせて選ぶものなので、一概に“これがいい”とおすすめできる漢方があるわけではないそう。「ここでは冷え性の症状を緩和する代表的な漢方薬をご紹介します。煎じ薬といって、お茶のティーバッグのような状態の漢方薬を30〜40分煮出し、1日数回に分けて飲む薬です」
1. 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
冷え性で貧血があったり、疲れやすくなっている方に用いる漢方薬です。「名前にある、当帰、芍薬をはじめとした、6種類の生薬から成ります。足腰の冷え症、しもやけの他にも月経不順や更年期障害がある方にもお出しすることがあります。肩こりや腰痛のひどい方の症状緩和にも役立ちます」
【効果効能】月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害(貧血、疲労倦怠、めまい、むくみ)、めまい、頭痛、肩こり、腰痛、足腰の冷え性、しもやけ、むくみ、しみ
2. 加味逍遥散(かみしょうようさん)
虚弱傾向で疲れやすく、精神的な不安がある方に用いる漢方薬です。「当帰芍薬散と同じ当帰と芍薬を主薬とし、生姜(しょうきょう)や甘草(かんぞう)、薄荷(はっか)など10種類の生薬から成ります。冷え性の他にも肩こり、月経不順の方にもお出しすることがあります」
【効果効能】冷え性、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症
3. 温経湯(うんけいとう)
手足がほてり、唇が乾くのに足腰が冷える方に用いるお薬です。「麦門冬(ばくもんどう)、半夏(はんげ)など、12種類の生薬から成ります。足腰の冷え、しもやけの他、湿疹や神経症、不眠などにも使われます」
【効果効能】月経不順、月経困難、こしけ、更年期障害、不眠、神経症、湿疹、足腰の冷え、しもやけ
カガエ カンポウ ブティックの体を温めるおすすめ商品
続いて、同店の店頭で販売されているおすすめ商品を見ていきましょう。
・眠る前のリラックスタイムにも
「カガエ 香巡茶」2160円(ティーバッグ15包)
発酵させずに作られるグリーンルイボスがベースになっているお茶です。「温かいお茶を飲むことで体の内側がしっかり温まります。グリーンルイボスは通常のルイボスティーより独特の香りが少なく、飲みやすく仕上がっています。伝統的な和漢のレイシ、オタネニンジン、みかんの果皮などが入り、ノンカフェインなので眠る前のリラックスタイムにもおすすめです」
・紅茶ベースでリフレッシュにも
「カガエ ハーブティー エナジー」1461円(ティーバッグ10包)
紅茶をベースにし、高麗人参やなつめなどの和漢素材やハーブを配合したお茶です。ローズマリーが爽やかに香ります。「がんばりたい日の朝に飲んだり、仕事の合間に飲んだりしてほしいお茶です。小包装タイプなので、オフィスに持って行くのにおすすめです。また、水筒に入れて仕事をしながら少しずつ飲み、体を温めるのもいいでしょう」
・足湯で手軽に“外から”温める
「カガエ バスミルク 薬用(医薬部外品)」2916円
ニンジンエキスやシャクヤクエキス(いずれも保湿剤)が入ったバスミルク。体を外から温めるのにおすすめです。「半身浴は手間がかかるという方は、足だけ浸かれるような桶に、40℃〜41℃の熱めの湯とバスミルクを入れて足湯にするのがいいでしょう。体が冷めて寝つきが悪くならないよう、お風呂はなるべく就寝前にして、ぬるめのお湯に15分ほど肩まで浸かり、すぐにベッドに入りましょう。保湿剤が入っているので、肌をしっとり仕上げてくれます」
他にもこんな商品が!
同店を訪れる20代~40代女性に、「改善したい症状」を聞くと、常に3位以内に入るという「冷え性」。冷え性なんて病院に行くほどではない、と考える人がほとんどではないでしょうか。でも放っておくと、新たな症状やトラブルを引き起こしてしまう注意したい未病です。すっきりと動ける体になれるよう、漢方と上手につきあってみて!
【店舗情報】
カガエ カンポウ ブティック
所在地:東京都中央区日本橋2-5-1日本橋髙島屋S.C. 新館1階
TEL:03-6281-9658
営業時間:10:30~20:00
定休日:日本橋髙島屋に準ずる
アクセス:東京メトロ日本橋駅より直結
https://kagae.jp/