片足だけで10秒間まっすぐに立ち続けられるか? そんな簡単な検査で、将来の病気のリスクを知ることができるという研究が発表されました。この研究がうまく行けば、将来の健康診断に片足立ちが加わるかもしれません。
加齢などにより身体のバランス能力が衰えてくると、思わぬところで転んで、大きなケガや病気のきっかけになることがあります。しかし、人間のバランス能力に関する検査は健康診断であまり行われていません。その一因として、バランス能力の標準的な検査方法がないことが指摘されているほか、バランス能力の低下を原因とする転落事故以外に、確たる臨床的成果がほとんどないとも言われています。
そこで、英国のブリストル・メディカルスクール(ブリストル大学の一部)やブラジルのクリニメックス運動医学クリニックなどの国際共同研究チームは、バランス能力の検査が将来の死亡リスクの指標になり得るかどうかを調べることにしました。
この調査の対象になったのは、クリニメックス運動医学クリニックが研究のために行っている運動プログラムに2009年2月から2020年12月に参加したメンバー。同研究チームは、この中から51歳〜75歳の参加者1702名に身体測定を行いました。体重や皮下脂肪の厚み、ウエストサイズを計測し、病歴を確認。その後に以下のルールで10秒間、片足で立ってもらいました。
・左右どちらかの足で片足立ちする
・浮かせたほうの足裏を、立っている足のふくらはぎ部分につける
・両腕は横にまっすぐのばす
・目は開けた状態でまっすぐ前方を見る
・左右どちらの足でも3回までチャレンジOK
その結果、片足立ちで10秒間立てなかった人の割合が、51~55歳は約5%、56~60歳は8%、61~65歳は18%弱、66~70歳は37%弱、71~75歳は約54%と、年齢が上がるほど増える傾向にあることが判明。
死亡リスクが2倍増加
本調査では、被験者を平均7年間モニタリングし、その期間中にガンや循環器疾患、新型コロナウイルスで亡くなった人がいましたが、片足立ちができた人とできなかった人との間で、死亡時期や原因などに関して明確な傾向は見られませんでした。しかし、死亡率は両者の間ではっきり異なり、片足立ちできた人は4.5%に対して、片足立ちできなかった人は17.5%と、13%も違うことが判明。つまるところ、片足立ちができなかった人の中には、心臓病や高血圧、肥満になったり、血中脂肪が高かったりするなど、健康状態が悪い人が多かったのです。
これらの結果を受けて、研究チームは「中高年で10秒間片足立ちできないと、今後10年以内になんらかの原因で死亡するリスクがほぼ2倍に高まる」と述べています。
今回の研究で、医学的に有効かつ客観的なデータを提供する可能性を示した片足立ちの検査。中高年を対象にしたバランス能力と将来的な病気や死亡のリスクを予測する指標の1つにするために、同研究チームはさらなる調査を呼びかけています。
【出典】Araujo CG, de Souza e Silva CG, Laukkanen JA, et al Successful 10-second one-legged stance performance predicts survival in middle-aged and older individuals British Journal of Sports Medicine Published Online First: 21 June 2022. doi: 10.1136/bjsports-2021-105360