おいしいご飯は食べたいけれど、10万円もする高級炊飯器はなかなか手が出せない……。価格に見合う価値があるかも不安……。そんな人に注目してほしいのが、アイリスオーヤマの5.5合炊きIH炊飯器です! 参考価格は税別1万9800円というコストパフォーマンスにもびっくりですが、他社の高級炊飯器並みの炊き分け機能も搭載。本機の発表会で、その魅力をレポートしていきます。また、アイリスオーヤマといえば、ユニークな家電を続々とリリースし、売上も絶好調とのこと。この機会に同社の開発担当者などに話を聞き、その成長の秘密にも迫っていきます。
アイリスの家電事業が好調な3つの要因とは?
近年は家電事業が好調というアイリスオーヤマ。LED事業と家電事業を合わせると2016年は485億円の売上で、前年比では20%の成長です。2017年にはこの数字を730億円に持っていく計画。この成長の要因は何なのか、同社は大きく3つあると分析しています。
①同社が「なるほど家電」と名付ける、分かりやすいひと工夫で他社製品と差別化する開発コンセプトが、ユーザーから支持されたこと。ユーザーが商品を見たときに、「なるほどこれはいい」と納得できる要素を盛り込んでいるんですね。もちろん、機能・性能だけでなく「低価格でコストパフォーマンスが高い」というのも、分かりやすい差別化のポイントです。
②同社の製品開発拠点である大阪R&Dセンターの技術力が向上したこと。他社を早期退職した人材などを積極的に採用したことで、アイデアを実現する技術力が備わったといいます。
③知名度向上に伴って、販路拡大に成功したこと。アイリスオーヤマといえば、元々は日用品メーカーとして知られ、ホームセンターなどで商品の取り扱いの多い企業でした。しかし、近年は知名度のアップに伴って、家電量販店やネット通販での取り扱いが増加。同社では2017年の業態別構成比は半分が家電量販店、ネット通販で占めることになると予想しています。
スピーディな決定と社員同士の情報共有がカギ
そのほかの成長の要因は何か、大阪R&Dセンターの原 英克マネージャーに聞いてみました。そのひとつが“意思決定の速さ”だといいます。
「当社では、毎週月曜日に社長と各部門のトップが集まる会議があり、そこで開発者がアイデアを披露して検討を行います。事前のエントリーは必要ですが、開発者は自由に提案できます。さらに、社内で『伴走式開発』と呼ぶ方式を採用。これは、開発部門だけでなく、マーケティングや営業などあらゆる部門が、現在どんな開発プロジェクトが進行していて、いつごろ製品化できるのかといった情報を共有するものです。より良い製品にするアイデアや、トラブルの可能性の指摘、解決策の提案などが自然に集まる体制になっています」と原マネージャー。つまり、誰もが自由に製品を提案し、スピーディに決断する仕組み、社員が一丸となって製品を開発・販売するスタイルが確立されているというわけです。
そんな社風は、社内の施設にも反映されているそう。例えば、社内にはイスのない丸テーブルだけ配置されたスペースがあるといいます。何か提案やトラブルがあると、ここに関係者がさっと集まり、方針を決めてさっと解散するスピーディなミーティングが可能になっているそうです。
精米事業のノウハウを投入し約2万円で銘柄炊き分けに対応
では次に、今回発表された新しい炊飯器「銘柄炊き IHジャー炊飯器 5.5合」を見ていきましょう。本機には同社の炊飯器として初めてIHを採用。内釜は蓄熱性の高い厚さ3mmの銅釜です。
ひと工夫が加えられているのは、同社が家電事業より早くから手がけている精米事業で培った知見とノウハウを注いだ31銘柄対応の「銘柄炊き分け機能」です。
「銘柄炊き分け機能」の開発では、精米事業との協働により、精米月日、精米品質、生米の味レベルなど、原料の品質の細かな条件を整えたうえで、炊飯試験をスピーディに実施。開発者の中には米食味鑑定士などの資格を取得した者も参加しており、どの品種をどのように炊くともっともおいしく食べられるのか、実際に食べて判定する官能評価を毎日行ったといいます。
炊いて食べて評価、設定を変更し、また炊いて食べてを繰り返す日々。多いときは1日に一人当たり8回も炊飯・実食して、お米の品種ごとの特徴を引き出す最適な炊き分けプログラムに仕上げたとのこと。
このほか、釜素材やヒーターの位置など、ハードウェアの設計要素も細かく実験を繰り返し、工夫を加えています。例えば内釜をセットする本体内部に見られる緩い螺旋状の溝。これは製品個々の内釜の微妙な寸法差を吸収して、内釜をどちら向きにセットしてもIHヒーターからの距離が一定になるようにするための工夫です。
会場では、実際に製品で炊いたコシヒカリ(写真)とゆめぴりかを試食できました。コシヒカリのほうがやや硬く、ゆめぴりかのほうが柔らかめの印象でしたが、どちらも噛んだときのお米の弾力が楽しく、ご飯のコシがしっかり堪能できます。甘みはゆめぴりかのほうがやや強く、銘柄の特徴を引き出す炊き分けができていると感じました。本機は、前述のIHヒーターと分離できる機種に比べてインパクトは劣るものの、精米事業を持つ同社のノウハウをうまく生かしました。
人気のセパレートタイプの新製品も計画中
炊飯器に関して、もう一つ気になることがあり、こちらは調理家電事業部 兼 季節家電事業部 事業部長の平元佑司氏に聞いてみました。それは、同社が昨年秋にリリースした分離してIHクッキングヒーターとしても使用できる3合炊き炊飯器のこと。現在予約が殺到して1か月待ちの人気商品となっていますが、この5合炊きタイプは出ないのでしょうか。
平元事業部長によると、事業としての計画はあり、既に社内コンセンサスは取れているとのこと。まだ時期は未定とのことでしたが、手応えとしては秋以降かといったところのようです。
このほか、同社では2~3月に加湿空気清浄機、4月以降にはクリーナーの新製品、7月には3合炊きIH炊飯器、10月には10合(一升)炊きIH炊飯器の投入を予定しているそう。これらには、どんな「なるほど」が盛り込まれるのか、今後の展開が楽しみですね。