家電
2017/11/27 6:00

なぜ空清は伸び悩んでいるのか? ダイキンが「市場低迷の要因」と「対策アイテム」を発表!

インフルエンザの季節がやってきました。通勤電車やオフィスの中でもマスク姿が目立つようになり、予防の意識が高まっています。空気が汚れ、乾燥が進むとウイルス感染症のリスクが高まる…ということで、家電メーカーからは空気清浄機と加湿器の発表会の案内がひっきりなしに届く今日このごろ。今回は、「ストリーマ」などの独自技術で定評のある空調機器メーカー、ダイキン工業の個別説明会に参加してきました。

 

買い替えユーザーをターゲットにタイプの異なるモデルを発売

↑左から「MCK70U」、「MCK55」、「MC55U」
↑ダイキンが発売した空気清浄機のラインナップ。左から「MCK70U」「MCK55」「MC55U」

 

国内の空気清浄機市場は2012年をピークに下がり続けています。2012年は花粉の大飛散や、初めてPM2.5が報道されたことなどにより、メーカー各社が増産体制を敷いても需要に追い付かないほど、爆発的に売れました。一方で、メーカー各社はフィルター性能を高め、「10年間の交換不要」を謳ったがために、買い替えサイクルが伸びてしまうことに。それがここ数年間、市場が低迷している理由ですが、ここにきて2012年以前に購入したユーザーの買い替え需要が動き始めています。

↑空気清浄機ぼ国内市場は2012年をピークに右肩下がり。2017年は買い替え需要により若干プラスを予想
↑空気清浄機ぼ国内市場は2012年をピークに右肩下がり。2017年は買い替え需要により若干プラスを予想

 

個室向け&空清のみのモデルで普及率アップを狙う

空気清浄機の需要が伸び悩んでいるもう一つの要因に、個室や単身世帯への普及の遅れがあります。

 

「一般世帯への普及率が42.4%なのに対して、単身世帯は25.1%。また、1世帯あたりの保有台数は1.34台となり、まだまだ個室への導入は進んでいません。個室や単身世帯の潜在ニーズはあるので、そこに合った製品を投入し、普及率を上げていきます」と、同社の桜田宇洋氏は語りました。

↑空調営業本部事業戦略室コンシューマー営業担当部長の桜田宇洋氏
↑空調営業本部事業戦略室コンシューマー営業担当部長の桜田宇洋氏

 

↑空気清浄機の単身世帯への普及が進まず、ファミリー層でも保有台数はまだ平均1.34台
↑空気清浄機の単身世帯への普及が進まず、ファミリー層でも保有台数はまだ平均1.34台

 

↑ダイキンでは、ファミリー層の買い替え、単体空清需要、個室ニーズに3つのラインアップで攻める
↑ダイキンでは、ファミリー層の買い替え、標準空清(加湿機能のないもの)の需要、個室ニーズに対して3つのラインアップで攻めます

 

上記を踏まえ、投入したモデルのひとつが個室向けのスリムタワー型加湿機能搭載モデル「MCK55U」タイプ。加湿機能搭載ながら、設置面積は270×270mmと省スペースで、狭い個室やワンルームに置いても邪魔になりません。同時に、加湿機能がない「MC55U」も発売。両者とも11月17日から発売しています。

 

「空気清浄機購入者のうち8割が加湿機能タイプを選んでいますが、実はその中の28%は空清機能のみが欲しくて購入しています。空清単体モデルに満足できる機能・性能がないため、しかたなく高性能な加湿モデルを選んでいるのです」(桜田氏)。

 

そこでダイキンでは、10年ぶりに空清単体モデル「MC55U」を発売することに。「MC55U」は「MCK55U」の加湿機能のみを取り外したものなので、設置面積は同じですが、高さが200mm低い500mmになっています。コンパクトなので、本棚やタンスの上にも設置可能です。

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↑MCK55U

 

↑MC55U
↑MC55U

 

最上位機種は「ツインストリーマ」で従来比2倍の脱臭性能を実現

また、買い替えユーザーをターゲットに、高機能なリビング向け加湿搭載モデル「MCK70U」も11月17日から発売しました。

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↑MCK70U

 

「ダイキンの空気清浄ユーザーの多くが、脱臭性能を評価してダイキンを選んでいます。一般的な空清は活性炭フィルターで脱臭していますが、飽和状態になるとそれ以上のニオイ成分を吸着できなくなるし、熱を加えると逆にニオイを放出するという欠点がある。当社のモデルは、ストリーマで臭いを分解し、常にフィルターを再生しているので脱臭性能が低下しません。新製品ではその強みをより強化し、従来比2倍の脱臭性能を実現しました」(桜田氏)

 

先述の「ストリーマ」とは、プラズマ放電の一種「ストリーマ放電」によって生じた高速電子が空気中の窒素や酸素と衝突・合体してOHラジカルなど分解力を持つ4つの分解素を生成。これがニオイ分子や花粉を分解したり、有害物質を抑制したりするもの。ダイキンの空清では、このストリーマを脱臭フィルターやHEPAフィルターに照射しているのです。

↑ストリーマの仕組み
↑ストリーマの仕組み。ストリーマ放電によってOHラジカル、酸素ラジカル、レイキ酸素、レイキ窒素などの4つの分解素を作ります

 

「MCK70U」では、従来の2倍のストリーマユニット「ツインストリーマユニット」を搭載しました。これにより脱臭性能と有害物質の分解スピードが2倍となり、フィルターの除菌も半分の時間でできるようになりました。

↑右が従来モデルに搭載されているストリーマユニット、左が「MCK70U」に搭載したツインストリーマユニット
↑右が従来モデルに搭載されていたストリーマユニット、左が「MCK70U」に搭載したツインストリーマユニット

 

ハスの繊維を使用し汚れが広がらない「TAFU」フィルターを新採用

さらに今回、ダイキンは新しいフィルターも開発しました。従来の静電HEPA(ヘパ)フィルターの場合、フィルターに汚れが付着するとフィルターの繊維上に汚れが広がり、フィルターの静電力が徐々に低下し、汚れが捕集できなくなってしまうそうです。フィルターの初期性能を100とした場合、10年後には50%に半減してしまうとか。ダイキンは静電HEPAフィルター+電気集じん方式を採用しているモデルもあり、こちらは汚れ自体を帯電させてフィルターに吸着させるので、フィルター性能の低下は防ぐことができ、10年後でもフィルター性能は70%程度に抑えることができます。ただ、静電力が強いため汚れも多くなり、メンテナンスが大変というデメリットがありました。

 

その点、今回「MCK70U」に採用した新型フィルター「TAFU(タフ)」にはHEPAと同じ静電フィルターながら、素材にロータス(蓮)繊維を使用。蓮の繊維は撥水性・撥油性があるので、付着した汚れが広がらず、フィルターの静電力が落ちないとのこと。メンテナンスも不要で、10年後のフィルター性能は72%と電気集じん式より若干高くなっています。

↑HEPAフィルターとTAFUフィルターの見た目は全く同じ
↑TAFUフィルター(左)とHEPAフィルター(右)の見た目は全く同じ

 

↑従来のフィルター方式と新TAFUフィルターの違い。TAFUフィルターは経年劣化が少なく、メンテナンス不要とメリットが大きいです
↑従来のフィルター方式と新TAFUフィルターの違い。TAFUフィルターは経年劣化が少なく、メンテナンス不要とメリットが大きいです

 

↑水滴を垂らしてみると、HEPAはじわーっと広がるが、TAFUは水玉を弾いている
↑水滴を垂らしてみると、HEPAフィルターは水がじわーっと広がりますが(左)、TAFUフィルターは水玉を弾きます(右)

 

さらに、Wi-Fi機能を採用し、スマートフォン接続機能も搭載しました。部屋のPM2.5とホコリ、汚れを6段階でスマホ画面に表示するほか、1日および1週間の積算グラフを表示し、いつ、どのタイミングで部屋が汚れるかが把握できます。スマホから空気清浄機本体のオン/オフ、コース設定が外出先からもコントロールでき、加湿タンクの給水タイミングも通知。ただし、いま話題のスマートスピーカーにはまだ対応していません。

 

意外に知られていないのが残念! ダイキン空清の2つのメリット

「意外に知られていないのですが、ダイキンの加湿空清のこだわりは、加湿運転時も空気清浄能力が落ちないこと。他社のモデルには2割ほど空清能力が落ちるものがありますが、当社は加湿時も空清時も能力は変わりません。さらに、加湿時の風が冷たくないのも大きな特徴。ダブルパスミキシング方式を採用しており、2つの空気経路から加湿された空気と室温そのままの空気を混ぜるので、吹き出し温度は室温のマイナス3°程度で済むんです」(桜田氏)

 

冬場はずっと加湿機能をONにすることもあるので、加湿時に空気清浄能力が落ちない点は魅力。また、部屋が潤ったとしても、寒くなるのは困りものなので、「加湿時も空気清浄能力が落ちない」「風が冷たくない」という2つのメリットは、意外に重要なのがわかります。

 

新モデルはすべて「ストリーマ+イオン放出」のダブル方式を採用

ちなみに、ダイキンの空気清浄機は、空気を吸い込んで分解するストリーマ方式と、イオン放出系の「アクティブプラズマイオン」のダブル方式を採用。上記の3モデルもすべてダブル方式です。加湿タイプは、加湿フィルターと加湿水もストリーマで除菌しているのが特徴です。放出系のアクティブプラズマイオンはシャープの「プラズマクラスター」やパナソニックのナノイーに比べると知名度が低いのが悩みの種。その点について桜田部長は、「有害物質を確実にスピーディに分解・除去できるのはストリーマ方式。ただ、空間やカーテン等に染み付いたものにはアクティブプラズマイオンが有効です。ダブル方式はダイキンの強みなので、新しいTAFUフィルターとともに、今シーズンはもっと強くアピールしていきたい」と意気込みを語りました。

 

空気は我々が24時間365日、常に吸い続けているもの。特に喚気がしづらい冬こそ、空気の質には十分に注意したいところです。その点、ダイキンのダブル方式による空気清浄能力、脱臭力は魅力的ですね。

↑ダイキンはストリーマと放出イオンのダブル方式
↑ダイキンはストリーマと放出イオンのダブル方式

 

【SPEC】

MCK55U(スリムタワー型加湿機能搭載モデル)

●実売想定価格:4万8800円(税別)●サイズ/質量:W270×H700×D270mm/9.5kg●タンク容量:約2.7L●適用床面積:空気清浄運転時が25畳まで、加湿空気清浄運転時の空気清浄が25畳まで、加湿は木造が8.5畳まで、プレハブが14畳まで

MC55U(加湿機能非搭載コンパクトモデル)

●実売想定価格:3万8800円(税別)●サイズ:W270×H500×D270mm/8.5kg●タンク容量:約2.7L●適用床面積:空気清浄運転時が29畳まで

MCK70U(リビング向け加湿搭載モデル)

●実売想定価格:5万2800円(税別)●サイズ/質量:W395×H600×D287mm/12.5kg●タンク容量:約3.6L●適用床面積:空気清浄運転時が31畳まで、加湿空気清浄運転時の空気清浄が31畳まで、加湿が木造11畳まで・プレハブ18畳まで