家電
2019/7/2 18:00

なぜ、家電メーカーがここまで…? 人気沸騰のバルミューダ、操作音の「音作り」から見えてきた「モノづくりの哲学」

五感に働きかけるには、聴覚や触覚もおろそかにできない

――音に対してのこだわりがスゴイですね。これは寺尾社長のこだわりですか?

 

髙野 元ミュージシャンとして、社長の強いこだわりが感じられます。トースターの時などは、今の音を110%の長さにしてくれとか、イコライザーの概念を熟知しているので何Hzの音を何dB上げてくれとか、何Hzを切ってくれとか。音響機材の知識もあるので、かなり具体的に調整の指示が入りましたね。

 

岡山 社長のこだわりもそうですが、バルミューダは、いかに製品を通じてユーザーの五感に何を働きかけることができるかを重視しているので。「音もデザインのひとつだ」という考えで製品開発を進めています。

 

髙野 視覚・聴覚だけでなく触覚にも常に気を配っています。私自身は「てばかり(手量り・手測り)」と呼んでいますが、エッジの滑らかさ、ボタンを押すための自然な動きなど、操作したり動かしたりするときに違和感なくふれることができるような形状、質感を大切にしています。それが結果として、製品の佇まいを決め、インテリアとしての雰囲気をまとうようになる。これを強く意識して製品づくりをしています。

 

会社の成長に伴い、製品開発にスピード感が出てきた

――ちなみに、新製品の企画自体は寺尾社長が出してくるのですか?

 

髙野 以前はそうでしたが、今は違います。ほとんどわれわれが企画発案して社長にプレゼンしています。今進めている新製品はすべてスタッフの企画によるものです。長く一緒に行動してきて、社長の考えを理解する人間が増え、成長してきている。バルミューダらしさとは何なのかが浸透すると同時に、新メンバーがどんどん増えて常に新しい息吹が吹き込まれ、それが化学反応を起こして良い方向に進んでいる印象です。

 

――自由に企画発案できる環境になっていると?

 

髙野 やるべきだと思うことにブレーキは全くかかりません。以前はダンボールでモック(模型)を作っていましたが、今では実際に動く実機を作ってから企画の提案したり、先にプログラムを作ってから技術チームに相談したりしているので、社内で意識を共有しやすくなっています。皆、経験値を積んでいるので、企画の段階から量産化する方法を検討するなど、ビジネスにスピード感が出てきました。

 

今後もカテゴリーに捉われない開発を続けていく

――なるほど。企業として成熟してきたというわけですね。いままでバルミューダは、扇風機やトースターといった、既に飽和した市場に新しい価値を与えて、市場の活性化に大きな貢献をしてきました。今後も、このようなジャンルに挑戦するのでしょうか。

↑東京・武蔵野市にある現在のバルミューダ本社のエントランス。いままで開発してきた製品の一部が展示されています

 

髙野 今、会社としては人のお役に立つ道具づくりをすることに主眼を置いていて、商品カテゴリーに枠を設けていません。いくつか新ジャンルになりそうな商品も企画しているところです。

 

岡山 トースター開発時は、30人程度だった社員も、今や100人を超えました。それぞれが目的を持って仕事に取り組み、ジャンルに捉われない開発をしています。どうぞ今後も楽しみにしていてください。

 

デザインにこだわり抜くバルミューダは、音もデザインにとって重要な要素だと考えています。これは、家電をただ単に家事を代行する機械として捉えるのではなく、「人の人生に寄り添うもの=人生の一部」となるよう、開発を続けているから。そのためには、心地よい形、色、音、機能・性能、その全てに気を配る必要があるということですね。バルミューダが言語の壁を越えて、アジアでも人気が拡大している理由も、この点にあるのでしょう。今回は「音」に焦点を当ててきましたが、さて、次はどのような形で五感に訴えてくれるのか……。次の製品発表が楽しみですね。

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