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2019/10/15 18:45

ダイキンの「野望」は無謀じゃない! 高級エアコンの代名詞「うるるとさらら」を拡充した大きな狙い

ダイキンといえば、湿度コントロール技術に優れたブランドライン「うるるとさらら」が思い浮かぶはず。快適除湿を行う「さらら除湿」のほか、屋外の空気から取り込んだ水分を集め、エアコン暖房で乾燥した室内に潤いを与えるうるる加湿(無給水加湿)機能はあまりにも有名です。同社ではこの「うるるとさらら」に新たにミドルクラス機種を追加し、寝室など個室ニーズに対応すると発表しました。追加された新シリーズは「うるさらmini」Mシリーズ。12月24日に発売します。

 

評価の高い「うるるとさらら」をミドルクラスにも拡充

↑「うるさらmini」Mシリーズ

 

これまで「うるるとさらら」は最上級のフラグシップとして展開され、ラインアップのなかには6畳向けモデルも用意していましたが、価格も最上級なため、売れ行きは12畳用以上のリビング向けが中心でした。一方、10畳までの小型ゾーンは無給水加湿機能を持たないスタンダードモデルが販売の中心。ただ、同社は「うるるとさらら」のユーザーの満足度は高いため、未経軽のユーザーも一度体験すれば良さを実感してもらえるはずと考え、「うるるとさらら」をミドルクラスに拡充することで購入のハードルを下げ、ユーザーの拡大を狙ったといいます。

↑無給水加湿機能を搭載する「うるるとさらら」はリビングでの利用が中心で、個室用には非搭載のスタンダードモデルが売れていました

 

↑「うるさら」ユーザーの満足度は約90%で、約80%のユーザーがリピート購入を希望しています

 

こうした背景のもとに発表された「うるさらmini」Mシリーズは、2.2kW(主に6畳用)、2.5kW(主に8畳用)、2.8kW(主に10畳用)の3機種をラインナップ(いずれも電源電圧は100V)。実売予想価格は2.2kWモデルで17万円前後(税別)~と、後述するフラグシップモデルの「うるさらX」Rシリーズより7万円も低価格で、まさに「うるさら」のエントリーモデルといえます。

↑個室にも「うるさら」導入を促す戦略モデルのMシリーズ

 

↑Mシリーズの室内機の外寸は幅798×高さ295×奥行き272mm、室外機は幅795×高さ693×奥行き300mm

 

清潔機能や快眠機能も搭載し、薄型化も実現

Mシリーズは低価格でも高機能です。無給水加湿機能はフラグシップのRシリーズと同等で、24時間無給水で連続加湿運転が可能。後述しますが、Rシリーズにも搭載されている無給水加湿技術を応用した「水内部クリーン」、「フィルター自動お掃除機能」や「ストリーマ空気清浄」といった、エアコン内の清潔機能も満載です。

↑エントリーモデルといえど、フラグシップモデルと同等の加湿能力を持っています

 

Mシリーズは個室・寝室をターゲットにしているため、快眠機能も搭載しています。スマートフォンの専用アプリに就寝時間と起床時間を入力すると、良質な睡眠と快適な起床のための理想的な体温変化を目指し、エアコンが室温を制御するものです。

↑新開発の睡眠アプリ「ねむロク」アプリによって、理想的な眠りに近づけるようエアコンを制御します。もちろん、エアコン本体には無線LANが内蔵されており、購入したその日から睡眠アプリが利用できます

 

デザインも一新し、個室利用を想定して薄型にしました。奥行き272mmとフラッグシップモデルより約10cmも薄くなり、小部屋でも主張しすぎないデザインになっています。

↑Mシリーズは個室に合うよう薄型に。一方、詳細スペックが公表されていませんが、フラッグシップモデルのRシリーズは熱交換器が大きいため奥行きがある分、省エネ設計になっています

 

↑Mシリーズ(手前)とRシリーズの奥行きの実物比較

フラッグシップモデルは上下に幅広い風でやさしく暖める

一方、フラッグシップの「うるさらX」Rシリーズも11月1日に発売します。2.2kW~9.0kWまでの10機種をラインアップし、店頭想定価格は2.2kW(主に6畳用)が24万円前後、4.0kW(主に14畳用)が31万円前後(税別)となります。

↑「うるさらX」Rシリーズ

 

↑「うるさらX」Rシリーズはフルラインアップで発売。室内機の外寸は幅798×高さ295×奥行き370mm

 

Mシリーズとの大きな違いは「AI快適自動運転」の搭載です。人・床・壁センサーを搭載し、壁・床の温度を検知・推測し、過去の運転内容(ユーザーの好み)を参考にしながら自動的に温度・湿度をコントロールします。

 

新機能としては、暖房運転開始時の風の吹き出し方法を変更して快適性をアップしたこと。従来は暖房風をエアコンから垂直に降ろすことで足元暖房を強化していましたが、新製品は上下2つのフラップに気流を沿わせるダブルコアンダ気流で上下に幅広い風を作り、足元から上半身までムラなくやさしく暖める暖房を実現しました。これにより、部屋を暖めるスピードは維持しながら、体感風速は70%も低減したとのことです。

↑人・床・壁センサーで壁と床の温度を検知し、過去の運転状況から学習したユーザーの好みの温度・湿度情報をかけ合わせ、それぞれの家庭にあった快適な空調に自動でコントロールします

 

↑Rシリーズでは、より広範囲にムラなく、それでいて身体に負荷のかからない暖房を実現しました

 

Mシリーズと同様に「水内部クリーン」も搭載します。こちらは「うるるとさらら」の無給水加湿技術を応用し、屋外の大気から水分を集めて冬の時期にも熱交換器を水で洗浄するものです。さらに、新機能として「水de脱臭」機能も搭載しました。こちらは室内に放出した加湿水分がカーテンや壁紙に付着することでニオイ成分を押し出し、それをエアコンが回収してプラズマ放電のストリーマで脱臭するというもの。このほか、Mシリーズにも搭載する快眠機能も搭載します。

↑無給水加湿技術を応用した「水内部クリーン」で冬でも大量の水で熱交換器を洗浄します

 

↑「水内部クリーン」のデモ映像。外気温16℃、湿度52%の環境で1Lの水を生成しているのが分かります

 

↑水内部クリーンに加えて、プラズマ放電によるストリーマ除菌、送風乾燥、加熱乾燥など複数の内部クリーン技術でエアコン内部を清潔に保ちます。水内部クリーンは加湿水の生成に時間がかかるため、不在時に運転することを推奨。そのため、ユーザーが自分のタイミングで運転できるよう、あえて手動設定としました

 

空気清浄機とオフィス用エアコンにも「うるるとさらら」を投入

ダイキンでは今回、エアコンと連動する4in1型「うるるとさらら空気清浄機 MCZ70W」と、ビル用の天井カセット型エアコンで初めて無給水加湿技術を搭載した「うるるとさららZEAS(ジアス)」も発表しました。

↑除湿・加湿・集塵・脱臭が1台でできる「うるるとさらら空気清浄機」は11月1日発売で店頭想定価格は14万円前後(税別)

 

↑おまかせ運転を選ぶと4つの運転を自動でコントロールするほか、ダイキンのエアコンと連動して自動的に除湿・加湿運転するアシスト機能も搭載

 

↑「うるるとさららZEAS」は既存の天井カセット型エアコンに「うるるユニット」を追加することで利用できます。2020年発売予定で、希望小売価格は45万5000円(税別)

 

↑無給水加湿ユニットの「うるるユニット」

 

このように、「うるるとさらら」を拡充するのには大きな狙いがあります。それは、国内家庭用エアコン市場でトップシェアを獲得すること。現在、ダイキンは国内2位の位置におり、トップのパナソニックに肉薄している状況とのことです。ダイキンはもともと高級ゾーンのシェアは高いのですが、「うるるとさらら」をミドルゾーンにも拡充してシェアを獲得し、トータルでトップを狙う算段です。空気清浄機と業務用エアコンに「うるるとさらら」の名前を冠したのも、知名度を上げるためのもの。ダイキンの野望は決して無謀なものではなく、早ければ2020年にもその結果が見えそうな予感がします。

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