家電
空気清浄機
2020/1/22 19:30

「空気清浄機は家だけ」で子どもが守れるのか? 「保育園に100台寄贈」プロジェクトに見るブルーエアの強い警告

政府調査によると、日本国内における空気清浄機の普及率は43.8%(内閣府の平成30年消費動向調査、二人以上世帯において)と、高い数値を示しています。花粉やPM2.5、ウイルス等への対策意識の高まりにより、家庭においては空気清浄機の導入が進んでいるようです。とはいえ共働き家庭の場合、特に平日は1日の大半を家ではなく、別の場所で過ごすはず。 今回は、子どもたちが1日の大半を過ごす、あの場所の空気に関するお話しです。

 

屋外よりも室内の空気のほうが汚染度が高く、子どもが危険にさらされている

ブルーエアのCPO(Chief Purpose Officer)、サラ・アルセン氏は、「子どもたちの全てがきれいな空気を吸う権利がある」と語ります。アルセン氏によると、世界中の子どもの10人に9人が有毒な成分を含む安全でない空気を吸っているとのこと。「汚染された空気は肺から血液、内臓へと伝わり、子どもの健やかな成長を阻害する。意外に知られていないのが、屋外よりも室内の空気のほうが汚染度が高いことだ」と語りました。なぜなら、屋外の空気は拡散されていきますが、屋内の場合は外から入り込んだ汚染物質が部屋の中にとどまり、凝縮・蓄積されるとともに、カビやダニ、建材に使われている化学物質など室内ならではの物質も存在しているから。

↑ブルーエアのサラ・アルセン氏

 

こうした背景のもと、子どもたちを守るためブルーエアが2016年から始めた活動が「Clean air for children」です。始まりは韓国。ソウル市内の保育園に50台の空気清浄機を無償提供したのがスタートでした。現在までに韓国内では累計500台を提供するまでに至っており、韓国以外にも中国、インド、イギリス、アメリカ、アラブ首長国連邦など世界各国で展開中です。

↑ブルーエアは、貧困ゆえに健康診断が受けられない地域で、呼吸器官の健康診断も無償で実施しています

 

また、空気清浄機の導入によるメリットについて、アルセン氏はロンドンでの実例をもとに次のように語りました。

 

「ロンドンでも大気汚染が深刻化している。ロンドン市長が1年ほど前に発表したレポートでは、市内で最も大気が汚れている10か所の学校・保育施設内の空気を測定した結果、屋外の10倍も汚れていた。測定した施設には0歳から3歳児向けの保育施設もあり、子どもたちはその中で1日8時間ほど過ごしている。それらの教室に空気清浄機を設置したところ、子どもたちの集中力が上がったとする教師は89%に達し、学習成果が上がったとの回答は80%にもなった。また、教師、子どもたちともに病欠が減ったとするレポートもあった。空気の環境は健康だけでなく学習にも影響する」(アルセン氏)

 

日本でも子どものために空気清浄機を寄贈する活動を開始

そして今回、日本でも「Clean air for children」活動がスタートすることとなりますが、これに先立ち、ブルーエアの日本総代理店であるセールス・オンデマンドでは独自の活動を開始しています。2018年10月、長野県安曇野市の県立こども病院で、関野竜佑(りゅうすけ)君が体重わずか258gの超未熟児として生まれました。関野君は、医療スタッフの懸命な看護により2019年4月に3340gまで成長。無事、退院となりました。このニュースを受け、ブルーエアでは「竜佑君にきれいな空気の中で大きく育ってほしい」という思いから同5月、関野さん宅に空気清浄機1台を寄贈したものです。

 

竜佑君のお母さんからは、「小さく生まれた竜佑は人一倍感染症に注意が必要です。今は空気清浄機のおかけで気持ちの面で安心感があり、快適に過ごすことができてています」と、ブルーエアに対して感謝の手紙を送りました。なお、セールス・オンデマンドは同時に、県立こども病院に対しても4台の空気清浄を贈呈しています。

↑竜佑君の退院後にブルーエアを1台プレゼントしました

 

保育園や幼稚園の空気に意識が低いことへの危機感から、空気清浄機を寄贈

そして昨年末、「Clean air for children」活動を日本でも本格展開。渋谷区の協力の下で同区内の区立保育園・幼保一元化施設20か所に空気清浄機を合計100台寄贈しました。その背景には、家以外で過ごす子どもが増えるという見通しがあるからです。昨年10月から幼稚園・保育園・認定こども園など幼児教育・保育の無償化がスタート。働き出す母親が増加することに伴い、保育園を利用する夫婦がより増加すると見られています。夫婦がフルタイムで働くいる場合、子どもが保育園で過ごす時間は推定で平均11時間。実に1日の半分を自宅以外で過ごしているのです。

 

「子どもの1日の呼吸量は、体重1kgあたりで大人の2倍にもなる。つまり、大人の2倍の汚染物質を取り込んでいることになる。しかし、子どもがいる家庭では、自宅の空気環境の改善には積極的だが、1日の大半を過ごす保育園や幼稚園に関しては意識が低いのが実態だ」(セールス・オンデマンドの荒井加奈子マネージャー)。これに対する危機感が、今回の100台寄贈を決めた理由というわけです。

↑子どもの体重1kgあたりの呼吸量は大人の2倍。つまり汚染物質を取り込む量も2倍になります

 

↑自宅に比べて、公共施設に対する空気環境改善の意識は低くなっています

 

渋谷幼稚園での空気の改善を受け、公共施設への導入の可能性も

同社が学校法人 渋谷教育学園 渋谷幼稚園と共同で昨年12月に取り組んだ空気環境改善プロジェクトでは、保育室内のPM2.5濃度が渋谷区の屋外平均数値をはるかに超え、環境基準値の約3倍もの値を示しました。屋外より屋内のほうが空気が汚れていることが実証されたのです。その後、全保育室と大ホールにブルーエア空気清浄機を導入したところ、わずか60分で98%のPM2.5を除去、屋外の測定値および環境基準値をはるかに下回る結果になりました。

↑渋谷幼稚園で行ったプロジェクトでは、園内のPM2.5濃度が環境基準値を3倍を示していましたが、空気清浄機の稼働60分後には98%以上を除去できたことを確認

 

12月19日、渋谷区役所で行われた贈呈式で、渋谷区の長谷部 健区長は「私にも3人の子どもがいて、インフルエンザやアレルギー対策として自宅には空気清浄機を導入している。区内の公共の場にも空気清浄を設置しているが、これまではそれほど気にかけていなかった。今日をきっかけに、区としても技術革新や効果効能について議論し、住民の健康を守るための環境整備に取り組んでいきたい」と語りました。これまで渋谷区では屋外の大気汚染のみを測定していましたが、今後は屋内にも目を向け、空気質を改善することで予防医療へとつながる予算も検討していきたいとしています。

↑贈呈式の様子。ブルーエアのアルセンCPOから渋谷区の長谷部区長(写真右)に空気清浄機100台が贈呈されました

 

↑今回渋谷区に贈呈されたブルーエアの空気清浄機「Blueair Classic」シリーズ

 

アレルギー患者の低年齢化が進む現在、自宅以外の空気環境も考えるべき

また、贈呈式後のトークセッションでは医療ジャーナリストの森 まどか氏が登壇し、「花粉症を含むアレルギー性鼻炎やぜんそくといった呼吸器の疾患は年々増えている。特に問題なのが、その低年齢化。子どものときに発症するとその後の長い人生、ずっと付き合っていかなければならない。そうならないためには、われわれ大人が子どもたちが健康に成長できる環境を作っていかなければいけない」と訴えました。

↑日本国内ではアレルギー疾患の低年齢化が進んでいます

 

↑医療ジャーナリストの森さんは、「われわれ大人には子どもたちの健康を守る責任がある」と説きます

 

多くの人は自宅のリビングの空気にばかり目を向け、リビングに最も高価な空気清浄機を導入しがちです。しかし、1日の中で最も長い時間を過ごすのは保育園であり、学校であり、そして会社です。そこはたくさんの人が出入りし、さまざまな物質が流入してきているのにもかかわらず、私たちはなぜか無頓着でした。ブルーエアは今後も日本国内で「Clean air for children」活動を展開し、子どもたちの空気環境の改善に寄与するとのことですが、それにも限界があります。私たちも他人事と思わずに、自宅以外の空気環境についてもっと真剣に考える必要がありそうです。

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