家電
2020/3/10 17:30

「花粉症患者が増え続けるワケ」が明らかに! 事業者団体のセミナーで「花粉症対策と最新情報」を聞いてきた

新型コロナウイルス騒動ですっかり影に隠れてしまいましたが、今まさにスギ花粉のピークが始まっており、花粉症を患っている人にとってはつらい日々です。電車の中でクシャミなんてしようものなら一斉に睨まれて…なんて経験も多いのではないでしょうか。花粉シーズンに突入したいまこそ、有効な花粉対策の情報が必要。というわけで、「花粉問題対策事業者協議会(JAPOC)」が1月末に開催したセミナー「2020年花粉シーズンの花粉症対策と最新情報」を振り返っていきましょう。

 

経済損失を防ぐためにも、健康経営への注力が重要

同セミナーで、花粉症臨床研究の第一人者である日本医科大学大学院の大久保公裕教授は、「米国の調査では、花粉症の薬を飲んで眠くなると、花粉症患者の平均生産性損失額は年間600ドル弱になるという。1日10時間の労働時間のうち1時間うとうとすると月間200ドルのロスで、それが3か月間続く。日本でもだいたいそのくらいだろう」と説明します。

 

そのうえで、大久保教授は「今、企業にとって重要なのは、『健康経営にいかに力を注ぐか』ではないか。オフィス内の空調を改善してクリーンな空気の流れを作り、飲み物や軽食などでリフレッシュできる環境を作るなどして、花粉症の薬を飲んでも眠くならないようにして生産性の低下を防ぐべきだろう」と語りました。

↑日本医科大学大学院の大久保公裕教授は「花粉症による経済的損失は大きく、企業は健康経営を推進すべき」と語ります

 

花粉症患者が増え続けるのは、花粉の飛散する量が増えているから

花粉症患者は年々増加しています。大久保教授によると、現在の日本では成人の4割以上が花粉症に罹っているとのこと。近年、花粉症患者が増え続けているのには、母体・母乳の影響や大気汚染、居住環境の変化、感染症の減少など様々な要因が考えられていますが、最も大きな影響を与えているのは、飛散花粉数の増加という根本的な問題です。

 

東京都がまとめた花粉飛散数の経年変化を見ると、年ごとに飛散量の多寡に大きな差がありますが、平均してみると過去10年で2-3倍に増えています。「戦後に植林したスギの木が成長し、花粉を多く飛散させ始めている。今後50年はこれが続く」とウェザーニューズ予報センターの草田あゆみセクションリーダーは解説します。スギは樹齢30年を超えると花粉を多く産出するようになり、おそらく樹齢100年までは花粉を出し続けるだろうと言われています。戦後に植林されたスギのうち、まだ成木に成長していない木が2割ほど残っていると見られており、これらが成長するとさらに花粉飛散量が増えると見られています。

 

なお、人工林で樹齢100年を超えたものが存在しないので、樹齢100年を超えたときに花粉がどうなるかは誰にもわからないそうです。つまり、われわれが生きているうちは、花粉の飛散量が増えることはあれ、大きく減ることはないということ。花粉症に罹ってしまったら自衛するしかないのです。

↑東京都の花粉飛散量を見ると、年ごとに大きく変化するものの、平均すると徐々に増えているのが分かる

 

↑林野庁によると、樹齢50年以下のスギ、ヒノキがまだたくさんあり、今後50年は花粉を多く出し続けることは確実

 

飛散の開始は早まったが、終了の時期は例年と変わらない

「昨年の夏が天候不順だっため、今年の飛散量は昨年に比べると少ないですが、それでもピーク時は多く飛ぶので油断はできません」と草田さん。特にこれからピークを迎えるヒノキに関しては「開花直前の気象状況も影響を与えるので注意が必要です」とのこと。

 

なお、今年は暖冬の影響で花粉が飛び始める時期は1週間ほど早まっていますが、「終わりは例年と変わらない予想です。5月初旬までヒノキ花粉が残る可能性が高いです」(草田さん)。ウェザーニューズでは現在、スマートフォンアプリ内に「花粉Ch.」を設置し、全国のリアルタイムの飛散状況や1時間ごとの「ピンポイント花粉飛散予想」を掲載しているので参考にしましょう。毎日の花粉飛散量を予測して大量飛散情報をプッシュ通知する「花粉対策アラーム」もあるので、外出する時には服装や装備の参考になります。

↑ウェザーニューズでは「花粉Ch.」を開設して1時間ごとの花粉飛散予想などを提供している

 

↑全国約1000か所に花粉観測機を設置し、今の飛散状況をリアルタイムで公開

空気清浄機の購入にはJAPOCマークが一つの判断基準に

こうした花粉飛散情報をもとに、家庭内や外出時に自衛する必要があるわけですが、花粉対策グッズを選ぶ際に「JAPOC」マークが一つの判断基準になります。家電メーカーや繊維メーカー、製薬会社、研究機関などが参加する「花粉問題対策事業者協議会(JAPOC)」では、独自の試験方法に基づく性能測定を行い、自主認証基準に満たした製品に対して「JAPOC」認証の授与を行っています。家電製品では現在、象印マホービンやダイソン、パナソニック、ダイキンの空気清浄機が認証されています。約8畳の試験空間で約30分後に花粉が99%除去できることがJAPOC認証の条件となっているので、空気清浄機を購入する際には参考にしてはいかがでしょうか。

↑象印マホービンの空気清浄機の新製品(写真左)は、ジェット機などに使われている二重反転プロペラファンにより、最大運転でも39dBと静音化に成功。大風量だけど静か、しかも省エネ

 

↑ダイソンの空気清浄機は搭載したセンサーにより花粉やPM2.5、二酸化窒素などの量を見える化して教えてくれる

 

↑独自の微粒子イオン「ナノイー」の10倍のパワーを持つ「ナノイーX」を搭載したパナソニックの空気清浄機はイオンの力で花粉を抑制

 

↑ダイキンの空気清浄機は、吸い込んだ花粉をストリーマ放電により分解・不活性化

 

網戸やスプリングコートで花粉の侵入を防ぐ方法もある

このほか、あまり知られていないところでは、サンエスの空気清浄網戸、帝人フロンティアの花粉対策衣類繊維が認証を受けています。サンエスの網戸「ナノキャッチ」はネットとネットの間にフィルターを挟んだ3層構造の網戸です。外側のネットは隙間0.6mm以下でヒバ由来の忌避剤を浸透させているので微小昆虫が侵入できず、撥水性もあるので雨も弾きます。間に挟むフィルターにより花粉の捕集率は98.2%と、ほとんど花粉を通さないとのこと。ホコリも通しません。風の通過率は57%と、網戸本来の風通し機能も確保しています。

 

腰高窓、掃き出し窓用のサイズを用意しており、価格は一般的な網戸の2倍程度だそうです。発売してまだ4年のため、フィルターの耐久性のデータはなく、フィルターの交換時期は特に定めていませんが、4年使用してもほとんど汚れていないそう。花粉の時期が終わったら中のフィルターを外して通常の網戸として使用することもできます。

↑ナノキャッチはフィルターを間に挟んだ3層構造の網戸。花粉、虫、雨の侵入を防ぐ

 

帝人フロンティアの「ポランバリア」は、花粉よりも細い繊維を使用し、凹凸ができるだけ少ない方法で縦糸と横糸を緻密に織ることで花粉が落下しやすく、隙間から花粉が侵入しにくい生地です。今年初めてクロコダイルブランドがスプリングコートで採用し、販売を開始しました。外出から帰ってきて、家に入る前に玄関前で軽く払えば表面の花粉が落ち、家の中への花粉の持ち込みを減らすことができます。

↑クロコダイルから発売中のポランバリアを使用した春コート

 

新型コロナウイルスの影響でマスクが手に入りづらく、花粉症に罹っている人は辛い毎日を過ごしていることと思います。家に花粉を持ち込まない、入ってしまった花粉を素早く除去するといった工夫により、せめて家の中だけでも快適に過ごせるようにしたいものですね。

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】