数年前から「低温調理」が話題になっています。最近では高級レストランだけではなく、ラーメン店のチャーシューなどにも活用されていて、知らぬ間に低温調理された料理を食べている人も多いはず。そして、低温調理が普及していくなか、日本の低温調理器の先駆けとして脚光を浴びたのが「BONIQ」(ボニーク)です。BONIQは2017年にクラウドファンディングからスタート。肉ブームや健康志向の高まりを受けて順調に販売を伸ばし、2019年11月には3万台を突破しました。そんな話題の製品が2020年の1月、プロ仕様の「BONIQ Pro」としてアップデートしたとのこと。今回は、その使い勝手と料理の味をレポートしていきます!
「低温調理」だとタンパク質を壊さずおいしく調理できる
低温調理とは、食材と調味料などを真空パックして、低温でじっくり加熱する調理法のこと。焼く・煮る・蒸すに続く“第4の調理法”として話題となっています。その特徴は、タンパク質を破壊せず、食材がもっともおいしくなる温度帯で加熱することで、食材が硬くならず、しっとりジューシーに仕上がること。近年では、タンパク質を効率的に摂取できる調理法として、多くのアスリートや芸能人が栄養管理に採り入れるケースも増えてきました。低温調理は、味の面でも栄養面でも注目されているというわけですね。
そんな流行りの低温調理を手軽に楽しめる「BONIQ Pro」は、「飲食店のニーズに対応したプロ仕様」とのことで、まず見た目からしてハイレベル。前作の「BONIQ」はステンレスと樹脂でしたが、「BONIQ Pro」は高級感あふれるフルアルミボディを採用。剛性も高まり、キッチンツールとしての信頼度と、インテリアにとけこむスタイリッシュな外観を兼ね備えています。
サイズが小型化したうえ、1200Wにパワーアップ
BONIQ Proはサイズも初号機より36%ダウンと小型化にも成功し、手軽に持ち運べるようになりました。これなら友人宅でのホームパーティや、電源付きのキャンプ場などにも持参していけるでしょう。
また、出力は初号機の800Wから1200Wへパワーアップしました。1200Wのハイパワーは、他社の低温調理器と比べてもトップクラス。設定温度に到達するまでの時間が短くなり、一度に調理可能な量も増えています。
脱着式クリップホルダーによって設置性も向上。クリップ式のホルダーを装着すれば、大きな鍋にも簡単に取り付けができます。なお、底面にはマグネットが装着されているので、磁石がつく材質ならばホルダーなしでも本体を自立させることが可能です。
このほかうれしいのは、使い終わったらまるごと水洗いOKの防水仕様(防水性能IPX7)。油汚れも洗剤で洗えるので、いつでもキレイな状態をキープできます。
食材を入れた袋の空気をしっかり抜き、水に完全に沈める必要アリ
では、さっそく「BONIQ Pro」を使って低温調理を実践していきましょう! 今回は、公式サイトで紹介されている数々のレシピを参考にしながら、特に手軽に作れそうな牛ステーキ、トンテキ、エビチリの3つの料理にトライ。火の通し方は低温調理で、味付けは市販のソースなどを活用し、手軽さを重視して作っていきます。
最初は牛ステーキから。適度に霜降りの入った上質なステーキ肉を用意しました。両面に塩をふり、ローリエと一緒にフリーザーバッグの中に入れ、しっかり空気を抜いて密封します。この空気を抜く工程は、低温調理において非常に大事なポイント。なぜなら、加熱ムラが起こったり、適切な火入れができなかったりすることで、場合によっては食中毒のリスクが生じてしまうから。
ちなみに、簡単に空気を抜くコツは、鍋に水を張った時点で、水中に沈めながら水圧を利用する方法です。BONIQの公式YouTubeチャンネルにやり方を説明する動画がアップされているので、参考にするといいでしょう。
鍋に水を張り、「BONIQ Pro」を半分沈めて、ホルダーで鍋に固定。「BONIQ Pro」の電源を入れ、今回の設定「57℃・2時間35分」にセッティング。これは、今回使用する肉の厚さ(2cm)に適した設定温度と時間です。肉の種類と厚さによって設定は異なり、BONIQの公式レシピサイトに、牛肉・豚肉・鶏肉それぞれの肉の厚みに応じた「加熱時間基準表」がアップされていて、それを元に設定しました。
設定温度に達したら、先ほどのフリーザーバッグを投入。あとは「BONIQ Pro」が温度を一定にキープしてくれるので、時間が来るまで待つだけです。
なお、湯せんにもコツがあります。それは、食材を完全に湯に浸けること。完全に浸けないと火の通りが不十分で危険なケースもあるので、空気はしっかり抜いて、食材全体をお湯に沈めるよう徹底しましょう。
肉の内部がしっとり仕上がり、うまみが増幅された!
肉を湯に沈めたら、2時間35分ほったらかしでOK。焼いて調理するのとは異なり、肉の色の変化はとてもゆっくりです。やがて設定した時間になると、軽やかなメロディでお知らせ。これで低温調理は終了です。
その後、ステーキ肉をフリーザーバッグから取り出してもうひと工夫。すでに熱は通っていますが、フライパンで一瞬だけ焼くことで、おいしそうな焼き色が付くんです。
食べてみたところ、さすがは低温調理。肉本来のうまみが逃げることなく、増幅されています。食感はレアでもミディアムレアでもなく、中がしっとりのステーキになりました! なお、最後のフライパンでバターソテーする工程はやらなくてもOK。ただ、ソテーしたほうが味のまとまりがいいと感じたので、個人的にはオススメです。
トンテキはパサついた印象もなく、心地いい弾力に
続いては低温調理でトンテキにチャレンジ。牛ステーキとは調理順が逆となり、まずはフライパンで表面に焼き色を付けます。あとで低温調理でじっくり中に火を通すため、加熱しすぎないのがポイント。焼き色がついたらすぐに取り出し、フリーザーバッグに入れて空気をしっかり抜きます。
今回の設定は「63℃・1時間20分」(厚さ2cmの場合)。先ほどと同様に本体を水を張った鍋にセットして、設定温度になったら、フリーザーバッグを入れます。
時間になったら、お肉を取り出して盛り付ければ完成です。パサついた印象はなく、しっとりしていてほどよい弾力もあり、こちらも美味! この心地よい弾力は、焼くだけでは出せない食感ですね。
“揚げないエビチリ”は未体験のムッチリ食感
ラストは魚介系。ヘルシーな“揚げないエビチリ”を作ります。海老は殻をむいて背わたを除去し、片栗粉、塩、水で洗います。今回は、これをフリーザーバッグに入れて、「80℃・30分」で調理。肉料理よりも高温で短めの時間設定です。
時間になったら海老を取り出し、フライパンで市販のエビチリの素と合わせます。温めたソースと絡めるだけで、短時間で簡単に仕上がります。
よく海老の食感を表現するとき“プリプリ”といいますが、こちらは“プリッ”というよりは“ムッチリ”といった感じ。想像以上の食べごたえがありました。この食感は、なかなかの新体験。ぜひエビマヨやガーリックシュリンプなど、ほかの味付けでも楽しみたいところです。
このように、本機はほったらかしで調理できることと、低温調理による独特の食感やうまみが楽しめるのが大きなメリット。このほか、湯せんの容量は最大20Lまで対応しているため、設定温度が一緒であれば、複数・多種類の同時調理ができる点にも注目です。複数のフリーザーバッグを使い、その日の夕ご飯の主菜と副菜、翌朝の主菜と副菜、お弁当用のおかずを同時に作る……なんてことも可能。ストック用のサラダチキンを作るなど、冷凍・冷蔵保存の作り置きにも適していると感じました。
公式レシピサイトには、肉、魚、野菜、たまご、米、デザート、ドリンクなど300以上のレシピがあり、なかにはマニアックな低温調理の比較実験コンテンツや、レシピ動画もあります。料理のレパートリーが劇的に増えて、楽しみが広がること間違いなし。在宅ワークの合間に使って、いつもよりちょっと豪華なご飯を作るのもオススメです。ぜひ試してみてください!
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