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2020/7/2 17:30

【検証】高級家具に巨大吹き抜け…最新ロボット掃除機は「歴史的デザイン物件」のトラップを回避できるか?

4月に発売されたパナソニックの最新ロボット掃除機「RULO(ルーロ) MC-RSF1000」を見て、筆者はふと思いました。雑誌やテレビに出てくるようなオシャレな家でも、ルーロはちゃんと働いてくれるのだろうか? 変化に富んだデザイン住宅って、ロボット掃除機にとって、トラップだらけで使い物にならないんじゃないの? ……と。

↑ロボット掃除機「RULO(ルーロ) MC-RSF1000」。実売価格は16万9400円

 

気鋭のインテリアスタイリストが所有する、歴史的なデザイン住宅でルーロを走らせよう!

検証してみたい……しかし、バリバリの庶民派である筆者は、オシャレな家に住んでいません。オシャレな家で検証するなら誰かの力を借りるしかない……というわけで、とある方を頼ることにしました。

↑インテリアスタイリストの窪川勝哉さん

 

今回頼った方は、テレビ番組や雑誌記事などのスタイリングも数多く手掛ける気鋭のインテリアスタイリスト・窪川勝哉さん。窪川さんは、東京・中野区に昭和32年築の2階建て住宅を所有しています。実はこの物件、モダニズム建築の巨匠であるル・コルビュジエのもとで建築を学び、日本のモダニズム建築をリードした前川國男氏が設計したもの。

 

窪川さんはもともと文化的価値の高い建築物や家具が大好きで、日常的に情報収集をしていたところ、1年半ほど前に同物件が売りに出ていることを発見。「即断即決で購入しました」といいます。以降、時間をかけてリノベーションに取り組んでいて、このほど完成したとのこと。おお、いいですね。探していたのはそういう物件です! しかも、「ルーロを走らせていいですか?」とお願いしたところ、すでにルーロを使っているとのこと。おお、それは願ってもない! せっかくなので、窪川さんならではのご感想もいただいちゃいましょう!

 

物件に足を踏み入れたら……なんということでしょう!

取材当日、期待を胸にその物件に足を踏み入れると、そこには雑誌でしか見たことがないような、オシャレ空間が広がっていました。ダイニングスペースはメラピーの無垢材を染色した重厚なフローリング。5cmほどの小上がりを経たリビングスペースは、フローリングからの連続感を損なわないコバルトブルーのカーペット。突き当りには大きな掃き出し窓があり、透かして見える中庭の緑が目に心地いいです。ちなみに、リビングのカーペットは化繊ではなく100%ウール素材のものを使っているのも窪川さんのこだわりだとか。

 

一方、2階はもともと2室ありましたが、1室の床を抜いて吹き抜けにしています。2階にはベッドを置いてリラックススペースとしています。ちなみに、ここのカーペットも100%ウール素材とのこと。

↑2階の吹き抜けから1階を見下ろすとこんな感じ。吊り下げられたハーマンミラーのネルソンバブルランプが空間にアクセントを加えています

 

家具は1950年代までにデザインされたもので統一

置いてある家具も、一見してただものではないモノばかりで、「建物が1950年代のものなので、家具も1950年代ごろまでにデザインされたものを中心に集めました」とのこと。たとえば、吹き抜けの照明はハーマンミラーのネルソンバブルランプ、ダイニングチェアはコルビュジエも愛したト―ネットの流れを汲む、チェコのTON社のアームチェア、リビングにはイームズのエリプティカルテーブル(通称サーフボードテーブル)と、窪川さんらしい、こだわり抜いたラインナップとなっています。たしかに、こんな大切な家具ばかりだと、ヘタなロボット掃除機は使えませんね。「モノにぶつかりにくいと聞いて、ルーロを使ってみようと思った」という窪川さんのチョイスも納得です。

↑すでにルーロが元気に動き回っていました。右手に見える楕円形のテーブルがイームズのエリプティカルテーブル

 

↑ダイニングチェアはTONのNo.30。それが6脚

 

リビングではスムーズに動きつつ、家具のギリギリまで近づいて掃除する

では、さっそくリビングからルーロを走らせていきましょう! 今回使うルーロは、従来の超音波センサーと赤外線センサーはそのままに、レーザーセンサーを新搭載することで、部屋の間取りをすばやく正確に把握できるようになったのが特徴。モノや家具があってもしっかり避けて、効率よく掃除するとか。

 

確かに、スタート直後から迷わず滑らかに動いていきますね。イームズのテーブルの下も危なげなく通過。障害物があると、ゆっくり近づいてギリギリで止まり、回転ブラシだけを根元に滑り込ませてゴミを取っているのがわかります。

↑大事な家具のギリギリまで近づいてブラシを動かします

 

やがて、リビングとダイニングの境界にある段差に到達。筆者にはよくわかりませんが、設計士さんはこういう起伏にも意味を込めていて、それを楽しめる方が所有するんだろうな……とぼんやり想像します。今回はなかなか微妙な段差ですが、落ちることはないか? ……いやいや、余裕で回避してくれました。

↑デザイン住宅にありがちな段差も余裕で回避

 

↑その後、窪川さん手作りのスロープを使ってダイニングスペースへ移動

 

「イスの足の森」でもスイスイと流れるように走行

ダイニングのフローリングゾーンでは、先述のト―ネットの「イスの足の森」がありますが、ルーロは器用にその間を縫って、丁寧に掃除していきます。ちなみに従来のルーロはカメラを使った方式だと、家具の下や暗い場所では自分の位置を見失うことがあったそう。

 

その点今回のルーロは、レーザーセンサーが半径約8m先まで360°全方位に検知して、間取りや障害物を瞬時に把握しながら本体に先行して地図を作るようになったため、自分の位置を見失わずに済むといいます。テーブルやイスの下でもスイスイと流れるように動く様子を見れば、たしかにそうなのだろうな、と思います。

↑イスの足周りもスイスイと走行

 

そして、1階のダイニングスペースではもうひとつ、オシャレ住宅にありがちな「ラグのトラップ」が。インテリアにこだわる方は敷物にもこだわりがちですが、分厚い織りのラグや、縁が少し浮いてしまう材質のラグは、多くのロボット掃除機が苦手としています。縁を乗り越えることができず、グイグイと押しまくったあげく、停止してしまうことも多いですよね。

 

ルーロはどうなんだ……? ラグに差し掛かる場面で注視していると、本体ををひょいと持ち上げて難なくラグを乗り越えてくれました。これが2.5cmまでの段差ならば、自動で本体を持ち上げて乗り越える「アクティブリフト」機能。分厚いラグも乗り越えてきちんと掃除してくれるので、敷物にこだわりがある人にはうれしいはず。

↑ラグに近づくルーロ

 

↑ラグを乗り越えた直後。ちょっと本体が浮いているのがわかりますでしょうか

 

大きな吹き抜けがぽっかりと口を開ける2階へ

では、続いて2階へレッツラゴー!(※) リノベーションして大きく間取りが変わった2階は、ロボット掃除機にとってトラップだらけの過酷な世界。そこをいかに切り抜けていくのかが見ものです!

※レッツラゴー……レッツゴー (Let’s go)の意味。1971年から1974年にかけて週刊少年サンデーで連載されていた漫画「レッツラゴン」が語源

↑2階には吹き抜けが大きな口を開けています

 

大きな吹き抜けに至る床の際には、何の仕切りも立ち上がりがなく、そのままロボット掃除機が吸い込まれて落ちてしまいそう。ちょっ、そんなスピードで突っ込んだら落ちるぅ ……と、高所恐怖症の筆者は目をそらしてしまいましたが、ルーロはギリギリでストップ。吹き抜けに沿って難なく掃除を続けていました。大丈夫とわかったら安心して見ていられます。あ、また! …でもやっぱり大丈夫。

↑大きな吹き抜けをしっかり回避

 

ちなみに、2階にはもともと階段を上がってすぐの場所にドアがありましたが、開放感を味わうために取り外しています。この2cmほどの段差も進んでしまうと二度と戻れないトラップとなりますが、ここは先述の「アクティブリフト」でらくらくクリア。

↑階段付近の段差も「アクティブリフト」でクリア

 

2階にある広いダブルベッドの下もしっかりお掃除してくれました。このあたりはスティック掃除機でも届きづらいためホコリが溜まりがちですが、おまかせできるのはありがたい限り。先述の通り、暗がりでも自分の位置を見失わないメリットも生きているのでしょう。

↑巨大なベッドの下もしっかり掃除してくれました!

 

ルーロの動きには「日本的な良さ」がある

さすがは最先端の技術を搭載した次世代ロボット掃除機 ルーロ。オシャレ物件にありがちな数々のトラップを余裕でクリアしてくれました。それでは最後に改めて、ユーザーの窪川さんの実感を聞いてみましょう!

「ルーロは、日本的な良さがありますよね。動きが大ざっぱじゃなく、繊細というか。障害物はギリギリで避けつつ、イスの足や壁の隅などは、ブラシだけを当てるようにしてスーっと掃除してくれます。お気に入りの家具にカツンカツンとボディが当たる音がしないので、ストレスもたまらない。本体を持ち上げる機能も、見ていて楽しいですよね」(窪川さん)

↑家具の周りでは繊細な動きを見せるルーロ

 

↑otomo機能を使う窪川さん。otomo機能は、ユーザーの足を認識して追従し、掃除したいポイントに誘導できる機能です

 

そういえば窪川さん、ずいぶんとスマホアプリも使いこなしていたようですが……。

 

「ルーロの操作はほぼスマホアプリ。操作はカンタンで、本体の状態もひとめで確認できるのがいいです。アプリのゴミマップを見ると、どの場所にどれだけのゴミがあったか、色でわかるのもいいですね。家具の配置や廊下への扉の開閉などに応じて、そのつどマップの形も微妙に変わってくるので、しっかり検知して動いてくれているんだな、と実感しています」(窪川さん)

↑専用アプリ「RULOナビ」を操作する窪川さん

 

↑「RULOナビ」の「ゴミ累計マップ」画面。マップの色が濃い部分がゴミが多かった場所です

 

主張しすぎないデザイン、静かな運転音で生活に溶け込む存在に

続いて、インテリアスタイリストの視点から見て、ルーロのデザインってどうでしょう?

 

「三角形は意味のあるデザイン。円形とは違って動きがわかりやすいですし、部屋の隅に行くと、ボディを左右に揺らし、三角形の角を部屋の隅に一生懸命当ててゴミを取っています。その姿もけなげでかわいいですよね。白を基調としたカラーリングもいい。家電の色は、壁や柱など、建物のなかに存在している色と合ってると違和感なく溶け込むもの。その点、ルーロはインテリアの中でも割合が大きい白を使うことで、主張しすぎず、生活に寄り添う存在となっています」(窪川さん)

↑独自の三角形状で、部屋の隅にもしっかりブラシを当てて掃除します

 

もうひとつ、ルーロを高く評価したポイントは意外にも「運転音」だといいます。

 

「『空間を支配する3要素』をご存じですか? それは、空間を漂うもの……つまり光と香り、音の3つです。たとえば、夜は照明の力でかっこいい空間も、昼間に見たらたいしたことはない、とか。香りでいえば、『このニオイ、イヤだな……』と思えば、その場のすべてが台無しですよね。音も同様、いくら心地よいインテリアに囲まれていても、不快な音ひとつでとたんに居心地が悪くなります。その点、ルーロの運転音はだいぶ静か。ルーロを走らせながら、仕事をしたり音楽を聴いたりしても苦になりません。仕事に集中できるし、オフタイムにはリラックスできるので助かっています」(窪川さん)

なるほど、いずれも窪川さんならではのご意見です。インテリアに違和感なく溶け込むデザイン、音も静かで生活を邪魔しない、ということで、ルーロは「人と共存できるロボット掃除機」と言えるかもしれません。

 

もちろん、吹き抜けや段差やラグにも対応し、大切な家具を避けるなど、数々のトラップをクリアできる機能性も本稿の前半で証明済。難易度の高いオシャレ物件で大丈夫だったのですから、一般家庭のトラップも難なく回避できることでしょう。特におうち時間が大切になった今、ルーロは最良のパートナーになりそうですね。

撮影/我妻慶一

 

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