ダイソンはこのほど、日本のユーザーニーズに応えたコードレスクリーナー「Dyson Digital Slim」(ダイソン デジタル スリム)を発売しました。新製品は簡単に言うと、小型軽量になり、バッテリーが脱着できるようになったものです。あれ? そういえばダイソンは昨年、日本向けに小型軽量モデル「Dyson V8 Slim」(以下V8 Slim)を発売したよね。これといったい何が違うのだろう? と、疑問に思いながら取材に行ってきました。そこには、V8 Slimとは似て非なる、全く新しい製品が待っていたのです。
フラッグシップモデル「V11」シリーズを全面的に改良
昨年発売したV8 Slimは、2018年に発売された「V8」シリーズをベースに日本人のニーズに合わせて改良したモデル。一方、最新モデルのDyson Digital Slimは、2019年4月に発売されたフラグシップモデル「Dyson V11」(以下V11)シリーズを日本市場に合わせて全面的に改良したものです。つまりはV8 Slimに比べて機能・性能が格段に向上しているということ。
まず形状からしてV8 Slimとは大きく異なります。V8 Slimはパイプとサイクロン部分が直角に交わっているのに対し、Dyson Digital Slimはパイプとサイクロン部分が直線的に接続され、空気が一直線に入るインライン形状を採用。モーターのパワーを効率的に伝えて吸引力を落とさない構造になっています。また、搭載するモーターは新開発の「Dyson Hyperdymium(ダイソン ハイパーディミアム)モーター」で毎分最大12万回転。V8 Slimの10万7000回転から大幅に性能がアップしています。クリーナーのもっとも重要な要素である吸引力が、V8 Slimに比べて飛躍的にアップしているということですね。
運転の残り時間を分・秒単位で表示するディスプレイを搭載
Dyson Digital Slimは、機能面でも飛躍があります。V11同様、本体背面に液晶ディスプレイを搭載しました。運転モードによる残りの時間を分・秒単位で表示するので、掃除中にバッテリーが切れてしまったという失敗を防げます。液晶ディスプレイでは吸引モードのほか、メンテナンス時期の告知、エラーおよびエラーからの復帰の方法などを表示します。
バッテリーをワンタッチ着脱式にしたのは「長く使ってもらうため」
Dyson Digital Slimには、V8 SlimにもV11にも無い、新しい機構が追加されました。それは、バッテリーがワンタッチ着脱式になったこと。従来のスティッククリーナーもバッテリーの取り外しが可能でしたが、ドライバーを使ってネジを外す必要がありました。それが、Dyson Digital Slimはボタン一つで簡単に取り外すことができるようになったのです。この点について、同社のフロアーケアカテゴリーのバイスプレジデントであるジョン・チャーチル氏は以下のように説明します。
「Dyson Digital Slimは、エコモードで最長約40分の運転が可能で、家中を掃除するのに40分で十分だと考えています。今回、バッテリーを簡単に取り外せるようにしたのは、経年劣化によりバッテリー性能が落ちることで製品寿命自体が短くなることを防ぐため。長く製品を使ってもらいたいので、バッテリーを簡単に交換できるようにしたのです。ただ、1台のバッテリーでは足りないという家庭もあるでしょうから、ワンタッチ脱着式にしたことでこの不満は解消できるでしょう」
交換バッテリーは付属のACアダプターで充電可能。専用バッテリーが7月末発売予定で価格は未定です。Dyson Digital Slimの運転時間はエコモードで最長約40分で、中モードで約25分、強モードでは約5分となります。じゅうたんを敷いた部屋が多い、ペットを飼っている、小さな子どもがいるなど、強モードを多用する家庭にとってはバッテリーが簡単に交換できるのはありがたいことです。
V11に比べて25%軽量化し、パーツの小型化も実現
そして、これだけ機能てんこ盛りなのにもかかわらず、Dyson Digital Slimの重量は1.9kgとダイソン史上最軽量! V11に比べて25%も軽量化に成功しています。液晶パネルを搭載したにもかかわらず、V8 Slimの2.15kgより軽くなっているから驚き。また、サイズに関してもV11より20%小さくなっています。
メインパイプがV11より15%短くなり、先に説明したDyson Hyperdymiumモーターも15%小型化、フィルターも19%小型化しています。サイクロンは吸気口の部分に曲線的なフォルムを採用することで、サイクロン内部での空気の流れをよりスムーズにでき、その結果、狭いスペースに11個のサイクロンコーンを配置することができたため、V11より5%小型化しています。
そして、もっとも大きく変わったのが「Slim Fluffyクリーナーヘッド」。ブラシバーの素材には、航空機に使われているアルミニウムを採用することで、耐久性を高めながら軽量化。直径も29%細くすることで小型化も実現できました。この結果、クリーナーヘッドはV11比で40%小型化、40%軽量化できたのです。
もう一つ、Dyson Digital Slimで初めてのことがあります。それは、クリアビンが水洗いできるようになったこと。クリアビン自体はプラスチック素材なのでこれまでも水洗いができないことはなかったのですが、ダイソンでは推奨していません。というのも、クリアビンを水洗い後、乾燥が不完全な状態で本体にセットした場合、接触面から水分が電子部品に流れ込んで故障の原因となるからです。
その点、Dyson Digital Slimでは電子部品をクリアビンから完全分離することでこの問題を解消しています。これにより、クリアビンの汚れが気になる場合には、ガシガシ水洗いができるようになったのです。
ヘッドとパイプをつなぐ関節の柔らかさが違う!
さて、それでは実際に使ってみましょう。手に持った最初の感想は「軽い!」の一言。これまで説明してきた通り、物理的に重量が減っているのは当然なのですが、操作しているときの軽さの質がV8 Slimとは全く違うのです。数値の差ではない何か。その1つはヘッドの首の関節の滑らかさです。
V8 Slimも関節が滑らかではあったのですが、新モデルDyson Digital Slimはさらにその一歩上を行っています。首を右左に回した時に、V8 Slimは曲げる途中のほんの一瞬、わずかにストレスがかかる箇所があるのですが、Dyson Digital Slimではそれが全く感じられず、極めてスムーズ。これは、パイプとクリアビンが直線上にあることに関係がありそうです。V8 Slimを左右に回すと、クリアビンが左右に振られる感覚が手元にわずかに伝わるのですが、Dyson Digital Slimは左右に振られる感触はないのです。椅子やテーブルの脚周りをくるくる掃除するのがスゴくラクになりそう。
グリップとトリガーが握りやすくなって、手首への負担が減った
グリップの工夫も見逃せません。少しわかりづらいのですが、グリップがV11およびV8 Slimに比べて若干細くなっています。手が小さい日本人にとっては、握りやすく疲れにくくなるのは間違いありません。スイッチとなるトリガーも形状を変更しています。ダイソンのスティッククリーナーはトリガーを引いている間だけ稼働する仕様なので、掃除しているときはずっとトリガーを引きっぱなし。ゆえにとても重要なパーツなのですが、Dyson Digital Slimのトリガーは湾曲形状にすることで指をかけやすく、滑りにくく、少ない力で押し続けることが可能に。これらの工夫により、手首に掛かる負担も大幅に軽減されました。
仕事柄、ダイソンのモデルを毎年見て触って使ってきて、そのたびに「これは良いものだ」と思ってきました。ところが今回のDyson Digital Slimは、「歴代のモデルを大きくまたいで越えた」と思えるほど、完成度の高さを感じました。この軽さ、コンパクトさ、取り回しやすさ、握りやすさは大きな魅力。まさに、日本人のためのスティッククリーナーといえます。
なお、フラッグシップのV11も引き続き販売。V11はDyson Digital Slimに比べると大きくて重いものの、12万5000回転のモーター、運転時間最長60分のバッテリー、たくさんのゴミが溜め込める大きなクリアビンという特徴があり、とにかくパワーが欲しい人、広い自宅を1回で掃除したい人、こまめにゴミ捨てするのが面倒な人にはV11が最適です。今後はこのV11とDyson Digital Slimが、同社ラインナップの強力な柱となっていくのは間違いありません。
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