ゲリラ豪雨や台風など、水害を中心とした自然災害が日本中で多発しています。それに加え、日本は常に地震の危険にさらされており、まさに災害大国といっても過言ではありません。こうした自然災害時に困るのがライフラインの寸断。電気、水、ガス、通信の断絶は命にも関わるものです。そんななか、エコキュート(※)がライフラインの1つである水の確保に役立つと、その存在が見直されています。
※エコキュート……空気の熱で湯を沸かすことができる電気給湯機で、二酸化炭素を冷媒として使用するもの。省エネ性に優れ、火を使わないので空気を汚さないのが特徴
電気給湯機・エコキュートの需要が拡大中
エコキュートの国内市場は、2011年3月の東日本大震災以降、電気を多く使うことの罪悪感や生活エネルギーを電力だけに依存することへの不安感、さらには電力会社への不信感などからマイナス傾向にありましたが、2016年かはらは増加に転じ、2020年度は年間50万台強、累計700万台に達すると見込まれています。これは、2010年以前のオール電化初期ユーザーの買い替えや、卒FITを迎える太陽光発電ユーザーの拡大(※)が主な理由です。
※FIT(固定価格買取制度)は、住宅用太陽光発電で作られた電気の高値買取を10年間保証する制度。保証期間が終了後は売電価格が急落するため、売電せずに自家消費に充てる家庭が増えます。余剰電力買取制度(FITの前身)は 2009年に始まっており、2019年から順次、卒FITを迎えるユーザーが出てきます
しかしその一方で、頻発する大規模自然災害への備えとして、エコキュートを求める動きも高まっています。パナソニックが実施した災害に備えて導入した住宅設備アンケートでは、1位にエコキュートが入りました。エコキュートはタンクの中に常に300~460Lの水(またはお湯)が入っており、停電時・断水時でもタンクの中の水を生活用水として利用できるからです。
エコキュートの場合、シャワーやお風呂などでタンクの中のお湯を使用しても、使用した分だけ水が追加されるので、タンクの中は常に満タン状態となり、空になることはありません。そのため、断水になってもその時点で満タン状態を維持しており、タンクの中の水・お湯がまるごと使えることになります。例えば370Lモデルのエコキュートの場合、中の水は20Lポリタンク約18個分となり、4人家族が2~3日過ごせる分の生活用水を確保できることになります。
断水時はタンク底部の取り出し口から直接、水を取り出すことになりますが、断水はせず停電のみの場合は、水道管からの水圧によりタンク内に残っているお湯をキッチンの蛇口やお風呂、シャワーで使うことができます(ただし、停電により温度調節機能がストップしているため、熱湯が出る危険性があるので注意が必要)。
災害の警報・注意報を受けて自動沸き上げを行う機能を新搭載
こうした声を受け、パナソニックは10月10日に初の災害対応機能「エマージェンシー沸き上げ」を搭載したエコキュートを発売することとしました。価格はスタンダードクラスのNSシリーズがオープン価格で、ミドルクラス(Jシリーズ、Nシリーズ、Cシリーズ)~プレミアムクラス(JPシリーズ)が65万2000~101万4000円(税抜・工事費別)。「エマージェンシー沸き上げ」は簡単に言うと、気象庁が発表した各種警報・注意報と連動し、自動的にエコキュートのタンク内の水全てを沸き上げるものです。
新製品は、エコキュートをコントロールする壁付けのリモコン(台所リモコン)に無線LANを搭載し、標準仕様でスマートフォンとの連携が可能になっています。専用のスマホアプリは気象情報会社のウェザーニューズと提携することで、自宅のある地域に気象警報が発令されたら自動で通知、同時にエコキュートが自動で全量沸き上げを開始します。
設定できる警報・注意報は、大雨・暴風・暴風雪・波浪などの特別警報、大雨・洪水・暴風などの警報、雷注意報です。エコキュートは普段、電気料金が安くなる深夜に自動沸き上げするよう設定されていますが、警報・注意報を受けて自動沸き上げすることにより、実際に大雨や雷などの影響で断水・停電しても、エコキュートの中の温かいお湯がいつでも使えるようになるのです。
なお、地震の場合は警報が発令されて間を置かずに発生し、断水・停電する場合も地震発生から短い時間で起こるため、エコキュートを稼働している時間がないことから、地震警報はエマージェンシー沸き上げ機能の対象外となっています。
スマホアプリとの連携により、遠隔操作や天気予報と連携が可能に
リモコンへの無線LANの搭載により、スマホからさまざまな操作もできるようになりました。外出先から帰宅途上に湯はり操作をすれば帰宅後にすぐにお風呂に入れたり、自宅でも2階の自室から湯はり操作や追い焚き操作ができたり、毎日自動設定されている沸き上げ操作を旅行先からストップしたり。もちろん、事前に湯船の栓を閉めておく必要はありますが、ガス給湯のように火を使わないので、留守中でも安心して湯はりができるのは便利です。
このほか、卒FITユーザー向けに、太陽光発電を利用した「おひさまソーラーチャージ」も新たに搭載しました。従来は、前日に翌日の天気予報を確認し、ユーザー自身があらかじめ太陽光発電を利用した沸き上げ設定するか、AIを使って自動で太陽光を利用する場合は、別途同社のHEMS(※)機器が必要でした。
※HEMS……Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム)の略で、エネルギーを節約するための管理システム
新機能では、HEMS機器がなくてもスマホアプリが天気予報と連携することで、あらかじめ沸き上げ設定した昼間の時間帯に実際に晴れていれば、自動で太陽光発電を利用してお湯を沸き上げる仕組み。なお、新機能の「エマージェンシー沸き上げ」「無線LAN搭載リモコン」「おひさまソーラーチャージ」は、10月発売の新機種46モデル全てに搭載されます。
パナソニックのエコキュートは、タンクが4本脚で支えられ、震度7相当の地震にも堪えられる設計となっています。また、タンク部分の電子基盤は地上約80cmより上に搭載されているため、洪水等で水没した場合、水位が80cm以下であれば被害が軽微で済みます(ただし、漏電の危険性があるので、水没した場合は例え80cm以下でもユーザー自身で再起動せずに、必ずサポートに連絡して欲しいとのこと)。
ふだんは大災害に遭うことを想像するのは難しいですが、明日は我が身と考え、家族を守るためにも出来得る限りの備えはしておくべき。貯水タンクとして使えるだけでなく、断水・停電の前に自動でお湯を沸かしてくれる最新のエコキュートは、利便性や省エネ性などのメリットはもちろん、災害への備えという観点でも検討すべきアイテムではないでしょうか。
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