昨年来のステイホームで家族が家にいる時間が増えたことも影響し、コードレススティック掃除機への注目度が上昇。それに呼応してか、昨年後半から高機能コードレススティックの雄、ダイソンが精力的な製品発表を続けています。2020年10月には最軽量モデルの「Dyson Micro 1.5kg」、2021年4月には「滑るような掃除機がけ」を実現する全方向駆動モデル、「Dyson Omni-glide」をリリース。翌5月には同社の最上位モデルが刷新されました。
今回は最上位モデルの「Dyson V12 Detect Slim」のなかで、フローリング用とカーペット用の2つのヘッドが付いた「Dyson V12 Detect Slim Total Clean」をお借りし、じっくり試してみました。本機の最大のトピックは、床上のゴミを見つけやすくするレーザー照射ユニットの採用。ヘッド部にLEDライトを搭載し、暗い場所でのゴミ検知をアシストする掃除機は以前からありますが、今回はそれらとどう違うのか? 大いに気になって使ってみたところ、これが予想を超える満足度! 以下でその使用感を詳しく紹介していきたいと思います。
【今回テストした機種はコチラ】
先端にレーザー照射ユニットを備えたヘッドを新搭載
ダイソン
Dyson V12 Detect Slim Total Clean
実売価格9万7900円(税込)
先端にレーザー照射ユニットを備えたヘッドを新搭載。下方1.5度の角度にレーザー光を照射し、肉眼では見えにくい微小なホコリを可視化します。吸気口のピエゾセンサーで吸引したゴミのサイズと量を計測し、液晶画面にリアルタイム表示。ゴミの量に応じて吸引力を自動調整し、ゴミの多い場所ではパワフルに掃除しつつムダなバッテリー消費を抑えます。吸引力は従来モデルのDyson Digital Slimの1.5倍、最長運転時間も約60分になり家中の掃除に対応。
SPEC●充電時間:約3.5時間●最長運転時間(クリーナーヘッド/非モーター駆動ツール):エコモード約50分/約60分、中モード約30分/約30分、強モード約5分/約5分●クリアビン容量:0.35l●サイズ/質量:W250×H1095×D234mm/2.2kg(Laser Slim Fluffyクリーナーヘッド装着時)
実際に使って6項目を詳しくチェック
ではさっそく製品チェックしていきましょう。チェック項目は今回注目のレーザー照射による「ゴミの視認性」に加え、掃除機の基本である「ゴミ除去性能」「操作性」さらに「ゴミ捨て/お手入れのしやすさ」「設置性」「拡張性」の6項目としました。
【その1 ゴミの視認性をチェック】
いままで見えなかったゴミがはっきり見え、「次へ次へ」と掃除したくなる!
実は本機を実際に試すまで、筆者はレーザーの効果については正直半信半疑でした。LEDライトで床を照らすタイプの掃除機は何度も試したことがあり、家具と壁の隙間やベッドの下など薄暗い場所の掃除に便利ですが、役立つ場所は限定的。それはレーザーになってもそれほど変わらないんじゃないか?……と。
ところが使ってみてその考えは180度変わりました。いや、このレーザー、スゴい! 光が当たると、明るい場所でも微小なホコリがまさに“浮き上がって”見えます。これはレーザー光が床面に対し下向き1.5度の角度で照射されているのと、光が当たるホコリと床面とのコントラストが緑色光で高められるのが理由とのこと。さらに感動するのは、微粒子ゴミまみれの床面にヘッドを一度走らせ、ヘッドを手元に戻すと、(当たり前ですが)ゴミがすっかりなくなっていたことです。
「ええ〜っ、レーザー当てたら床がゴミだらけ!」
「おお、掃除機かけたら床がきれいになった!!」
「じゃあその先はどうなってる?」
「うわ、ここもゴミがいっぱい!」
「うほほ、またきれいになった!」
という具合に、どんどん次の場所、次の部屋を掃除したくなるわけです。特に筆者の家では猫を2匹飼っていて、その抜け毛がすごいのですが、本機を手に取ると、「その毛を掃除したい!」というモチベーションが爆上がりしました。
また本機は、床面に落ちているゴミだけでなく、吸引した微粒子ゴミの総量も“見える化”します。粒子サイズを10μm、60μm、180μm、500μmの4つに分類し、それぞれの検知数を液晶ディスプレイに表示します。これにより、自宅でのダニの死骸の多さや、花粉の季節に花粉の量が増えていることなどがよりリアルに実感でき、掃除のモチベーションが高められるわけです。
10μmは花粉など、60μmは微細なホコリや剥がれ落ちたヒトの皮膚のかけら、180μmはダニの死骸や細かい砂、500μmは砂糖粒程度の大きさだそうです。以下の写真はわが家の掃除直後のゴミの量ですが、10μmと60μmの粒子サイズのゴミの多さに愕然としました。ともあれ「ゴミの視認性」に関しては文句なし。それ以上に「掃除のやる気」を高めてくれる機能として非常に有効だと感じました。
【その2 ゴミ除去性能をチェック】
フローリングでは大小のゴミを1ストロークで除去!
今回は、フローリングとカーペット上での集じん性能を検証。それぞれの上に重曹、脱脂綿、フェイクの毛髪、コルクパウダー、猫砂を撒き、オートモードでの掃除機がけ1ストロークでの取れ具合をチェックしました。
フローリングではすべてのゴミを1ストロークで除去。ナイロンフェルトとカーボンファイバーブラシを融合したローラー形状のLaser Slim Fluffyクリーナーヘッドで、重曹の微粒子から大きめな猫砂まで完璧に吸引しました。特に重曹は、掃除機のなかにはヘッド両端の吸引力が弱く、吸い残してしまう機種もあるのですが、本機はヘッドの端から端まで残さず取り除いていました。
カーペットでは繊維の奥に潜ってしまう微小ゴミも
一方、カーペット上での吸引力テストでは、重曹とコルクパウダーがわずかにカーペットの毛の奥に絡まって残りました。
ちなみに今回テストしたモデルには、Laser Slim Fluffyクリーナーヘッドのほかにカーペット用にダイレクトドライブクリーナーヘッドも付属しています。そこでこのカーペット専用ヘッドのゴミ除去力もテストしてみました。
すると、重曹の取り残しはLaser Slim Fluffyクリーナーヘッドより減りましたが、コルクパウダーの取り残しはあまり変わらず。脱脂綿がカーペットに絡まって残っている部分も多いです。また、猫砂の取り残しが多いのも意外でした。
今回使ったカーペットとの相性もありそうで、ダイレクトドライブクリーナーヘッドがあらゆるカーペットに万能というわけではないようです。ただ、今回はあくまで1ストロークでのテスト。実際にはカーペット上を何度も掃除機がけしますし、今回もテスト後に軽く掃除機をかけただけで、きれいにゴミが除去できました。
【その3 操作性をチェック】
スリムなヘッドで家具の下もスイスイ掃除できる
本体と延長パイプ、Laser Slim Fluffyクリーナーヘッドを組み立てた標準質量は2.2kg。ヘッドの回転力もあって操作は非常に軽快で、首振りもスムーズです。ヘッドがスリムなので、スチール棚やチェストの下など高さのない場所に潜り込んで掃除できるのも便利。筆者はふだん質量1.4kgのスティック掃除機を使っていて、本機で長時間掃除すると手首にやや負担を感じましたが、3LDK程度の家の掃除にはほぼ支障ないと思います。
運転時間はクリーナーヘッドを使って最長約50分、オートモードなら約30分が目安。床掃除をメインに、付属ツールを使って棚やベッド、ソファなどをササッと掃除するには十分なスタミナでしょう。バッテリーは着脱式で、予備バッテリーを買い足せばより長時間の掃除も可能です。
ボタン式になって手首への負担は減った
ちなみに、これまでダイソンのコードレススティックはトリガースイッチが定番でしたが、本機はボタン式を採用。トリガー式は指を離せばすぐ運転オフできるため、バッテリー残量の節約になる一方、掃除の間ずっとトリガーを引き続けると腕が疲れます。
近年はバッテリー性能も上がっているので、いちいち運転を止めるよりも、掃除中の負担が少ないボタン式にするのは合理的。ただ、トリガー式ボタンと違い、掃除をオン/オフするのに両手が必要なので、モノをどけたりしながら掃除するのにやや不都合を感じました。
【その4 ゴミ捨て/お手入れのしやすさをチェック】
ゴミ捨ては手間なし。ヘッドもお手入れがほぼ不要だがクリアビンの掃除はやや面倒
ゴミ捨ての手順は、本体から延長パイプを抜き、クリアビン(ダストカップ)のレバーを押すだけ。底のフタがパカッと開いて、ゴミに触れずにゴミ捨てできます。クリアビンの奥に残った毛ゴミもそのままクリアビンを押し出すことで捨てられます。
お手入れ面では、クリアビンの掃除がやや面倒に感じました。残念なのは水洗いができないこと(クリアビンは水に濡らして固く絞った布巾で拭きます)。また、掃除後に外したクリアビンを本体に装着するとき、クリアビンの溝と本体ガイドの溝をうまく合わせるのにやや手間取りました。
本体後方のフィルターとLaser Slim Fluffyクリーナーヘッドのローラー(回転ブラシ)部分は、取り外して水洗い可能です。ローラーヘッドは髪の毛やペットの毛などが絡みにくく、お手入れがとてもラクですが、さらに水洗いにも対応しているのでメンテナンスの負担が減りました。
ちなみに本機にはもうひとつ、ダイレクトドライブクリーナーヘッドが付属していますが、こちらは水洗い不可。また、硬いブラシでカーペットなどのゴミをかき取る方式のため、どうしてもブラシに毛が絡んでしまいます。ただ、一般のブラシヘッドと比べてブラシ毛の量が少ないので、毛絡み除去はそこまで大変ではありませんでした。
【その5 設置性をチェック】
自立型の充電ドッグが付いて設置が圧倒的にラクになった!
ダイソンのコードレススティックは、壁掛け式の収納用ブラケットに設置するのが基本。しかし、賃貸住宅では壁に穴を開けられないことも多く、万人に使い勝手が良いというわけではありませんでした。これに対し、Dyson V12 Detect Slimは全ラインナップに自立型の専用充電ドックを付属し、スマートな収納が可能。台座も直径約28cmで設置スペースを取りません。この充電ドック採用でダイソンのコードレススティックはより多くの家庭で使いやすくなりました。
【その6 拡張性をチェック】
毛ゴミ除去力が高く、お手入れしやすい毛絡み防止スクリューツールが秀逸
Dyson V12 Detect Slim Total Cleanには、前述のLaser Slim Fluffyクリーナーヘッド、ダイレクトドライブクリーナーヘッド、専用充電ドックを含め、10個の付属ツールを同梱。なかでも注目なのが毛絡み防止スクリューツールです。
毛絡み防止スクリューツールは円錐型のブラシバーを採用。巻き取った髪の毛やペットの毛は、径が小さい円錐の先端に素早く移動することで毛絡みせずに本体内に吸引することができます。わが家でも猫が寝ているベッドやクッションをこれで掃除したのですが、クッションに付いていた大量の毛を一瞬で除去。ブラシに毛絡みはまったくありませんでした。
ちなみにこのツール、毛絡みせず毛ゴミを強力にかき取れるということで、カーペットの掃除にも使ってみました。すると、これが超優秀。ただし、ブラシ幅は小さいので、カーペット全体を掃除するのは大変そうです。この技術をダイレクトドライブクリーナーヘッドに応用したら、カーペットの掃除がずいぶんラクになるかもしれませんね。
ほかにもコンビネーションノズルや隙間ノズル、フトンツールが付いて、床面以外の様々な掃除に対応。延長ホースを使うと片手に掃除機本体、片手にノズルを持つことで細かい掃除もスムーズに行えます。さらにクルマの中の掃除にも便利です。
【検証のまとめ】
掃除のモチベーションがMAXに! 特にペットのいる家庭にオススメ
Dyson V12 Detect Slimの魅力は何よりレーザー照射ユニットで掃除のモベーションが一気に上がること。これまでなら床の気になるホコリをちょちょっと掃除して終わりだったのが、リビング全体、さらに廊下、寝室、仕事部屋など、家中を“ついつい”掃除してしまうようになりました。ふだん、筆者が仕事用に借りた家電製品にそれほど関心を示さない妻も、本機だけは「これいい!」と絶賛しています。
なかでもペットを飼っている家や、髪の長い女性が多い家などは、本機は間違いなく大活躍します。特にフローリング中心の家とは相性抜群。吸引力もバッテリーのスタミナも十分ですし、ヘッドの操作性も優秀なので掃除がサクサク進むと思います。
設置性・拡張性は文句なし。メンテ性も合格点以上で、幅広い家庭が満足するはず
ゴミ捨ては延長パイプを外してレバーを押す2行程で終了。お手入れに関して、Laser Slim Fluffyクリーナーヘッドは面倒なヘッドブラシの毛絡み除去がほぼ不要なのが超便利(これもペットがいる家などに有利なポイントです)。クリアビンが水洗い不可なのが気になる人も多いでしょうが、筆者の場合は特に気にせず使うと思います。
専用充電ドックが付属されるようになり、設置性も大幅にアップしました。付属ツールも豊富で家中の掃除に対応。なかでも毛絡み防止スクリューツールは布団やベッド、ペット用品周り、カーペットのちょっとした掃除など幅広い用途に使えそうです。
ちなみに先ほどから筆者は「ペットがいる家に最適」と何度も言っていますが、もちろんペットのいない家にもオススメ。ダイソン直販価格は9万7900円(税込)とかなりのお値段ですが、家電量販店などで試して気に入った人は「買って後悔なし」、それどころか「大満足」できる製品だと思います!