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空気清浄機
2022/9/13 20:40

空気清浄機の「ハイブリッド式」に勝算はあるか? 加湿器1位のダイニチ「良い製品ができた」と15年ぶりに再参入

新潟県新潟市に本社を置くダイニチ工業は2022年の新製品発表会を開催。「ハイブリッド式空気清浄機 CL-HB922」を10月1日に発売することを発表しました。実売予想価格は税込で約10万円を切る程度。

↑ハイブリッド式空気清浄機 CL-HB922

 

↑発表会でのフォトセッション。左から加湿器フィルター担当の野﨑隆宏氏、コーヒー豆焙煎機担当の渡邉 玲氏、代表取締役社長の吉井 唯氏、空気清浄機担当の宗村勇武氏

 

空気清浄機に再参入した理由は「良い製品ができたから」

ダイニチ工業といえば、石油ファンヒーターで販売数量シェア15年連続No.1、加湿器で販売金額シェア9年連続No.1と、2つのカテゴリーのリーディングカンパニー。空気清浄機は2007年に撤退して以来、15年ぶりに再参入したとのこと。空気清浄機市場はコロナ禍のニーズが一巡した感があり、なぜいま発売するのか? という疑問が湧いてきます。この「なぜいま?」の疑問に対し、同社社長の吉井 唯(ゆい)氏は、あくまで品質に納得のいく製品が開発できたからだと説明しました。

↑2022年6月に同社の代表取締役社長に就任した吉井 唯氏。発表会の冒頭で空気清浄機への再参入の理由を説明しました

 

「再参入の理由は、新型コロナウイルス感染拡大が長期化しているからではありません。空気清浄機は安定したニーズがあり、技術的にも販売の面でも加湿器と近く、次に展開していきたい市場と考えていました。最初に再参入の検討・開発を始めたのは10年ほど前。最後発ですので、市場にある商品では意味がありません。検討を始めたものの、納得できる商品には至らず断念を繰り返しました。そして3回目の挑戦で、自信をもって出せる良い製品にたどり着きました。ですから、『なぜ今なのか?』の答えは、『良い製品ができたから』ということになります」(吉井社長)

続いて吉井社長は、「加湿器のリーディングメーカーなのに、なぜ加湿機能のない空気清浄機を出したか?」という、もっともな疑問についても言及。

 

「空気清浄と加湿、2つの機能をひとつの筐体に詰め込むのはいいことばかりではありません。運転音が大きくなったり、構造が複雑でメンテナンスが大変になったり、加湿機能が中途半端になったり、本体が大きくなったりと、色々と無理が生じてしまいます。実際、加湿空気清浄機から、当社の加湿器に買い替えをされるお客様もいらっしゃいました。今回、単機能の空気清浄機にし、さらにフィルター式と電気集じん式のハイブリッド式にしたことで、静かで、メンテナンスがカンタン、パワフルでコンパクトな空気清浄機を実現しました。単機能にしたことは、空気清浄機としての最適な形を追求した結果なのです」

↑加湿複合機には音が気になる、加湿力が不足、サイズの制約から頻繁な給水が必要などのデメリットも

 

↑空気清浄機の性能を追求すると、加湿機能を搭載しないという判断になったことを説明

 

2つの方式の欠点を補う「ハイブリッド式」を採用

続いて、ハイブリッド式空気清浄機 CL-HB922の具体的なメリットについて見ていきましょう。本製品は、帯電させた金属板に汚れを吸着する「電気集じん式」と、不織布で汚れを絡めとる「フィルター式」の2つの方式を組み合わせた「ハイブリッド式」を採用しているのが特徴。なお、2つの方式を組み合わせる「ハイブリッド式」は、同社の加湿器でも採用されています。

↑フィルター式(静電NEOH フィルター)と電気集じん式(プラズマユニット)を組み合わせたハイブリッド式を採用

 

フィルター式は目を細かくすると運転音が大きくなるという欠点があり、電気集じん式はメンテナンスが大変という欠点があります。本製品は、両者を組み合わせることで、集じん力を維持しながらコンパクト化や静音性の向上に成功したとのこと。

 

ポイントは大風量でコンパクト、カンタンお手入れ、静かな運転音

その主なポイントは①大風量でコンパクト②カンタンお手入れ③静かな運転音の3つ。

①大風量でコンパクトについては、ハイブリッド式の採用により、それぞれの方式の集じん部品を小さくしても空気清浄能力を維持でき、風量に対し本体がコンパクトになったとのこと。底面はレコードジャケットと同じサイズ(31cm 四方) で、設置スペースが少なくて済むといいます。8.6m3/分の風量で4方向からパワフルに吸引し、コンパクトなボディの割に、適用床面積は38畳と広いのが特徴。浮遊ウイルスより小さな0.03 マイクロメートルの浮遊微粒子も捕集できるといいます。

↑4方向からパワフルに吸引。コンパクトながら38畳の広さに対応します

 

↑スモークのなかでCL-HB922を運転するデモ。あっという間にスモークが吸引されていきました(右)

 

内部でプラズマ放電を行い、発生させた低濃度オゾンでフィルター等に付着したウイルスを抑制する「NEOHリフレッシュ」機能も搭載しています。

↑「NEOHリフレッシュ」機能で捕らえたウイルスを抑制します

 

②カンタンお手入れについては、プレフィルターは4か月に1回の頻度で交換すればよく、「静電NEOH フィルター」「活性炭脱臭フィルター」はそれぞれ2年に1回交換すればOK。プラズマユニットは、2年に1回のつけ置き&すすぐだけで性能を保てるとのこと。

↑プレフィルターは4か月に1回交換すればOK。プレフィルターは片手でワンタッチで取り外せます

 

↑静電NEOH フィルター(上)とプラズマユニット(下)は、本体の側面からスライドし、カンタンに取り外すことが可能

 

③静かな運転音については、あえて目が細かく、音が出やすいHEPAフィルターを使わないのがポイント。また、風の流れを妨げないタワー型を採用して風がぶつかる音を抑え、ファンの振動音を抑える特許出願中のターボファンを採用。さらに大風量で素早く汚れを捕集することで、いち早く静かなモードに移行できるとのこと。最小運転音15dB(※)の静音運転を実現しています。

※参考:20dBの目安は木の葉がふれ合う音

 

なお、2022年10月5日~2023年1月10日、「ハイブリッド式空気清浄機 CL-HB922」を対象に、「現金10,000円キャッシュバックキャンペーン」を行うとのこと。こちらもぜひ注目してみては

↑振動を抑えるターボファンを採用し、静音運転に貢献

 

↑仕事や勉強、テレビの視聴や睡眠などを邪魔しない静かな運転音が魅力

 

このほか、発表会では、2023年1月末発売予定の「コーヒー豆焙煎機 MR-F60A」(実売予想価格3万3000円・税込)と、同社製ハイブリッド式加湿器LX タイプ用の気化フィルター「カンタン取替えフィルター」(実売予想価格2個セット税込3300円・9月10日発売)も発表されました。「コーヒー豆焙煎機 MR-F60A」については、追って別の記事で詳しくレポートします。

↑「コーヒー豆焙煎機MR-F60A」は、高い焙煎精度とコンパクトなサイズ、約3万円の低価格が特徴

 

↑加湿器LXシリーズ用の気化フィルター「カンタン取替えフィルター」。3か月に1回、汚れたら捨てるだけなので、洗浄の手間が省けます。今後は本製品に対するユーザーの反応を見て、使い捨てフィルターを他のシリーズにも投入するか判断するとのこと

 

「ダイニチらしさ」を突き詰めて、本質機能を追求した

↑CL-HB922の開発を担当した商品開発部商品開発二課の宗村勇武さん

 

発表会の終了後、ハイブリッド式空気清浄機 CL-HB922について、開発担当の宗村勇武(むねむら・いさむ)氏に話を聞きました。他社モデルと比べたとき、個人的におすすめしたいポイントは?

 

「一番は、メンテナンス性ですね。音が静かなのもメリットですが、特に面倒なのがメンテナンス。実際、動き始めたらそれで満足してしまい、放置して性能を低下させてしまう方も多いんです。その点、CL-HB922は、プレフィルターなどカンタンに捨てられる部分があるので、メンテナンスのハードルが下がり、メンテしよう、という意識を高めていただくことができます。しっかり性能を維持して、長く使っていただけたらうれしいですね」

 

開発で苦労された点を聞いたところ、他社と差別化するためのコンセプトを決定し、製品に反映させるのにもっとも苦労したといいます。

 

「コンセプトを決めるのには約1年間を費やしました。市場ではイオンを放出したり、UVや光触媒を利用したりするデバイスもありますが、ダイニチらしい製品を出すなら何をしようか? と。地味でもいい、本当にお客様に求められることは? と突き詰めた結果、まじめに空気清浄機の本質的な効果を出していこう、という方向性になりました。具体的には、基本の大風量と簡単なメンテナンス、静音性、コンパクトさといった点です。

 

これらひとつひとつを製品に落とし込むのには苦労しました。最終形を見ると、『ああ、こうなるよね』と思われるかもしれませんが、最初の試作品はまったく違う形でした。部品の送風抵抗や強度を測って組み合わせを最適化し、使い捨てフィルターを引き出せる形は何だ、開口面積を確保するならタワー型じゃないとダメだろう……と、試行錯誤するうちに、いまの形になっていったんです。この『コンセプトを製品に落とし込む』というのが一番苦労しましたね。そのうえで、品質や安全性の検査も100種類弱の数を行いました」(宗村氏)

↑製品の解説をする宗村氏

 

空気清浄機の分野では、「ハイブリッド式」というワードはあまりなじみがありませんが、この点については?

 

「空気清浄機で2つの方式を組み合わせているメーカーはありますが、『ハイブリッド式』と謳っているメーカーは、我々の認識では見たことがありません。一般的な名称ではなく、当社が使い始めたものですね。我々が考える『ハイブリッド』の概念は、当社の加湿器と同様、どちらかを使っているときと使っていないときがある、つまり切り替えができる、という点がポイントです。CL-HB922の場合は、プラズマユニットに6000V近い高電圧がかかりますので、中の部品にかかる負担が大きく、通常だと寿命が短くなってしまう。しかし、CL-HB922は自動で運転を筐体内で切り替えることができるので、空気が汚れているときはハイブリッド式で運転し、そこまで汚れていなければフィルター式のみで運転できる。静音性を高めながら、製品の性能を長く維持できる仕様になっています。その意味でも、『本当にいいモノができた』と、確信を持って言える製品ができました」(宗村氏)

 

ダイニチ工業といえば、石油ファンヒーターしかり、加湿器しかり、ユーザーの悩みを丁寧に拾い上げて対応し、誠実にものづくりをするメーカーという印象。今回もその例にもれず、納得の品質の製品が開発できるまで待ち、派手な機能に頼らず、ユーザーが本当に求める本質機能を追求した点、実にダイニチらしいと感じました。とにかくまじめなメーカーの社長、開発担当が口を揃えて「本当にいいモノができた」と語るその性能に、期待せずにはいられませんね。