昨年、水拭きもできる待望の2in1モデル「ルンバ コンボ j7+」を発売し、話題を集めたアイロボット。今回は、従来モデルに比べてメンテナンスがラクになり、大幅な掃除性能のアップを実現した2in1モデル「ルンバ コンボ j9+」を発表しました。最新モデルの進化のポイントとは何なのか。IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志さんがレポートします。併せてロボット掃除機と同時に発表された同社の新規カテゴリー製品についても見ていきましょう。
まずは、今回発表されたラインナップ4機種をチェック。
●自動ゴミ収集機能を持つ「クリーンベース」に自動給水機能を搭載する吸引+水拭き掃除対応の最上位モデル
・ルンバ コンボ j9+……19万9800円
●クリーンベースを搭載する吸引+水拭き掃除対応モデル
・ルンバ コンボ j9+SD……16万9800円
●クリーンベースを搭載する吸引専用モデル
・ルンバ j9+……13万9800円
●クリーンベース非搭載の吸引専用モデル
・ルンバ j9……10万9800円
各モデルは最上位モデルの「ルンバ コンボ j9+」から機能をそぎ落としたもの。従来モデルの「ルンバ コンボ j7+」と「ルンバ j7/j7+」からの進化ポイントを含めて、ルンバコンボ j9+を中心に紹介していきましょう。
モーターを刷新して約2倍の清掃性能を実現
新ルンバj9シリーズ4モデルはモーターを刷新することで吸引力をアップし、j7シリーズ比で約2倍の清掃性能を実現しました。「iRobot Home」アプリで3つの吸引力から手動で選ぶことも可能です。
アプリ上で吸引力の設定を選べることについて、アイロボットジャパン 製品&戦略開発担当ディレクターの山内 洋氏は以下のように語ります。
「常に最大2倍の吸引力を発揮することもできますし、逆に回転速度を落としてミニマムなパフォーマンスでバッテリーを長くして音を抑えるといったこともできます。ミニマムでもルンバj7シリーズより吸引力が高いです。より優れたモーターを採用したことで、静かに使うことも、よりパワフルに使うこともできるようになりました」(山内氏)
さらにルンバ コンボ j9+/j9+ SDは本体前後に動かすことで水拭きモップパッドをフロアにこすりつける「スマートスクラブ」機能を新たに搭載することで、こちらも清掃性能を約2倍にアップしたとのことです。
「同じ場所を何度も前後に動きながら掃除するので、汚れが非常によく取れます。いろいろなやり方を検討しましたが、これがベストのやり方だということが分かりました。これによって従来モデルに比べて拭き掃除も2倍に進化しました」(山内氏)
発表会に登壇した米アイロボット創業者でCEOのコリン・アングル氏は「ルンバコンボ j9+はAIと高度なエンジニアリングを搭載することで、吸引力と水拭きにおいてほかに類を見ないほどの能力を実現しました」と自信を見せました。
クリーンベースに自動給水機能を搭載し、ダストケースに触れずに済む
ルンバ コンボ j9+の最大の注目ポイントは、クリーンベースに自動給水機能を搭載したことでメンテナンス性が格段に向上した点にあります。
ルンバ コンボ j7+は本体内のダストケースに備える水タンクからフロアに水を滴下し、モップパッドで拭き取るスタイルを採用しています。この給水スタイルに加えて、カーペットやラグを検知すると自動的にモップパッドを本体上部に収納する「パッドリフティングシステム」はルンバ コンボ j9+/j9+ SDも踏襲しています。
ルンバ コンボ j9+の大きな違いは、クリーンベースに搭載する給水タンクから本体の給水タンクに自動的に給水する機能を備えた点にあります。クリーンベース内の給水タンクは約3Lあり、通常使用で約30日間は給水せずに済むとのこと。クリーンベースの紙パックには約60日間分のゴミを収納できるので、よりメンテナンスがラクになりました。
ルンバ コンボ j7+や新モデルのルンバ コンボ j9+ SDは本体内の水タンクに給水する必要があるため、水がなくなるとダストケースを本体から取り外す必要がありました。せっかくクリーンベースを搭載してダストケースを取り外さずにゴミ捨てができるようになったのに、給水のためにダストケースを取り外さなければならないのが残念な点でした。ルンバ コンボ j9+はその部分がかなりラクになったのが大きなメリット。メンテナンスは紙パックを捨てて交換することと、給水タンクに水を入れること、モップパッドを洗って乾かすことくらいになりました。
ちなみにルンバ コンボ j9シリーズは米国を含めて世界同時発表でグローバルに展開するシリーズで、ルンバ コンボ j9+ SDは日本専用モデルとのことです。クリーンベースが大型化することと、給水タンクに30日間も水を入れっぱなしにしておきたくないというきれい好きの日本人に合わせて展開したそうです。
部屋ごとの汚れを検知して掃除モードを変える「ダートディテクティブ」機能を搭載
ルンバシリーズは従来からセンサーでゴミやほこりを検知すると、その周囲を徹底掃除する「ダートディテクト」機能を備えていました。ルンバ j9シリーズでは新たに、部屋やエリアごとの汚れを学習して清掃モードや掃除の優先順位を変える「ダートディテクティブ」機能を搭載しました。
ダートディテクティブ機能についてコリン・アングルCEOは次のように説明しました。
「ルンバは最初に部屋の形状をマッピングし、リビングやトイレなど、どういったタイプの部屋なのかをカテゴリー分けします。そして、その部屋がどれぐらい汚れているのか、非常に早く汚れるのかそれほどでもないのか、前回いつその部屋を掃除したのかなどを記憶します。これによって掃除をする順番が決まり、その順番で掃除をします」(コリン・アングルCEO)
順番としては最も汚れやすい部屋から汚れが増えない部屋へと続き、最後にトイレを掃除するとのこと。「トイレを掃除した後にキッチンを掃除するのは望ましい順番ではないからです」とコリン・アングルCEOは説明しました。
「部屋を掃除する方法も部屋のタイプによって変えていきます。トイレの場合は何回も同じ場所をしっかり水拭きしたいですが、美しいフローリングのリビングルームはそんなに水を使わなくてもいい。ダートディテクティブはこれらをすべて考慮して自動的に掃除するというものなのです」(コリン・アングルCEO)
新規カテゴリー製品として空気清浄機「Klaara p7 Pro」を発表
さらに、アイロボットジャパンはロボット掃除機に続く新規カテゴリー製品として空気清浄機「Klaara(クラーラ) p7 Pro」(直販価格16万9800円)を発表しました。適用床面積は40畳で、8畳あたりの清浄時間は約7分です。
Klaara p7 Proのコンセプトについて、アイロボットジャパン 執行役員マーケティング本部長の山田毅氏は次のように語りました。
「コロナが落ち着いた今、なぜ空気清浄機に参入するのかと疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、日本では国民の約3割が花粉症に悩まれています。そうしたアレルギーに悩まれている方に一番効果的なのは空気清浄機。空気清浄機はフィルター性能と排気量、静音性のトレードオフがある中で、空気清浄機の本質である『きれいな空気だけを排気する』ところに着目して開発しました」(山田氏)
そこで実現したのが独自の密閉構造である「クローズド・キャプチャ技術」です。本体の筐体はフタを除いて一体成型になっており、本体下部の大型ファンが吸い込んだ空気を大型のフィルターボックスを通して清浄化し、本体上部から排出するスタイルになっています。
「一体成型のため、フィルターを通らない空気が漏れることはありません。多くのお客様にはそれでも問題ないかもしれませんが、我々は本当にアレルゲンに困っている方向けにKlaaraを開発しました」(山田氏)
本体価格は16万9800円で、約1年で交換が必要なフィルターは2万9800円とかなり高価ですが、コリン・アングルCEOは「ロボット掃除機に続く2つ目の柱として成長軌道に乗り、空気清浄機カテゴリーにおいても技術的なリーダーになれると考えています」と自信を見せました。
また、iRobot Homeアプリでルンバと連携すると、ルンバでの清掃中に出た空気中のホコリをKlaaraがパワーをブーストして取り除きます。アイロボットによると、ロボット掃除機と自動連携する空気清浄機は市場で唯一とのこと。花粉症に悩む方、より清潔な空間を求める方は、ルンバとセットで使う検討をしてもいいですね。