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2015/12/22 16:30

【今日から音楽ツウのふり。】懐かしさこそ普遍性! トッププロデューサーの20年前の仕事ぶりに感服

コレを読めば最新ミュージックシーンが手にとるように“わかった気に”なれる!
怖いもの知らず系音楽ライター・石井恵梨子の「今日から音楽ツウのふり。」

 

第四十六回のテーマ
懐かしさこそ普遍性! トップ・プロデューサーの20年前の仕事ぶりに感服

 

96年公開の映画「スワロウテイル」内の架空バンドとして生まれたYEN TOWN BANDが、このたび約20年ぶりの新曲となるシングル「アイノネ」を発表する。

 

このニュースを同世代の知人に話すと、反応は面白いくらい同じであった。「おおー!」。「懐かしい、聴きたいねぇ~」。そんな前のめりな興奮のあとに「映画、どんな話だったか忘れちゃったけど……」と小声の告白が続くのだ。岩井俊二監督、ごめんなさい!

 

当時85万枚以上を売り上げたYEN TOWN BANDのヒットは、映画と音楽が分かちがたく結びついた例(たとえば「ゴッドファーザー」のオーケストラを聴けば瞬時にマーロン・ブランドの顔が出てくる的な)とは少し異なる。バンドを率いたCHARAは映画の主役も努めているが、あれはグリコ(彼女の役名)の歌だ、と考える人は少ない。劇中の世界を離れて一人歩きを始め、結果的に歌だけを人々の記憶に残したのがYEN TOWN BANDだったのだろう。その功績はプロデューサーの小林武史にある。

 

20年以上も不動のトップ・プロデューサーである小林は、もはや名前を知らぬ者のない売れっ子であるわりに、手掛けるサウンドはどういう考えで何を狙っているのかという根幹がイマイチ見えづらい人でもある。本人の作家性が歌い手よりも前に出ることが少ないのだ。小室哲哉なら「時代のちょっと先を突くのが上手い人」、中田ヤスタカなら「本質は偏執的なオタク」というミュージシャンとしての色がプロデュース作品にも現れるが、その手の主張が小林はあまり強くないのかもしれない。

 

だが、YEN TOWN BANDと同じく蘇ったマイ・リトル・ラバー20年ぶりのファーストを聴き、うーん、と唸らざるを得なかった。やっぱ、小林武史、天才!

 

当時からどこか懐かしかったあのメロディが、いまも変わらぬ鮮やかさで蘇り、やっぱりとてつもなく懐かしい郷愁を与える。大衆歌として広がっていく外向きの力ではなく、個人のノスタルジーにそっと寄り添っていく静かな力。それを最初から作れてしまう手腕こそが小林武史の本質なのだろう。

 

“わかった気に”なれる2枚

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YEN TOWN BAND
「アイノネ」
初回限定盤(CD2枚組):1620円(税込)
通常盤(CD):1080円(税込)
12月2日発売

2015年に復活を遂げたバンドの最新シングル。時間の流れをまったく感じさせない続編の始まり方が見事だ。CHARAの可憐さ、そして豪華なコーラスにも注目。

 

 

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My Little Lover
「re: evergreen」
3200円(CD2枚組・税別)
11月25日発売

大ヒットを記録したデビュー作が、歌声はそのままに、新たな音の息吹を加えられて蘇る。20年後のアンサーとなる最新アルバムとセットになった2部作。

 

 

音楽ライター 石井恵梨子

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