学校現場にICTの波が押し寄せてきています。文部科学省は一人1台の情報端末を整備することを目標に掲げています。学習指導要領では、その時代ごとに情報教育を取り入れてきました。そこで今回は、過去約30年間の小学校・中学校での情報教育の流れを振り返ってみましょう。
約30年前―平成とともにはじまった情報教育の波
いまから30年ほど前、1980年代後半から、世界的に情報教育のうねりは高まってきました。アメリカでコンピュータ産業が新しい産業として成長し、ビジネスでコンピュータを活用する能力が求められていたからです。
そうした時代の流れの中で、臨時教育審議会(1985年~1987年)において、情報及び情報手段を主体的に選択し活用していくための個人の基礎的資質(「情報活用能力」)を、読み、書き、そろばんに並ぶ基礎・基本と位置付けられました。1986年、臨時教育審議会第二次答申で情報教育の目標として「情報活用能力」の育成が掲げられて以来、現在まで脈々と続いています。
その後1989年の学習指導要領改訂で小・中・高校で、教育活動の中でコンピュータが積極的に活用されることが決まり、小学校では、「コンピュータ等に慣れ親しませること」が基本方針とされ、中学校では、技術・家庭科に選択領域「情報基礎」が設置されました。
これが日本の小学校・中学校における情報教育のはじまりといえます。
約20年前―コンピュータ活用を打ち出す
1998年前後、インターネットが一般に広く普及し、パソコンが家庭で使われるようになりました。
1997年の文部科学省の調査研究協力者会議報告では、情報教育の目標が、情報活用の実践力、情報の科学的な理解、情報社会に参画する態度の3つの観点で整理されました。
そうした背景の中で、1998年に小学校と中学校の学習指導要領が改訂されました。
小学校では、各教科や「総合的な学習の時間」等で積極的に情報機器を活用することが決まりました。中学校では、「技術・家庭」科における技術分野の内容「B 情報とコンピュータ」をすべての生徒が学び、各教科や「総合的な学習の時間」等で積極的に情報機器を活用することになりました。
総合的な学習の時間でパソコンを使った調べ学習をしたり、体系的に情報を学んだりするようになったのは約20年前のこの改定からです。
8年前―情報モラルに焦点があてられる
2008年は、iPhoneが発売された年。すでに子どもが携帯電話を使用し、携帯電話やパソコンなどからインターネットに接続して、さまざまなサービスを活用していました。
2008年に改定された小学校と中学校の学習指導要領では、時代背景を反映し、情報モラルの習得の重要性が強く打ち出されています。小学校では、文字入力等の基本操作や情報モラルを身につけさせることが明記され、中学校では、「プログラムによる計測・制御」をすべての生徒が学ぶことになりました。
ネットがあることがあたりまえの時代に、上手なインターネットや情報機器の使い方を身につける内容となっています。
2017年―最新の情報教育
次の学習指導要領では、各教科等の学習において情報活用能力をはぐくむとともに、ICTを効果的に活用することが掲げられています。
中学校では、技術・家庭科において、プログラミングや情報セキュリティーを充実させること、総合的な学習の時間において、プログラミングを体験しながら論理的思考力を身につけることが定められています。小学校ではプログラミングの体験的な学習がはじまります。
そして、情報を整理・分析し、まとめ・表現する力や情報モラルを身につけ、情報社会に主体的に参画し創造していこうとする態度を育成することが定められています。
このように、時代の変化に合わせて情報教育の内容は変化しており、子どもたちは情報社会に対応する力を学んでいるのです。
次回は、高等学校における情報教育の流れを見ていきます。
【著者プロフィール】
藤田由美子(ふじたゆみこ)
株式会社ユーミックス代表取締役社長。1993年の創業以来、コンピューターリテラシー教育を数多く手がける。
「生きる力」「社会力」の育成をめざして、子ども向けICT教育のカリキュラム作りにも力をいれており、大手携帯電話会社のケータイ安全教室の企画立ち上げ、ネット安全利用推進プログラムの開発など、実績多数。