覗けば深い女のトンネルとは? 第27回「女性専用車両は疑う必要のない空間」
女性専用車両について、少し雑感をお話ししたいと思います。男性の中には「女性専用車両があるなら男性専用車両を作るべきだ」というような声もあると聞きます。それがもし男性にとって必要なら、ぜひ作るべきではないでしょうか。
女性にとって女性専用車両は「これほど居心地のいい場所はあるのか」というくらい極楽です。
初めて乗ったとき、もう夢の国に来たかと思いました。いっぱい人が乗ってるのに、なんかいいにおいがするんです。大股広げたり脚を投げ出して座っている迷惑な人は一人もいないし、心臓が飛び出るかと思うような大声でくしゃみをする人もいない。座席はゆったり目で隣の人との間には隙間すらあります。
なにより嬉しいのは、痴漢という極悪人がいないことです。女に生まれたら、残念ながら1度や2度や100度は、痴漢やセクハラの経験があるでしょう。心底不快な経験です。和久井はおかげでちょっと男嫌いです。
だけど女性専用車両には、その極悪人が可能性からしていないんです。かばんやらなにやらがお尻に当たっても、人を疑わなくていいんです。心の底から安心感があります。例えるなら、エルフがフワフワ飛んでるお花畑です。もう、鬱陶しいラッシュにもかかわらず経験したことのない居心地の良さ。思わず脳みそにパアっと薔薇の花が咲いてしまいました。
もちろん、世の男性みんなが極悪人というわけではないでしょう。でも、知らない男性が極悪人なのか善良な一般市民なのかは、女には知る術がありません。そしてその「知らない男性たち」から何度も痴漢行為を働かれたら、女の立場からすると「知らない男性は極悪人だ」と思って行動したほうが安全、ということになります。自分は善良だと考えている男性にとっては、女から敵対心を抱かれることはかなり心外かもしれませんが、知らない男性に対して過度と思えるくらいの用心しなければ女は平和に生きられないんです。しかも、女が性的被害に遭ったとき、今は昔ほど女性が責められることはなくなったように思いますが、それでも少なからず「警戒心が足りない」「女にもその気があったんじゃないか」などと責められてしまうものなのです。
たまに、女性専用車両に間違えて乗り込んじゃう男性がいますね。女たちの冷ややかな視線が辛いという話を聞きます。そりゃそうです。
女性専用車両に男性が乗り込んでくるっていうのは、エルフの幸せな国に、武器を持った怪物が乗り込んでくるようなものです。「まあ! 恐ろしい……。お花が踏み荒らされてしまうわ」って感じ。ただ乗り間違えてしまっただけだとしても、極悪人“かもしれない”と警戒しなくてはならない対象ができてしまったのですから。
昔、付き合ってた男性からこんな話を聞きました(何度も)。
「電車に男だけを乗せた場合と、女性を混ぜた場合だと、女性を混ぜた場合のほうが多く車両に乗ることができる」
ちょっと意味がわからなかったです。だって男と女では体格が違うんだから、身体の小さい女を混ぜたほうがたくさん入るに決まってるじゃないですか。
で、聞いてみたら「男同士でくっつくのはイヤだけど、女性となら距離を縮めてもいいから車両にたくさん人が入る」だそうです。キモいです。知らない男になんか近寄ってほしくないです。そういう話を聞いた女がどう思うのか想像できないそいつにもホトホト愛想を尽かしました。
男性全員がそんな感覚じゃないんだろうけど、一般車両に行ったら、そんな訳のわからない理由で寄ってくる男性がいるかもしれないってことですよね。その可能性を疑わなくてはならないのが女からすると大きな負担ですし、何より恐ろしいです。
女性専用車両は、そういう危険のない安全なゆりかごなのです。男性の皆様、どうぞこのゆりかごを守ってくださいね。ちなみに、少女マンガには、痴漢から助けてくれる男子の話がよくあります。それは男性が極悪人から超善人に変身する瞬間なのです。スーパーヒーローです。女の味方をしてくれる男性がもっともっと増えたら、もしかしたら女性専用車両なんていらなくなるのかもしれません。