4月1日の電力自由化の開始にともない、次世代エネルギー業界の調査・研究を行う「タイナビ総研」は、電気料金を比較するサイト「タイナビスイッチ」で診断した、全国の電力会社の切り替えを検討した約3万人を対象に地域別で電力事情を調査。こちらの調査によって、地域ごとの電力自由化に対する関心の高さや、地域ごとの電気の使い方が浮き彫りとなりました。
■調査概要
<地域別電気料金切り替えユーザー動向調査>
有効回答:電力会社の切り替えを検討した人3万2616名
調査方法:インターネットによる回答
調査期間:2016年2月17日~2016年3月16日
プラン切り替えを検討した人が最も多いのは最激戦区の首都圏
調査によると、電気料金プランの切り替えを検討した人が最も多かったエリアは、最激戦区といわれる首都圏のようです。次いで元関西電力管内(以下、関西圏)、元中部電力管内(以下、中部圏)、元東北電力管内(以下、東北圏)、元北海道電力管内(以下、北海道)と続くようです。
首都圏は多くの企業が参入し、既に60を超えるプランが乱立していることもあり、消費者の電力自由化への意識も高いようです。一方、新電力会社の参入が少ない元北陸電力管内(以下、北陸圏)・元沖縄電力管内(以下、沖縄)では、診断数が伸び悩む傾向にあるようです。
東北は一戸建てプランが多く首都圏は集合住宅の比率が多い
居住施設別で比較すると、全国で最も一戸建てでプラン診断を行った人が多かったのは東北圏の82%で、次いで北陸圏の78%、元四国電力管内(以下、四国圏)・元中国電力管内(以下、中国圏)の77%と続くようです。一方、集合住宅比率は人口が密集している首都圏が38%と約4割で首位を獲得。続いて沖縄の35%、元九州電力管内(以下、九州圏)の31%という結果になったようです。
全体では、一戸建てが67%、集合住宅が33%という比率。電気料金が多くなりがちな一戸建ての人が7割近くを占める結果となりました。
〔地域別居住施設比較〕
北海道電力管内 一戸建て:71% 集合住宅:29%
東北電力管内 一戸建て:82% 集合住宅:18%
北陸電力管内 一戸建て:78% 集合住宅:22%
東京電力管内 一戸建て:62% 集合住宅:38%
中部電力管内 一戸建て:75% 集合住宅:25%
関西電力管内 一戸建て:72% 集合住宅:28%
四国電力管内 一戸建て:77% 集合住宅:23%
中国電力管内 一戸建て:77% 集合住宅:23%
九州電力管内 一戸建て:69% 集合住宅:31%
沖縄電力管内 一戸建て:65% 集合住宅:35%
総計(全国) 一戸建て:67% 集合住宅:33%
北陸は電気料金が安いためエコキュートの普及が進む
続いて、エリア別のエコキュート(フロンなどを使用しない電気給湯器)の設置率を比較した結果、エリアの違いで設置率に顕著な差が見られました。調査では、全国で最もエコキュートの設置率が高いのは北陸圏の47%で、北陸圏は全国と比較して電気料金が安いことで有名。安価な電気でお湯を沸かせることが、エコキュートの普及に大きく影響していると考えられるようです。
北陸圏に次いでエコキュートの設置率が高いエリアは中国圏の39%、四国圏・九州圏の36%と続き、全国で最もエコキュート設置率が低いのは首都圏で14%という結果となりました。関東・関西などの大都市部では電気よりも割安な都市ガスインフラが整っていることが、エコキュートの設置率が低い要因といえるようです。
〔地域別エコキュート設置率比較〕
北海道電力管内 設置していない:81% 設置している:18% わからない:1%
東北電力管内 設置していない:67% 設置している:32% わからない:1%
北陸電力管内 設置していない:51% 設置している:47% わからない:2%
東京電力管内 設置していない:84% 設置している:14% わからない:2%
中部電力管内 設置していない:76% 設置している:23% わからない:1%
関西電力管内 設置していない:79% 設置している:19% わからない:2%
四国電力管内 設置していない:62% 設置していない:36% わからない:2%
中国電力管内 設置していない:60% 設置していない:39% わからない:1%
九州電力管内 設置していない:63% 設置していない:36% わからない:1%
沖縄電力管内 設置していない:65% 設置していない:30% わからない:5%
総計(全国) 設置していない:80% 設置している:19% わからない:1%
電気料金で高価格帯の割合が多いのは電化率の高い北陸地方
地域別の電気料金を比べてみると、全国的にほぼ同様の数値が見られました。調査したなかで、電気料金が1万円円以上の人は56%、1万円以下の人は44%。
特に北陸圏は、1万5001円以上2万円以下の消費者が30%と、電気を使う家庭の比率が最も高いエリアと判明。電気料金の安さやエコキュートをはじめとした電化率の高さが電気消費量の高さに影響していると考えられるようです。
首都圏では中小規模利用者向けプランの需要が増える
全体を通してみると、地域によって差があるものの、最もプラン診断数が多かったのは「一戸建て×中規模利用者のファミリー層」。要因としては、元々電気料金がそれほど高くない人の電力会社の切り替えへの関心の薄さや、「電力会社切り替えによるメリットが大口利用者に偏っている」というイメージの強さが影響していると考えらます。
どの電力会社もファミリー層の顧客獲得のために、趣向を凝らしたさまざまな電気料金プランを発表しています。しかし、最激戦区である首都圏では、集合住宅の比率が高いことから、大口顧客の獲得だけではなく、中小規模利用者の獲得を視野にいれた料金プランの需要が大きくなるといえます。さらに、北陸圏などエコキュートをはじめとした電化率が高い地域に対しては、オール電化住宅の家庭がより安くなる料金プランが好まれることが予想されています。
【URL】
タイナビ総研 http://www.tainavi-soken.com/
タイナビスイッチ https://www.tainavi-switch.com/