リモートワークや時差出勤など、これまでの当たり前が変わり、働き方に変化を迎えている2020年。「このままの働き方でいいのかな?」と悩み始めた人も多いのではないでしょうか?
この連載では、「断捨離」の“生みの親”であるやましたひでこさんの生き方のなかで導き出された、断捨離と「人間関係」や「お金」との関係について、解説していただいてきました。今回のテーマは「仕事」。仕事と断捨離の関係を考えてみると「効率化のために〇〇をする」とか「〇〇している人は仕事ができる」と、ついノウハウに頼ってしまいがちですが、やましたさんによるとそれはNG! それ以前に、知っておくべき心得があるのだとか。心地よく、また自分らしく仕事するためのポイントを教えていただきます。
第6回 楽しく快適に仕事するための断捨離的考え方
———仕事の本質を理解する———
———今回のテーマは「仕事」です。“仕事における断捨離”を想像してみると、机の上から物をきれいさっぱりなくすとか、時間内にテキパキと仕事を終わらせるとか、どういったノウハウがあるのだろう? なんて思ってしまうのですが……。仕事をする上で大切な、断捨離の考え方を教えていただけますか?
「たしかに仕事と断捨離というと、どうしても“効率化”がクローズアップされてしまいますよね。もちろん、結果的に断捨離することで効率化はされるのですが、実は最優先ではありません。効率化が最優先になってしまうと、仕事の醍醐味や成長が失われていくような感じをおぼえます。仕事について悩んでいるのなら、まずは、“何のために仕事をするのか?”をよく考えてみないといけないのではないでしょうか」
———そうですね。ただ、働くことによって対価を得ている私たちにとって、仕事における断捨離はしたいけど、お金のことを考えるとすぐには難しい、また人間関係がつらいけど、年収や今の環境を考えると転職できないなど、断捨離はしたいけれど二の足を踏む人も多いかもしれません。
「『仕事=労働』、つまり、仕事は自分のエネルギーと時間を引き換えに、お金をもらうことだと思っていませんか? どんな仕事でも『買っていただきありがとうございます』『こちらこそ、売ってくれてありがとうございます』という、目の前にいるお客さまと“感謝の交換”が気持ちよくできるようになると、仕事が楽しくなってくるのではないでしょうか。
これは家事もそう。よく、“家事労働”という言い方をしますが、本来は“家事仕事”なんですよね。というのも、仕事は“事”に“仕”えると書きます。何に仕えるか意識するだけでも、労働と仕事は違うと思えてきませんか?」
———今まで「仕事=労働』という価値観でとらえていたと、ハッとしました。でも、どう向き合い方を変えたらいいのか、わかりません。
「これまでそんなことを教えてくれる人がいなかったのだから、わからなくて当然です。『これは労働じゃない、仕事なんだ』と、気がつくところからスタートですよね。労働じゃないと気がついたら、自分がやりたいとか楽しいと感じられる“仕事の自分軸”を探します。これはそうすぐに見つかるものではありません。私だって何十年もかけて経験を重ね、社会に揉まれながら『今の私の軸はこれだな』と、日々変化しながら感じているものですから」
———自分軸が見つかったらOKというわけでもなく、断捨離には終わりがないから、日々トライアンドエラーをしながら変化していくのですね。
「その通りです。ここまでできたから天職になった! ということではありません。厳しい道のりですけれど、考えてみると、勉強しながらお金がもらえるってすごいことだと思いませんか? 労働ではなく、今やっていることを“仕事”として捉えられるようになってくると、どんな人や環境であっても自分の経験値として積み上げられて、自分軸を築き上げる糧になっていくわけですから」
捨てられない書類は、「後回し」の証拠品
———少し話はそれますが、最近は自宅で仕事をする機会が増えたという人も多く、やっぱり職場じゃないと集中できないとか、どうやって仕事環境を整えたらいいのかわからないとか、なかなか落ち着いて仕事ができない人も増えています。断捨離で環境を整える方法はないのでしょうか?
「それは簡単。自分のいる仕事空間を美しくするだけです」
———それは、机の上がきれいな状態ということでしょうか?
「物だけでなく、机の上はもちろん戸棚やPCの中まで、目に入る景色すべて、自分の『要・適・快』に合わせて心地いい状態になっている空間です。PCのデスクトップにファイルがばらばらとまとまりなくあったら、美しくないですよね? 仕事で自分の力を100%発揮させたいのに、どうでもいいものが机の上やPCの中にあったら、力を発揮できるわけないですよね」
※『要・適・快』は、「これは私にとって、必要か(要)・ふさわしいか(適)・心地よいか(快)?」と自分に問いながら必要なものを見定めていくこと。『不要・不適・不快』は、今の自分にとって「あれば便利だけどなくても困らない(不要)モノ・今の自分には合わない(不適)モノ・長く使っているけれど違和感を感じる(不快)モノ」を手放していくこと。
———耳が痛いです……。とはいえ、書類なんかもなかなか捨てられなくて。
「よく『書類を捨てるコツを教えてください』って聞かれるんですけど、そんなコツはありません」
———え! ないんですか!?
「できない、捨てられない、と思っている時点でアウトです。『この書類、捨てるに捨てられないんだよなー』って悩んでいる時点で、あなたは仕事としっかり向かい合えていないということだと思います。その書類は、決断を後回しにして保留にしているだけの物なんです。その都度、判断を下していれば書類が溜まるはずがないし、できる・できないじゃなくて、やるか・やらないかだけのこと。『やる』を重ねていく事で、判断する時間もスピードアップし、結果、効率的に仕事ができるようになるわけです」
———たしかに、決めてやるのみ、ですよね。反省します。そういえば、やましたさんは普段から名刺を持ち歩かないとか。いつから「名刺は使わない」と思うようになったのですか?
「私も最初は、お渡ししていましたよ。でも、その場でしか機能しないものだと気がついたんです。『こういう漢字のお名前なんですね』『遠くからいらっしゃったんですね』って、確認するためのものだったんです。けっして、コレクションするものではないですよね。今の時代、お名前さえわかっていれば気軽につながれるので、名刺を作ることも渡すこともやめました」
———なるほど! 私は、知らず知らずのうちにコレクションしてしまっていました。
「あとから使う場面があるのなら、どうぞ取っておいてください。目的もなく、その場に置いているだけであれば、空間を無駄にしているだけですよ」
仕事でもっとも頭を悩ませるのは、実は人間関係ではないでしょうか? とくにいちサラリーマンは上司や部下を選べません。仕事における人間関係は、断捨離できないものでしょうか……? 引き続き、やましたひでこさんに伺いました。