【温泉のうんちく・その④】日本の温泉の種類はどれだけあるの?
ーーまた、各温泉施設を巡ると、様々な泉質があります。日本の温泉ではどれだけの泉質があるのでしょうか?
斉藤 大きく分けて以下の10種類の泉質があり、いずれも温泉法の基準に基づいて分類分けされています。また、泉質それぞれに対する適応症も、やはり温泉法に基づいて定義付けられています。
○単純温泉……[適応症]自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
○塩化物泉……[適応症]きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
○炭酸水素塩泉……[適応症]きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
○硫酸塩泉……[適応症]きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症
○二酸化炭素泉……[適応症]きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
○含鉄泉……[適応症]なし
○硫黄泉……[適応症]アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症
○酸性泉……[適応症]アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、耐糖能異常、表皮化膿症
○放射能泉……[適応症]高尿酸血症、関節リウマチ、強直性脊椎炎
○含よう素泉……[適応症]なし
これらも各施設店頭の「温泉分析書」で確認できます。温泉分析書は温泉のプロフィールのようなもので、その温泉の特徴を表しています。
【温泉のうんちく・その⑤】名前が怖そうな温泉、どれも本当に安全?
ーー上の温泉分類の中で特に気になったのが、浴用の[適応症]なしの含鉄泉や含よう素泉、それと、放射能泉です。なんか怖い感じもしますが……。
斉藤 いずれも怖い温泉ではありません。まず、含鉄泉は、その名の通り鉄分を含むもので、空気に触れ酸化すると不透明な褐色になります。飲用の[適応症]として「鉄欠乏性貧血」があります。一般的な貧血に適応されるものですが、「体が温まりやすい」という解釈で良いと思います。そして、含よう素泉は、非火山性の温泉に多いもので、その名の通り、よう素が含まれています。よう素は、うがい薬にも使われる殺菌効果の高いものですが、温泉自体の匂いや色も、うがい薬に似ています。
また、放射能泉は、天然由来の放射能が含まれるものです。よく「ラドン温泉」といった名前を聞くことがあると思いますが、これが放射能泉です。「放射能」に怖いイメージを持つ人も多いと思いますが、温泉中に含有されるものは、常温で気体となり、湧出されると空気中に飛散されるため心配はありません。
【温泉のうんちく・その⑥】「かけ湯」「上がり湯」の正しいやり方とは?
ーーあと、温泉に入る際の「かけ湯」と上がる際の「上がり湯(体を洗うことを含む)」の、正しいやり方をお聞かせください。
斉藤 まず「かけ湯」ですが、みんなが使う温泉なので、「ある程度体を綺麗にしてから入る」という目的もありますが、本来は、その「温泉の刺激に慣れる」こととヒートショック的なことを起こさないために行うものです。また、「上がり湯」は、温泉の成分が体から流れてしまうので、できればしないほうが良いです。
ーーそうなんですか。お風呂での汚れを取るために、必ず洗って出るようにしていました。
斉藤 体の表面に温泉の成分がついていれば、そのまま体に浸透されていくので、流さないほうが効果的です。ただ、酸性泉や硫黄泉など刺激の強い温泉や皮膚がピリピリする場合は、適宜流してくださいね。