料理をする機会が増えた人は少なくないでしょう。そして、料理の回数が増えたことで積み上がるのが、キッチンの汚れ。油汚れ、焦げ付き、ホコリにカビ、水アカなど、汚れの種類は多岐にわたり、それらの掃除に手が回らずに困っていませんか?
ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんは、「掃除が大変」「掃除が苦手」だと感じる人ほど、多くの洗剤を所有している傾向にあると話します。大学で理学部化学科を専攻した本橋さんは、「数種類のナチュラル洗剤があれば、家中のどんな汚れも落とせる」ということに注目し、ナチュラルクリーニング講師としての活動をスタートしました。
キッチン掃除の負担を減らしてきれいをキープ、お財布にも環境にもやさしいナチュラルクリーニングとは、いったいどのような方法なのでしょうか?
せっかく掃除をしても
すすぎが不十分だと雑菌の繁殖に……
「ギトギトした油汚れが溜まっているから、強力タイプの洗剤を使わなきゃ」「キッチンの汚れだから、キッチン用の中性洗剤を吹きかけて掃除をしよう」。
こういった前提で掃除を始めると、強力な洗剤を使ってゴシゴシと磨き、汚れの付着した泡をすべて取り除くために何度も重ね拭きをしたり、すすぎを繰り返したりする必要が出てきます。
「掃除の負担を増やしている大きな要因は、実は“すすぎ”です。ガンコ汚れを落とそうと、大量に洗剤を吹きかけたり、強力洗剤を使用したりするほど、泡を洗い流す労力が増します。しかも、汚れた泡の除去が不十分だと、それが要因で雑菌の繁殖を引き起こしてしまうことがあるので、すすぎが雑だと掃除したことがムダになってしまう可能性も。そのため、キッチン掃除を始める前に、まず押さえておきたいのは、洗剤を使う必要があるかどうかを見極めること。洗剤を必要以上に使わないようにすることで、すすぎの手間が大幅に省けます」(ナチュラルクリーニング講師・本橋ひろえさん、以下同)
洗剤が必要な汚れでも、
“予洗い”をしておけば洗剤量が減らせる
洗剤を使わずに落とせる汚れとは、どのようなものがあるのでしょうか?
「ホコリ、チリ、砂や泥、髪の毛などの汚れやゴミなどは、掃除機で吸い取ったりホウキではいたり、水スプレーを吹きかけたりして取り除きます。食べ物のカスも、洗剤を使わずに取り除ける分はありますね。使用した調理道具やお皿の油汚れといった洗剤を必要とする汚れでも、あらかじめペーパーで汚れを拭き取ったり、水洗いをしたりすることで落とせる汚れは取り除いておきましょう」
洗剤が必要ないキッチンの汚れ
・ホコリ・チリ
・砂・泥
・髪の毛 など
洗剤が必要なキッチンの汚れ
・油・皮脂
・食べ物のカス
・水アカ
・カビ・雑菌
汚れをゆるめる“化学反応”を起こすために
必要な洗剤はとてもシンプル!
キッチンで発生する汚れには、洗剤不要の汚れ、酸性の汚れ、アルカリ性の汚れの3種に分類ができるという本橋さん。
「酸やアルカリには強弱があり、その強さはpH(ペーハー)値で表します。pH7が中性で、それより数字が小さければ酸性が強く、数字が高ければアルカリ性が強くなります。『酸とアルカリが混ざると中和し、汚れがゆるむ』原理を利用するのが化学反応を活用した掃除術です。そのため、油や食べカスなどの酸性の汚れにはアルカリ性の洗剤を、水アカや石けんカスなどのアルカリ性の汚れには酸性の洗剤を使うと汚れが落とせます。カビや雑菌は、除菌効果の高い洗剤で掃除することで繁殖を防げます」
洗剤が必要な汚れ
・油・皮脂=酸性
・食べ物のカス=酸性
・水アカ=アルカリ性
・カビ・雑菌=中性
「以上の理由から、キッチン掃除に必要な洗剤は5種類に絞ることができます。キッチン以外の掃除でも、汚れの種類が同じであれば、同じ洗剤が使えます。場所別、用途別に専用洗剤を買い揃えるよりも省スペースに収納でき、すすぎの手間が減らせるので、経済的にも労力的にも省エネにつながります」
5種類のナチュラル洗剤
1. 重曹
2. 過炭酸ナトリウム
3. 石けん
4. クエン酸
5. アルコール
「酸性の汚れには、弱アルカリ性の重曹、過炭酸ナトリウム、石けんを、アルカリ性の汚れには、酸性のクエン酸を使います。洗剤で落とす汚れの8割以上が酸性なので、重曹や過炭酸ナトリウムの出番が多くなります。水が使えない場所の油汚れを落としたいときには、揮発性の高いアルコールを使えば、油を溶かすことができます。水アカ以外にも、石けんカスや魚の生臭い匂いなどはアルカリ性の汚れなので、クエン酸を使います。それぞれの掃除方法は、このあと順に説明していきますね」
掃除道具もシンプル!
キッチン掃除に必要な5アイテム
洗剤は5種、そして、掃除に使う道具も5種で完結。とことんシンプルにすることで、掃除のムダをなくすのが本橋さんのナチュラルクリーニング術です。
「拭き取り掃除に欠かせないトイレットペーパーは、専用容器に入れてサッと取り出せるようにしています。スポンジや厚手のぞうきんは乾きづらいため、メッシュクロスを使用しています。マイクロファイバークロスは、後で説明する重曹水やクエン酸水を吹きかけた場所の乾拭きに重宝します。スポンジもふきんもなるべく薄手のタイプを使うことで、雑菌を防ぎます。ナナメカットブラシは、蛇口やシンクなどすき間の汚れを磨くアイテムです。毛が縦方向にあり、ナナメにカットされていることで汚れがかき出しやすいので、この形状がオススメです。シリコン製のカップカバーがあれば、シンクに湯を溜めてつけおき洗いをするのが簡単に。ナナメカットブラシとドリンクホルダーは100円ショップで購入できます」
では早速、キッチンのガンコな汚れを一網打尽にする、5種類のナチュラル洗剤を活用した汚れ落としについて、コツを教えていただきましょう。