2025年中発売予定のスズキBEV「eビターラ」を先行体験!完成度に満足しかない!

ink_pen 2025/8/5
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2025年中発売予定のスズキBEV「eビターラ」を先行体験!完成度に満足しかない!
会田 肇
あいだはじめ
会田 肇

カーライフアドバイザー。カーナビやドライブレコーダーなど身近な車載ITグッズのレポートを行う他、最近はその発展系であるインフォテイメント系の執筆も増えている。海外で開かれるモーターショーや家電ショーにも足を運び、グローバルな視点でのレポートに役立てている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

スズキは7月10日、量産を前提とした初の電気自動車(BEV)「eビターラ(e VITARA)」の日本仕様車を公開しました。スズキによれば、2025年中にも発売を予定しているとのことですが、それに先駆け、プロトタイプの試乗会をメディア向けに開催。さっそく注目の走りを体験してきました。果たしてその実力はいかに。

◾️今回紹介するクルマ
スズキ/eビターラ
価格未定

圧倒的存在感を発揮するSUV

eビターラが最初に公開されたのは2024年11月、イタリア・ミラノでのこと。インドのグジャラート工場で生産され、インドはもとより、そこから欧州や日本を含む世界各国へ輸出していくと発表。さらにはトヨタへOEM供給されることも決定するなど、eビターラは、まさにスズキのBEV世界戦略の第一弾として誕生したのです。

↑四隅で踏ん張る大径タイヤとロングホイールベースの組み合わせで、コンパクトながらも圧倒的な存在感を発揮している。

スズキの広報資料によれば、eビターラは『ハイテク&アドベンチャー』をテーマとして、「BEVならではの先進性とSUVならではの力強さを融合した、冒険心を刺激する力強さを特徴とした」と記載されています。

↑リアバンパー下センターのカバーはリアフォグランプではないとのこと。

実際、車両を前にすると外観からは四隅で踏ん張る大径タイヤと、BEVならではのロングホイールベースの組み合わせは、コンパクトながらも圧倒的な存在感を実感します。加えて、フロントグリルはBEVらしいグリルレスとすることでBEVであることをアピール。力強く張り出した前後のフェンダーや太いCピラーは、SUVらしい力強さも伝えてきます。

機能的で高品質にあふれたインテリア

車内へ乗り込んで驚いたのは、インテリアが高品質にあふれていたことです。カラーはブラウンとブラックの2トーンで構成され、ダッシュボードの前面もソフトパッドで覆うなど、手に触れる各所から質の高さが伝わってきます。また、ステアリングホイールは下部をフラットにした独特な形状で、これは乗降性を考慮した結果採用されたもの。使い勝手をちょっと心配しましたが、運転していても特に違和感はなくスムーズに使いこなせました。

↑インテリアはブラウンとブラックの2トーン仕上げで、従来のスズキ車とは違った新たなデザインをアピールした。
↑ダッシュボードやドアトリムにはソフトパッドが貼られ、インテリアの高品質感を醸し出していた。

ダッシュボードは水平基調で前方視界も良好。その中には10.25インチのメーターディスプレイと10.1インチディスプレイを持つインフォテイメントシステムを収納しています。インフォテイメントシステムは物理スイッチがなく、操作した感が得られないのは残念ですが、ディスプレイ上に表示されるメニューはわかりやすく操作で迷うことはなさそうです。もちろんApple CarPlayやAndroid Autoにも対応していました。

↑メーター内表示は任意に切り替え可能。ステアリングコラムにはドライバーの視線認識用センサーが装備されていた。
↑Apple CarPlayやAndroid Autoにも対応したインフォテイメントシステム。標準装備されていたカーナビにはアイシン製を採用する。

車内は圧倒的に広いとまではいえませんが、背が高いSUVであることも相まってヘッドクリアランスは充分。フロアもフラットなだけに足元が広々としていて居心地はとても良い印象です。また、カーゴルームの具体的な容積は発表されていませんが、天井が高いこととも相まってキャンプ用品などの積載にも使い勝手の良い広さを感じました。後席の中央部を手前に折りたためるので、大人二人が乗車して長尺ものの積載ができるのもいいですね。

↑たっぷりとしたシートサイズはサーキット走行でも身体をしっかりとホールド。運転席はパワーシートとなっていた。
↑後席のセンターは手前にたたむことができ、アームレストになると同時にカーゴルームとつながる。シートスライドは160mm。
↑後席を折りたたんだ状態のカーゴルーム。後席使用時の奥行きは後席のスライドに応じて675~835mm。

機能的な装備もこのクラスとしては十分なものでした。ルーフには手動スライド式シェードを備えたガラスサンルーフが装備され、運転席にはパワーシートを装備。USB端子はセンターコンソールの中央と、後席用にも別々に用意し、さらにスマートフォン用非接触充電器も装備されていました。ただ、試乗車はあくまでプロトタイプだったため、これらがどのグレードに装備されるかは現時点で不明です。

↑前席上には電動ガラスサンルーフを装備。手動式のサンシェードも備わる。
↑前席センターコンソール下には、シガーライターソケットの他、HDMI端子、USB端子(片方は充電専用)が用意されていた。
↑センターコンソールの後端には後席用として充電用USB端子が2つと、AC100V/1500Wコンセントを装備されていた。

バッテリーは49kWhと61kWhの2種類を用意

今回の試乗にあたって用意されていたのは2WD(FF)と4WDで、いずれも61kWhの駆動用バッテリーを搭載していました。2WDでは61kWhと49kWhの2種類を用意したとのこと。スズキによれば、日本仕様は2WD(FF)の標準グレード(49kWh)と上級グレード(61kWh)、さらに4WD(61kWh)の計3グレードが用意される予定だそうです。

↑「eビターラ」4WDのeAxleには、アイシンとデンソー、トヨタ自動車が共同出資するBluE Nexus(ブルーイーネクサス)製を採用。

一充電での航続距離は、2WDの49kWhで400km以上、61kWhで500km以上、そして61kWhを搭載した4WDでは若干短くなって450km以上ということでした(※いずれもWLTCモード時)。注目はそのバッテリーです。これまで日本で販売される日本メーカーのBEVは三元系リチウムイオン電池を使ってきましたが、eビターラでは初めてリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP)を採用。しかもパックごと中国BYD製を、インドに輸入して組み込んでいるとのことです。これはLFPが三元系に比べて安価であることに加え、安全性でも優位との判断が大きかったようです。

↑急速充電はCHAdeMO(チャデモ)に対応し、90kWの高速充電も可能にした。普通充電口は反対側に備えられている。

なお、今回の試乗はすべて61kWhのバッテリーを搭載した車両での体験となりました。

軽快な2WD、安心感のある走りを見せた4WD

試乗コースは袖ケ浦フォレストレースウェイ(千葉県袖ケ浦市)で、一周すると全長は2.4キロほど。サーキットということで加減速を存分に試すことはできても、路面状態が良好であるため、本来の乗り心地チェックには不向き。それでも今回はありがたいことに、コース内にパイロンを置いて、スラロームやレーンチェンジを試せる区間も用意されていました。

↑サーキット内を走行中の「eビターラ」4WD。最大トルク307Nmの圧倒的パワーを備え、前後の駆動力を最適化して旋回時の安定した走りをみせた。

eビターラにはドライブモードとして「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の3種類を用意。さらにペダル設定として「ノーマル」「イージードライブ」の2種類を組み合わせて走行でき、このイージードライブでは回生によるブレーキ操作を3段階で調整可能です。試乗ではワンペダル的な走行が期待できるこの回生ブレーキの効き具合も試してみました。

↑シフトコントロールには、スズキとしては初めてプッシュして回転させる機構が採用された。

最初に試乗したのは2WDで、最高出力128kW/最大トルク193Nmのモーターを搭載して前輪を駆動します。重量は1790kgで、筆者一人が乗車して試乗しました。

↑「eビターラ」2WD。最高出力128kW/最大トルク193Nmのモーターを搭載して前輪を駆動する。

ピットからコースに出てアクセルを踏むと、さすがBEV!速度がスタート直後からスムーズに上がっていきます。少しタイトなコーナーに差しかかっても速度域をそれほど下げなくてもスムーズに通過。スラロームも軽やかにこなし、軽快なフィーリングを伴った走りを実感できました。

続いて試乗した4WDは、前輪に2WDと同じモーターを積み、それに加えてリアには最高出力48kWのモーターを搭載。前後合わせたシステム出力は135kWとなり、最大トルクに至っては307Nmもの強大なパワーを発揮します。その分だけ重量は1890kgと2WDよりも重くなりますが、それを上回るパワーで力強い走りを見せていました。

↑サーキット内を走行中の「eビターラ」4WD。0-100km/hの加速は7.4秒と発表された。2WDの49kWhバッテリーモデルでも9.6秒と十分な加速力だが、さらにパワーに余裕を感じる。

しかも、4WDでは前後のトルク配分を自動的に最適化することができるため、特にコーナリングでの安定感は抜群。増えた重量をものともせず、スラロームでもしっかりとした駆動力を実感することができたのです。これは雨天走行では間違いなく効果を発揮すると思われ、4WDならではの高い走破性を期待できるはず。個人的には車両価格が高くなってもこの安心感を伴う4WDが“買い”となるのではないかと思いました。

気になる価格。300万円台後半を期待したい

今回の試乗はあくまで路面状態の良好なサーキットでの結果ですが、走りのスムーズさにおいては公道でも大きく変わらないはず。乗り心地にしても、フロアにバッテリーを搭載したこともあって、BEVらしくドッシリとした落ち着きのある乗り味が期待できるでしょう。

最後に気になる車両価格ですが、聞くところによれば、イギリスでは585万円からとの発表があったそう。個人的には300万円台後半を期待していただけに、この価格だとちょっと厳しいかなぁと思った次第。ただ、スズキは「ジムニー5ドア」で、海外では400万円超えだったものを日本では265万円ほどで発売した実績があります。eビターラでも同様な対応がされることを期待したいと思います。

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撮影/宮越孝政

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