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2023/4/24 21:15

大自然のなかで再生可能エネルギー100%の生活を。完全オフグリッドハウス「EcoFlow House」を体験した

ポータブルバッテリーやソーラーパネルを開発するメーカー・EcoFlowは、同社製品が生んだ再生可能エネルギーだけですべての生活家電を動かす“完全オフグリッド”の宿泊施設・EcoFlow Houseを4月20日にオープンしました。ここは、オフグリッド型生活を体験できる施設としてだけでなく、地元である長野県伊那市の企業や団体と協業し、地域文化の発信やアクティビティ体験の場としても活用される予定です。今回は、EcoFlow Houseに実際に伺った際のレポートをお届けます。

 

キャンプ場の倉庫が地元の木材によって生まれ変わり、オフグリッドハウスに

EcoFlow Houseが位置するのは、長野県伊那市横山。飯田線の伊那市駅から車で30分ほど走った先の、山の中です。電気や水、電波もない、人里から離れた場所。ここにはかつてキャンプ場があったといい、EcoFlow Houseの元となった建物は、倉庫などとして使われていました。それを、地元の木材をふんだんに用いて改装したのが、現在の姿です。

↑EcoFlow Houseの外観

 

その外見は、“大きな小屋”といった雰囲気。内部は広いエントランススペースと、その奥の宿泊スペースで構成されています。エントランススペースにはプロジェクターも常設されていて、宿泊者はこれを使って映画鑑賞を楽しむことが可能です。EcoFlowによれば、今後、地域のイベント会場や、あるいは結婚式場などとしても、このスペースを活用していきたいといいます。

↑広大なエントランススペース。右奥にはプロジェクターに照らされたスクリーンが見えます

 

↑プロジェクターの電源は、EcoFlowのポータブルバッテリーです

 

↑エントランススペースの壁面などには、伊那に住むアーティスト・山下勝彦さんによるアートが施されています

 

奥に設けられた宿泊スペースは、地元・伊那産の木材による温もりが特徴。2フロアで構成されていて、1階がキッチン&リビング、2階が寝室になっています。キッチンの奥には、屋根の上にあるソーラーパネルで発電した電力を各家電やバッテリーに振り分けるパワーシステムを設置。その脇に設置されているコントロールパネルの液晶画面を見ると、現在の発電状況や電力消費状況を一目で確認できます。

↑1階部分。奥にはキッチンが見えます

 

↑キッチンには大型の冷蔵庫や食洗機などが入っています。オフグリッドハウスであることを感じさせません

 

↑パワーシステム

 

↑コントロールパネルでは、電力の発電状況・消費状況を確認できます。なお、各家電のオンオフは、備え付けのタブレットからでも行えるそうです

 

↑2階の寝室。暖色の照明が、和やかな雰囲気を醸し出しています

 

屋根に設置されたソーラーパネルは400W出力のものが8枚で、将来的には12枚に増設予定。増設後は、晴天の1日の平均で、12kWh程度の電力が得られる見込みだといいます。この発電量は、3人家族が1日に消費する電力の平均とほぼ等しいそうです。なお、余剰電力はEcoFlowのポータブルバッテリーに蓄電されており、電力が不足したときにはそこに溜めたぶんを消費します。

↑屋根に設置されたソーラーパネル

 

水道は通っていないため、タンクに溜めた水を使用する形式です。蛇口の栓を開けると、タンクの水が電動ポンプで汲み上げられてきます。また電波もないので、通信にはスターリンクを使用しています。そのおかげで、施設内のWi-Fi通信は、非常に快適な速度を保っていました。電力、水ともに制限こそあるものの、居住性は高い印象を受けます。宿泊施設としての開業を前に、EcoFlowでは同社製品の購入者に向けてEcoFlow Houseへの宿泊希望を募っており、すでに30組、80人を超える人からの応募があったそうです。

↑スターリンクのアンテナ

 

EcoFlow Houseのもうひとつの顔。伊那の地域文化発信の場として

EcoFlow Houseには、オフグリッド型の宿泊施設に加えて、もうひとつの顔があります。それが、地域文化の発信・アクティビティ体験の場としての活用です。それを体現するかのように、メディア向け撮影・取材会にも、伊那市に根付いた活動を展開する、地元の企業、団体の方々が出席しました。

 

登壇したのは、地域材家具職人として森林と共生するライフスタイルを広める活動を行う株式会社やまとわの中村 博さん、伊那産のリンゴを使ったシードルを醸すカモシカシードル醸造所の入倉浩平さん、伊那“土着”の蔵として米を削らない純米酒の製造にこだわる蔵元・宮島酒店の宮島 敏さん、荒れてしまった里山を整える地元有志団体・維者舎(いざや)の唐木春夫さん、唐木賢治さんの5名。伊那の地に根差した活動を展開しているこの5人は、地元を盛り上げるというEcoFlow Houseの理念に共感し、この会への参加に至りました。

 

↑左から、中村さん、入倉さん、宮島さん。中村さんは、釘も接着剤も塗料も使わずベンチを作るワークショップなどの活動を展開しています

 

いずれの方々も、熱の入ったプレゼンテーションを展開していましたが、筆者の心に強く残ったのは、宮島さんの熱いトークでした。1911年に創業したという宮島酒店は、現在4代目。先代から“安心安全な日本酒づくり”を追求してきたという同店では、1967年に3代目が、全製品を防腐剤無添加にするという日本で初めての試みを行いました。その後、4代目である敏さんが蔵を継ぎ、安心安全な日本酒とはなにかを突き詰めた結果が「農薬無添加の特別栽培米で低精白の純米酒を作る」という結論でした。

 

低精白とは、米をあまり削らないということ。日本酒づくりに用いられる酒米は、雑味を抑えるため、醸造の前に外側の部分を削られます。たとえば純米吟醸酒の場合、その精米歩合は60%以下です。これは、米の40%以上を削り、中心に近い部分のみ使うことを意味しています。

 

米を多く削る日本酒づくりは、地球にやさしくないというのが宮島さんの考えです。宮島さんは、地球にやさしい酒で酒米の味を極限まで堪能してもらおうと、精米歩合を91%までに高めた純米酒を醸造しています。

↑宮島酒店が醸す銘酒「信濃錦」。ラベルを瓶の肩部分だけにした、ラベルレスデザインのボトルを採用しています

 

↑維者舎の唐木賢治さん(左)、唐木春夫さん。設立してから3年ほどになるという同団体は、20〜25人の構成員で、横山の登山道の整備などに取り組んでいます。維者舎は宮島さんとのつながりがあり、宮島さんは維者舎の名を冠した酒も醸しています

 

宿泊者限定で楽しめる、地元フレンチレストランの絶品料理

撮影・取材会では、伊那市が誇るフレンチレストラン「kurabe CONTINENTAL DELICATESSEN」によるスペシャルコースも振る舞われました。そのメニューは、信州伊那谷ガレット、伊那谷生パスタ、伊那谷の野菜サラダの3点。その名の通り、いずれも伊那谷で採れた食材をふんだんに使っています。伊那谷は野菜の生産が盛んだといい、サラダはもちろん、どのメニューにもたくさんの野菜が用いられているのが印象的でした。シェフの渡邊竜郎さんによると、伊那谷の農家は小規模・多品種栽培の方が多いため、ここで採れる野菜の品種はなんと200にも及ぶといいます。聞いたことはもちろん、見たこともないような野菜を「これはなんだろう、どんな味がするのかな」とワクワクしながら食べられる、貴重な機会でした。

↑信州伊那谷ガレット。ガレットとは、フレンチにおける食事用のクレープです

 

↑伊那谷生パスタ。野菜のシャキシャキ感と麺のもっちり感が交わる、独特の食感です

 

↑伊那谷の野菜サラダ。青っぽさがありながらまったく気にならないやさしい味わいでした。ソースの材料には、地元で採れたイワナを使っているといいます。右に写っているのは、地元のリンゴを絞ったジュースです

 

EcoFlow Houseに宿泊する人は、事前予約をすることで、この出張料理を食べられます。ここでしか味わえないものばかりなので、宿泊の際には、ぜひ味わうことをおすすめします。

 

大自然を満喫できるアクティビティも

EcoFlow Houseでは、大自然のなかで楽しめるアクティビティも満載です。パラグライダーやバギーなどのアクティビティを主催しているASOBINAが協力しているため、そのメニューは豊富。アクティビティに用いる動力に関して、EcoFlowは「いずれ、再生可能エネルギーでまかなっていきたい」としています。

↑横山のふもとにあるASOBINAで申し込めば、バギー(写真右)などのアクティビティを楽しめます。ちなみにこのバギーは電動だそう

 

リニア中央新幹線の長野県駅からほど近い伊那の地は、今後数年間で注目度が増すと思われます。そんな伊那の魅力を発信する基地のひとつとして、EcoFlow Houseは機能していくことでしょう。都会では決して体験できない、オフグリッドの大自然ライフを楽しめるEcoFlow House。アウトドア好きの方は、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。