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F1
2019/11/4 19:00

F1の「IT化」が止まらない! レッドブル・ホンダ好調の裏には、AT&Tという相棒がいた

世界21か国を転戦し、手に汗握る白熱のバトルを展開するF1GP。モータースポーツの最高峰として高い人気を誇るトップフォーミュラですが、そんな華やかな戦いの裏には数多くのスタッフが存在し緻密な仕事を請け負っています。今回は10月11日~13日に開催されたF1GPの第17戦「日本ラウンド」に注目。レッドブル・ホンダの好調を支えるバックヤードへと潜入し、その秘密に迫ってみました。

 

台風の接近で大荒れとなった日本GP

世界を転戦するコンチネンタルサーカスとして人気の高いF1GP。その第17戦、日本ラウンドがモータースポーツの聖地である鈴鹿サーキットで開催されました。12日の予選日は台風19号「ハギビス」の接近により急遽スケジュールが変更され、翌日に控えた決勝日の午前中に予選を行い、その数時間後に決勝がスタートするという慌ただしいものへと変更。

↑写真左からドライバーのマックス・フェルスタッペンと、アレクサンダー・アルボン

 

13日の決勝グリッドはフェラーリのセバスチャン・ベッテルがポールポジションを獲得し、注目するレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは5番手、アレクサンダー・アルボンは6番手と好位置をキープ。決勝はメルセデスのバルテリ・ボッタスが優勝を飾り、フェルスタッペンは1周目に接触によるリタイヤとなるものの、アルボンは4位でフィニッシュを果たし5戦連続でポイントを獲得しました。

 

時代と共に進化を求められるF1GPのIT化

1950年のイギリスGPから始まった歴史のあるF1グランプリ。世界最速の戦いは常に進化と挑戦が求められ、その実績が市販車へとフィードバックされ自動車文化を支えています。今回、我々GetNavi web編集部は、絶好調の活躍を果たすレッドブル・ホンダへと密着し、バックヤードへと潜入することを許されました。

このチャンスを与えてくれたのは「Aston Martin Red Bull Racing(アストン・マーティン・レッドブル・レーシング)」とともに、その舞台裏を支えているAT&T。同社はアメリカ大手の企業向け通信情報サービスを担うコングロマリットとして名を馳せ、その技術力とネットワークの確かさを武器にAston Martin Red Bull RacingのテクノロジーパートナーとしてF1GPへと参画しています。

昨今のF1GPはドライバー、エンジン、シャーシ、タイヤとともに「情報」が勝敗を左右する重要な鍵となり、今や「F1GP=情報戦」と呼ばれ、ドライバーのスキルだけでポディウム(表彰台)の頂点に立てるほど甘くはありません。最新のF1マシンにはなんと150ものセンサーが取り付けられ、リアルタイムでエンジン、トランスミッション、タイム、各種補器類の情報を収集します。

 

その情報を基にチーム内、そしてチームが本拠地を置く英国のファクトリーに設置されたオペレーションルームへと送られ、情報を解析した上でストラテジストによって最適な指示が送られます。その指示は瞬時にピットクルーやドライバーへと伝わり「今、自分が何をすべきか」という動きが具体的に分かるといいます。そして、センサーを通してテスト、フリープラクティス(練習走行)、予選、本戦と常時送信されてくる膨大な情報はホストコンピュータで処理され、F1GPでの勝利を目指すオペレーションとしてフィードバック。そう、レースはサーキットだけで完結するものでなく、世界を股にかけて行われているのです。

Aston Martin Red Bull RacingとAT&Tのスタッフは合わせて約800名が在籍し「デジタルトランスフォーメーション」として約10%のスタッフがチームと帯同。その選ばれし少数精鋭たちが世界21か国のサーキットを転戦。そこで手腕を振るうのがグローバルネットワーク企業AT&T。どのロケーションでも45tある設備を、Aston Martin Red Bull Racingチームがサーキットに到着する前に全てのセットアップ完了させているというから驚きです。

 

その約800人のスタッフとのコミュニケーションをITの観点から円滑化すること、それが同社の役割です。例えば、試合で得たデータをもとにマシンデザインや製造、レース戦略のプロセスをデジタル化すると、意思決定のスピードも早くなります。このネットワークのコネクティビティこそが同社の魅力であり、世界最高峰のフィールドで戦うAston Martin Red Bull Racingの大きな武器になっています。

また、Aston Martin Red Bull Racingチームがホンダ製のパワーユニットを搭載するという挑戦は2018年6月に発表され、2019年2月に車両に搭載した初テスト走行は決まっていました。猶予は8か月しかなく、AT&Tの助けが必要でした。AT&TはHDR SAKURA(ホンダの四輪モータースポーツの技術開発を行う研究所)と専用回線を共有することで、ホンダとエンジニアリングのデータを共有したことで、時間のない中でもホンダとの関係がうまくいったのです。

↑東京モーターショー2019ホンダブースにて

 

禁断のバックヤードに潜入し、我々が目にしたものとは…

今回の潜入レポートでは実際のピットだけでなく、特別にバックヤードの見学が許されました。動画だけでなくスチール写真の撮影も禁止されるエリアであり、本稿内でそのビジュアルをお届けすることはでないのですが、実際に見てみると、特設のデスクにモニターがずらりと並び、マシンから送られてくる膨大な情報を選任のスタッフがモニタリングしていたのが印象的でした。その姿はサーキットのピットではなく、まさしく「指令室」そのもの。F1GPが情報戦であることを象徴するような場所でした。

 

実際にF1のパドックに入れるスタッフ人数は、レギュレーション上決まっており約60人。英国のオペレーションルームなどとのコミュニケーションはメッセンジャー、IP電話、ビデオ会議システムなどで行い、そのコミュニケーションを円滑化させるのに必要な通信環境を整えています。

Aston Martin Red Bull Racingのテクニカル・パートナーシップス・ヘッドのゾイ・チルトンさんは、「AT&Tのおかげで、世界中のどこにいても、レース期間中にチームのつながりを保つことができます。接続のスピードと、AT&Tのさまざまな能力により、イギリスにいるオペレーションルーム・チームが車両から送信されるテレメトリーを分析し、レース戦略にタイム・クリティカルなインパクトを与えられます」と言います。

↑今回F1GPのIT化について取材対応してくれたAston Martin Red Bull Racingテクニカル・パートーナーシップス・ヘッドのゾイ・チルトンさん(中央)と、AT&Tジャパン代表取締役社長の岡さん(右)

 

今やITはF1GPにとって最も重要なファクターであり、Aston Martin Red Bull RacingとAT&Tのタッグが快進撃の要になっていることは間違いありません。華やかなF1サーカスを支える縁の下の力持ちとして力を発揮するAT&Tの活躍は、残りのグランプリをさらに盛り上げ、白熱したバトルを提供してくれることに期待します。

 

最後に貴重な経験をさせてくれたAston Martin Red Bull RacingとAT&Tに感謝をするとともに、メインスポンサーであるエナジードリンク“Red Bull” を飲みながら必死で原稿を書き上げたことをここに記しておきます。

 

【フォトギャラリー(GetNavi webにてご覧になれます)】