ギョーカイ“猛者”大田原 透が、走って、試して、書き尽くす! ランニグシューズ戦線異状なし
2022「ニューバランス」秋の陣②「Fresh Foam X More v4」の巻
ランニングシューズブランド自慢の逸品を、走って、試して、書き尽くす本企画。今回は、ランニングシューズ界の名門ニューバランスへ押しかけました! 「“いちばん厚くて、いちばん快適!”な初心者向けのシューズを、履きたい!」というリクエストに、「Fresh Foam X More(フレッシュフォーム エックス モア) v4」が登場。
なるほどのマシマシ感、妖艶ですらあるシルエット、みごとな貫禄。ということで、ニューバランスの担当者に、根掘り葉掘り聞き、実際に履いて走ったレビューをお届けしよう!
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我ら、“ライフスタイルランナー”のためのシューズ!
「従来のランニングシューズは、走る目的や機能を重視してきました。しかし、このシューズは、ランニングだけではなく、いわゆる“普段履き”もできるデザイン性のニーズにも応えました」(間宮さん)
このシューズとは、ニューバランスの「フレッシュフォーム」シリーズで、いちばん厚底、いちばん軟らかいという触れ込みの「Fresh Foam X MORE v4」だ。それを語るのは、ニューバランスのランニングシューズ企画の間宮 葵さんである。
間宮さんによると、ニューバランスでは、こうしたファッション性も重視するランナーたちを、“ライフスタイルランナー”と呼ぶ。おー、“ライフスタイルランナー”とは、我が意を得たり! ガチのランナーではない筆者にとっては、“ライフスタイルランナーこそメジャーでしょ”と、遅かろうが、辛かろうが、ギョーカイ最強(⁉)を目指し、胸を張って走ってきた。
走力を含め、陸上選手のようなランパン×ランシャツの次元ではなく、あくまで体型維持、ポジティブに生きるためのランニング。だからこそ、カッコ悪く走りたくない、ならば、ファッションにもお金はかける。“ライフスタイルランナー”は、まさに私たちのことだ(ニューバランスにとっての本来のターゲットは、もちっと若い♪)。
「いちばん厚くて、いちばん軟らか!」に弱いのです……。
「そうした、他の人と違うシューズを履きたい、新しいモノを試したい、”もっと楽しく、心地よく”という意味も込めて、英語のmoreが、ネーミングの由来です。Fresh Foam X Moreはフレッシュフォームを冠にしたシューズたちの中で、ミッドソールのフォーム材がいちばん厚くて、いちばん軟らかいシューズ。足入れの良さも、ズバ抜けています!」(間宮さん)
いちばん厚くて、いちばん軟らかい! と、ココで素朴な疑問が湧いてくる。厚い=軟らかい、と言い切って良いのだろうか? それって、同じフレッシュフォームシリーズのシューズによって、フォームの軟らかさに違いがある、ってこと?
「はい。名前は同じ『フレッシュフォーム』ですが、実は、それぞれのシューズのコンセプトに合わせて、混合する原材料や発泡具合を変えています」(間宮さん)
なるほど、ミッドソールの「フレッシュフォーム」や「フューエルセル」は、カテゴリーを示す名称でもある。フレッシュフォームの特徴は、反発性もありつつも、より衝撃緩衝性に富んでいる点。しかし、そのままでは単にブワブワな、見てくれだけの厚底シューズになる可能性もある。なので、「フレッシュフォーム」という名称はそのままに、個別に味付けを変えているのだ。
さらなる工夫は、さすがランニングシューズ界の名門ニューバランス。さまざまな工夫を施し、長距離を走るにも耐えるランニングシューズに仕上げている。
「Data to Design」という考え方
「着地時、足が内側へ倒れ込みすぎる『オーバープロネーション』対策として、ご覧のようにミッドソールにハニカム(6角形)の凹凸をつけています。凹部で衝撃緩衝し、凸部で反発性を高めるためです。同一のフォーム材にもかかわらず、凸凹を配する位置で、発揮する性能を変化させています」(間宮さん)
こうした考え方は、ニューバランスお得意の、デザインにも機能を持たせる「Data to Design」という考え方だ。
「さらに、厚みのあるミッドソールによって生じるグラつきを防ぐため、アウトソールは横に張り出したような形状を採用し、安定感も確保しました。また、靴底に刻まれたガイドラインとなる溝を刻むことで、足運びの軌跡にも無理を生じさせません」(間宮さん)
ミッドソールをギガ盛りした“名門の反逆児”のような風貌ながら、ニューバランスのDNAは失われてはいないのだ。
いわゆる「ロッカー」と呼ばれるトゥの反り返りも、大きく取っている。着地後、前方への推進力の低下を防ぐため、ロッカーを大きく取るシューズは多々ある。Fresh Foam X More v4は、ミッドソールの沈み込みが大きいので、履いて走った際、見た目よりも気にならない設計を取ったという。
実は、ロッカーの大きさは、走る人にとって一長一短となる。推進力が出るので、転がるように前に進むが、足のスネの筋力が追いつかず、疲労や痛みにつながる可能性もある。筆者も何度も痛い目に合ってきたので、ロッカーには慎重に試したいところだ。
ニューバランスは、矯正靴の製造からスタートした
ところで、「Data to Design」を具現化した、先述のミッドソールへの6角形のハニカム構造は、衝撃緩衝性や、内側への倒れ込み(オーバープロネーション)の予防効果の数値として、どのように表されるのだろうか?
という質問をぶつけてみたが、間宮さんからは「現時点ではそのデータは非公開」とシビアな答えが返ってきた。ニューバランス独自の構造だけに、根拠となる数字を知りたいと思うランニング好きは、私ひとりではないはずなのだが……。というのも、ニューバランスは、もともと矯正靴の製造からスタートしているからだ。
北米はボストン、アーチサポートのインソールや偏平足対策の矯正靴の製造メーカーとして、ニューバランス社が1906年に誕生したことは有名な話である。そのニューバランスが作るシューズのへの信頼感は、100年以上経つ今も色褪せていない。ピンクリボン(乳がん)への啓蒙活動など、社会課題に対するニューバランスの取り組みも、昨日今日に始まった話ではない。
だからこそ、目新しいシューズや、ハイスペックなシューズに独自の認証などを与え、カラダへの配慮をもっと積極的に訴えてくれて良いのだと感じてしまった。何より、そうしたコンサバな部分も含めニューバランスのファンは多いのだから。
「そうした要望は、何度もいただいていますが、具体化には至っていません……」(間宮さん)
今後に、期待していますぜ!
いよいよ、Fresh Foam X More v4で試走!
開発の話をたっぷり聞いたところで、Fresh Foam X More v4の試走スタート! まずは、シューズに足を入れた感覚のインプレを行った。そして、初心者も含め、多くの方々がランニングシューズを履く、3つの理由に合ったペースで実際にフィールドを走ってみた。
最初は、「運動不足解消」が目的、1㎞を約7分で走る(=キロ7分)の~んびりペース。続いて、脂肪を燃焼させる「痩せラン」に適した、1kmを約6分で走る(=キロ6分)ゆっくりペース。最後は、距離ではなく、走る爽快感重視の、1㎞約4分30秒~5分で走る(キロ4.5~5分)スカッとラン。Fresh Foam X More v4の実力、試してみたぞ!
【まず、履いてみた!(走る前の足入れ感)】
ルックスで得するとは、まさにFresh Foam X More v4のための言葉だろう。履いた感じが悪くなる理由は、全く思いつかない(苦笑)。クッションの厚さ、アウトソールに向かってソールが外に張り出す安定感。つま先のロッカーは、今にも笑顔で走り出しそうな快適な角度。踵に重心を持っていくほど、“生”のフレッシュフォームを感じる(ような)こそばゆさ。
少し気になったのは、低速で歩き出した際のロードノイズ。立ち止まって、シューズの裏を触ってみると、踵側のライトグリーンのアウトソールの硬さが原因のよう。最近のランニングシューズは、地面と設置するアウトソール部分が、軽量化に寄与する要素だけに、ごく僅かだ。なので、硬めの素材で作られることが多く、雨天時のスリップのリスクをはらむこともある(Fresh Foam X More v4の踵部のアウトソールは、そこまで硬くはなく、フォームが沈み込んでグリップするので、不安な感じはしない)。
もう一度履いてシューレース(靴ひも)を締め直し、もう少し速く歩いてみる。今度は、ノイズは気にならない! それにしても、人生初の厚底シューズがこれなら、惚れてしまうだろうな、こりゃぁ。名門ニューバランス、勘どころ冴えきった、さすがの出来栄えだ。
【運動不足解消ジョグ(1㎞を7分で走るペース)】
初心者向けに開発された厚底シューズの特徴は、何と言っても贅沢なクッション性。各メーカーにとって、自慢のフォームの性能を存分に味わって欲しいので、高価な素材を惜しげもなく使い、その魅力にハマってもらうように設計している(なので、価格も上がりがちだ……)。と、最初は評論家ぶって走ってみたのだが、違和感があるのだ。
フツーのレビューには、Fresh Foam X More v4は納まらない気がするのだ。キロ7分の低速でも、なるほどしっかり走れる。クッション性も十分だし、初めての厚底でも、このペースで数km~10㎞程度なら、ケガの心配もない。さすが名門の方、そつない走りに感服するところ。なのだけれど、この企画は、往生際がよろしくない(笑)。今日は遅いので、まずは撮影だけ行い、後日、場所を変えて再チャレンジと相成った。
で、とある晴れた秋の日曜の朝。ここは、筆者の自宅に近い横浜市内、昔ながらの風景を保全した丘陵地帯の市民公園である。まずはフラットな道路で、キロ7㎞でラン。そのままスタート地点には戻らず横道へ。10%ほどの勾配の、石畳の細い急坂に、いざ突入!
歩くほどにゆっくりのスピードでも、名門の仮面の奥の顔が出してきましたよ。さすが反逆児! お散歩&ランのペースながら、公園の階段や、砂利道、アップダウンのある土の道を進むほどに、フレッシュフォームの“鮮度”が増してくる。反発性の楽しさが、足の裏から立ち上り、心を突き抜け、笑顔となってこみ上がってきた。こりゃ、たまらん! ペースアップさせてくれ~!
【痩せラン(1㎞を6分で走るペース)】
さてもさてもの悶絶の朝、の続きである。運動不足解消の「散歩&ラン」のペースで走り始めたのだが、あまりの快適さに、ペースアップしたまでが、前章。確実にペースアップし、公園内の梅林の丸太の階段を走り始めたのだが、もう止まらない。ピョコピョコ、善い歳のおっさんが、子どものように跳ね登っている。
下りも、もちろんゴキゲン。超人の必殺技のように「フレッシュフォーム!」と(心の中で)叫びながら、下っていた。ふと、我に返って考える。この快適感、なるほど、自転車のグラベルロードの開放感に似ている。
グラベルロードとは、基本的にロードバイクの仕様なのだが、未舗装の林道などのオフロードを走れるよう、太~いタイヤを履いたタイプの自転車で、世界的な人気を博している。乗る環境も含め、日本ではMTBとともに今ひとつなのが残念だが、繊細なレーシングカーであるロードバイクにはない、タフさと、路面を選ばない自由さが魅力だ。
Fresh Foam X More v4は、最強の「グラベル(砂利道)シューズ」だ。そう勝手に呼ばせていただくが、近所に自然公園がない都会ならば、お城や神社仏閣を探して走ろう! 石畳や階段、急な坂など、今までのランニングでは避けていた(はずの)道が、これからの定番コースになる。Fresh Foam X More v4は、従来のロードシューズでもなく、はたまたトレランシューズでもない、新たな走りに出会える可能性も秘めている。
イベントで履くとしたら、全角各地で行われている「マラニック(マラソン+ピクニック)」や「フォトロゲイニング(スマホ連動のオリエンテーリング)」、そして毎年夏前後に長野県にて行われる「OSJ王滝ダートマラソン(100㎞)」といったあたりだろう。走り出したら、止まらないぜよ!
【スカッと走(1㎞を4.5~5分で走るペース)】
今度こそ、気を取り直し、丘陵を抜けてフラットな道を走る。ペースを上げても、さすがは名門。フォームの分厚さをものともせず、きれいに加速に応じてくる。
もちろん、スパーンと反応が速いワケではない。抜きつ抜かれつのデッドヒートには向いてはいないが、ちゃんと加速に応じてくれる。このあたりは、よく履き込んで、自分の走りと靴の相性をよくよく擦り合わせておく必要があるだろう。
特に初心者や、(私を含め)しばらくランニングを控え気味にしていた方の場合、足の筋力が長い距離や、速いスピードに慣れていないと、無理は必ずカラダのどこかに影響して表出する。いわゆる「ロッカー(トゥの反り)」が大きいシューズの場合、スネに影響が出ることが多く、痛みが長引くと、取り除くのが厄介この上ない。
まずは、フレッシュフォームのコンセプトである「楽しく走る」を堪能しよう。砂利道よりも、速さや、距離が恋しいなら、次回に紹介する「FuelCell REBEL v3」を履いてみるのが、おススメですぜ(笑)。
いよいよ次回3回目は、前モデルから大幅な仕様変更となった期待の万能シューズ、「FuelCell Rebel v3」の登場。こちらも、私の実走レポート付きでのご紹介です!
撮影/中田 悟
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