以前、パナソニックによる、スタジアム限定のラジオを聴きながらのスポーツ観戦という新たな文化創造への挑戦について、記事をお届けしました。同社はそれにとどまらず、スポーツシーンを盛り上げるための取り組みを、様々な形で実施しています。
この記事で紹介するのは、観客の応援によってアリーナ内の照明が変化するという、観客参加型の照明演出。多数のLED投光器をクラウドを介して制御するサービス「YOI-en」を活用して実現したというその演出を、現場で体験してきました。
観客の「応援」で、アリーナの照明が華やかに!
2023年5月に開業したばかりのSAGAアリーナ。Vリーグに参加するバレーボールチーム・久光スプリングスのホームアリーナで、最大収容人数は8400人を誇ります。観客の応援によって変化する照明演出の実証実験が、ここで行われました。
新たな照明演出は、試合開始前に実施されます。光の演出で観客のボルテージを高めてから、白熱の試合に突入する、という流れです。
照明演出のコンテンツは、選手入場時と、その後のイベント「青く染めろ!」の2つ。その演出に参加するためのカギになっているのが、観客に配られるQRコードです。QRコードを読み込むと、自分の座席や推しの選手などを入力するWebページに遷移します。そこで必要事項を入力していくと、応援ボタンが登場。このボタンを押すことで、演出に参加できるという仕組みです。
久光スプリングスのチームカラーは青。イベント「青く染めろ!」では、観客のボタン押しによって、アリーナの四隅に設置されたムービングライトが青い光の柱を照らします。光の柱を出現させるには、ムービングライトの近くに座っている観客が応援ボタンを押す必要があります。応援ボタンを押した観客が多いエリアから光の柱が立ち上がり、イベントを通してアリーナ内の盛り上がりが可視化される仕組みです。
「青く染めろ」のあとは、選手が一人ずつ入場してきます。このとき、応援ボタンのタップ数に応じて、ユーザーが設定した推し選手登場時の演出が変化。多くの“応援”を集めた選手の入場照明はより華やかなものになるので、好きな選手を後押しする体験を味わえます。
演出の時間は、「青く染めろ!」が1〜2分、選手入場が5分ほど。筆者が座っていた後方の席からは、あちこちの観客がスマホをタップする様子が見られました。
観客の盛り上がりが可視化され、アリーナ内の一体感が高まる
照明演出に参加するまえに、観客は年代などの属性情報を入力します。その情報はチームに伝えられ、チームによるPR活動などに活かされます。
また、観客によるボタンのタップ状況は、リアルタイムでモニタリング可能。アリーナ内の盛り上がり状況が、数的に可視化されます。このようなメリットがありながら、YOI-enは既存の照明を入れ替えずとも導入できるのも長所です。
久光スプリングスのGM補佐・小早川 武徳さんは、今回の照明演出試験導入の目的について、以下のように語ります。
「サッカーのサガン鳥栖、バスケットボールの佐賀バルーナーズ、バレーボールの久光スプリングス。佐賀県には、3つのトップチームが集結しています。そのなかで、サガン鳥栖やバルーナーズには、観客を盛り上げる多彩な演出が導入されていて、我々もそれに追いついていかねばと考えていました。観客の情熱や心の動きを可視化する試みをしたいと思っていたところにYOI-enの話をもらい、実証実験を実施することにしました。設置されている照明の数が多い佐賀アリーナは、YOI-enとの相性がよいと思っています」
新たな照明演出を体感した筆者。実はプロのバレーボール観戦も、初めての体験でした。印象に残ったのは、客席と選手の距離が近いことによる臨場感の高さと、テンポの良い試合進行による盛り上がりの持続力。
逆転が起こりやすいというゲーム性も相まって、試合の初めから終わりまで、楽しみがずっと続きました。今回試験導入した照明演出が本格的に実施されるようになれば、バレーボール観戦の楽しみが試合前にまで広がることになりそうです。