日本筆記具工業会の統計によれば、シャープペンシルの販売本数・売上金額は2020年頃から右肩上がりとなっている。中学生・高校生の少子化傾向が続いているにもかかわらず、このような推移を示しているということは、現役の中高生がシャープペンシルを積極的に購入し、数千円台の高機能シャープも支持されているということを表している。
しかし、全ての中高生が高機能シャープペンシルに熱中しているわけではないだろう。「勉強道具として使用しているが、高価な製品を使う意義が見出せない」と考える層も少なからずいるはずだ。そこで今回は、高機能シャープ全盛の今だからこそ注目したい、“安くて性能もいい、これ1本でずっと使える”……いわば「コストパフォーマンスに優れた、長期使用可能なシャープペンシル」を紹介したい。
昭和のお買い得シャープは、
新機能搭載を搭載した令和版も超高コスパ
シャープペンシルの歴史を振り返ると、1960年代の最初期のノック式は高額で、一般への普及は限定的だった。
転機となったのは1980年、ゼブラが100円の「ノックペンシル」(2001年に廃番)を発売し大ヒットしたことだ。これを機に、他メーカーも低価格化を進め、シャープペンシルは一気に普及したというわけだ。
そして2024年春、そのシンプルさ、コスパの良さを受け継ぎながら現代的な機能を搭載した「ノックペンシル M-1700」が登場した。200円(税別)という価格設定は、現在の500円超が当たり前の市場では「比較的安価」な部類だが、機能面から見ると驚くべきコストパフォーマンスを誇っている。
ゼブラ
ノックペンシル M-1700
200円(税別)
まず注目したいのが、軸を振ることで芯出しができるフリシャ機能の搭載だ。芯が減った際に軸を握ったまま上下に振ることで、内蔵するオモリがカチャカチャと大きく跳ね戻り、その衝撃がノック代わりとなって芯が出る、という構造である。
従来のノック操作が不要なため、筆記の効率が格段に向上するのは大きなメリットだ。
もちろん普通にノックして芯を出すこともできるが、一度慣れると「シャープはフレシャ(他社ではフレフレ、フレノックなど)機能付きじゃないと困る」と感じてしまうほど、便利な機能なのだ。
ただし、振動で芯が出ると言うことは、筆箱の中に入れて持ち運んでいると勝手に芯が出ている、というトラブルにもつながってしまう。1000円以上の高級モデルで芯振り出し機能付きの場合、ノック部を固定するロック機構を搭載しているものもあるが、残念ながら200円の「ノックペンシル」には使われていない。
その代わり、オモリの衝撃を受け止めるノックバネを硬くすることで、軽い振動では芯が出ないようなチューニングを施しているようだ。
試しに筆箱に入れた状態で半日持ち歩いてみたが、芯の不用意な飛び出しはゼロ。通常の使用では問題はないことが確認できた。
ただし、その分、意図的に芯を出す際は少し強めの振動が必要となる。使用のコツは、ペン先を真下に向けて「カチャ!カチャ!」と音がするまでしっかりと振ること。軽い振動や斜めの状態では芯が出にくいため、多少の慣れは必要だろう。
たっぷり使える消しゴム付きで
これ1本携行するだけでいい
もうひとつのポイントが、軸後端に備えた消しゴムである。
軸後端には約15mmの長いタイプを搭載。側面の突起を使って時計回りに回転させることで繰り出すことができる。替えゴムも3個100円(税別)で販売されているため、気兼ねなく使用できる。このため、場合によってはペンケースなしで本製品1本だけを携行する使い方も可能だ。
十分な大きさの消しゴムを備えているため、このノックペンシル1本だけを持ち歩くという使い方も可能だ。手帳との相性も良い。
消しゴムは繰り出し式を採用しているため、ノックノブにキャップは不要。筆者のように小物の紛失が気になる人にとっては、この設計も安心感につながる。なお、芯の補充は、ノックノブを引き抜いて行う仕様となっている。
ここまで本製品の特徴的な機能を中心に紹介してきたが、それらの機能を度外視しても、これは非常に書きやすいシャープペンシルだと言える。
本体はプラスチックパーツを中心とした軽量設計でありながら、フレシャ機構用の真ちゅう製オモリにより低重心を実現している。この組み合わせが絶妙なバランスを生み出しているのだ。
グリップ部分がツルツルしているのがやや気になるものの、軽量かつバランスの良さから、そのグリップ感を特に意識することなく長時間の筆記が可能である。この点も本製品の優れた特徴の一つと言えるだろう。
率直に言えば、このシャープペンシルは、その控えめな外観から店頭での指名買いは多くないかもしれない。しかし、価格の手頃さから手に取った使用者が、日々の使用を重ねるうちに「あれ? このシャープ、実はすごくいいじゃない?」と気付くことだろう。
高機能シャープのような華やかさはまったくないが、控えめな佇まいの中に確かな実力を秘めた一本として、自信を持ってお勧めしたい製品である。