文房具
2019/4/12 21:15

電気を使わず書き消し自在!プラスの磁性メモパッド「Kaite」で書いて

【きだてたく文房具レビュー】磁力で字を書いて消すホワイトボード

日常的にネタ出し作業をするのだが、A5サイズのノートに水性マーカーを使って、思いついたことをドバーッと羅列するのが、自分の基本方式だ。スケジュール管理や原稿は、もう完全にデジタル派だが、ネタ出しだけは脳内のイメージをできるだけ素早く、かつダイレクトに露出させたいので、手書きから離れることができない。

 

とはいえ、現状のノート+マーカーが作業上の最適解かどうかは分からないので、それ以外の組み合わせも、機会をみては試すようにしている。例えば、筆記具は2Bの鉛筆だったり、1.3mmのシャープペンシルだったり。さらには紙もA4コピー用紙だったり、スケッチブックだったり、もちろんタブレットや電子ペーパーにもトライする。

 

で、先日、プラスから新しくネタ出し作業にも使えそうな面白いツールが出たという話を耳にしたので、どれほどのものか、早速使ってみることにした。

↑プラス「クリーンノート Kaite」A4サイズ 4536円・B5サイズ 3888円(写真はA4)
↑プラス「クリーンノート Kaite」A4サイズ 4536円・B5サイズ 3888円(写真はA4)

 

磁性メモパッド「クリーンノート Kaite」は、鉄粉入りマイクロカプセルをA4/B5サイズの薄い磁性シートに封入したもの。このシートの上にマグネットペンを走らせることで、鮮明な線を書き消しできる、という仕組みである。もちろん電源も消耗品も不要。

 

40代以上の人であれば、「タカラの『せんせい』のすごい版」という説明で通じると思う。あの懐かしのお絵描きボードと同じような構造だと思ってもらえば良い。

↑サラッとした書き味で、硬質のパネルに書いているような違和感が少ない
↑サラッとした書き味で、硬質のパネルに書いているような違和感が少ない

 

じゃあ「何がどうすごいのか」というと、まず驚いたのが書き味。板面に専用ペンを走らせた感覚が、なかなかに紙っぽいのである。

 

雰囲気としては、ピンと張ってクリップボードに固定したコピー用紙に、極太の低粘度油性ボールペンで書く、ぐらいの雰囲気に近い。もちろん「完全に紙と同じか?」と問われると「う、うーん……」と口ごもるレベルではあるが、それなりには紙っぽいとは感じられた。

 

また、従来の磁性メモパッドは、磁性シートとペンの間に透明のプラ板が挟まっているので、そのプラ板の厚みの分だけ“筆跡とペン先の隙間”を感じてしまう。Kaiteは磁性シート表面に透明の薄いコーティングを施してあるだけで、その邪魔な隙間が存在しない。磁性シートにダイレクトに書いている感覚も、紙っぽさの理由のひとつだと思う。

↑おもちゃの磁性メモパッド(左)とKaite(右)を同倍率で撮影したもの。これだけ小さく書いても読み取れる文字が書けるのは驚きだ
↑おもちゃの磁性メモパッド(左)とKaite(右)を同倍率で撮影したもの。これだけ小さく書いても読み取れる文字が書けるのは驚きだ

 

もうひとつのポイントが、描線の美しさ、というよりは解像度の高さだ。従来品が64ドット液晶の画面としたら、こちらはRetinaディスプレイか、というぐらいの差はある。

 

これはKaite内の鉄粉入りマイクロカプセルが微細(φ100~300μm)で、かつシートに区切りなく均質に封入されていることがポイントだろう。

 

ちなみにSNSでKaiteに落書きした絵をアップすると「鉛筆で描いた線みたいだ」というコメントをいくつもいただいた。線の色も真っ黒というよりはグレー系で、鉛筆の走り書きに近いのが面白い。

]↑SNSにアップした、妻の落書き。飼い猫ジムのスタンド「キングクリムニャン」(撫でさせて飼い主の時間を消し飛ばす能力)を表現
↑SNSにアップした、妻の落書き。飼い猫ジムのスタンド「キングクリムニャン」(撫でさせて飼い主の時間を消し飛ばす能力)を表現

 

Kaite付属のペンは両端がそれぞれ中字(0.8~0.9mm)/細字(0.5~0.6mm)のマグネット芯なのだが、どちらもしっかり細く、鮮明な線になっている。

 

特徴的なのは、細字タイプのペン先が可動式のディスク型になっていることだ。

↑Kaite専用ペン。個人的には、中字の方が違和感なく使いやすかった
↑Kaite専用ペン。個人的には、中字の方が違和感なく使いやすかった

 

磁性シートでくっきりとした線を書くためには、板面に対してマグネット芯を垂直に当てる必要があるのだが、芯が細すぎるとその垂直を保つのが難しい。そこで、板面に密着する可動ディスクの端にマグネット芯を仕込むことで、垂直を維持させようとしているのだ。

↑ディスク式の細字ペン先。どんな角度で握っても芯先(緑色の部分)が板面に垂直に当たるので、細くくっきりした線が書ける
↑ディスク式の細字ペン先。どんな角度で握っても芯先(緑色の部分)が板面に垂直に当たるので、細くくっきりした線が書ける

 

ただ、ペン自体の先端とディスク端の芯に座標的なズレが生じるので、書くときの違和感はなかなか拭えない。文字を書くぐらいならしばらくすると慣れたが、細かなイラストにはあまり向かなそうだ。

 

対して中字は、ペン先を偏心させて垂直筆記に対応しているので、違和感は少ない。描線の太さも、水性マーカーよりやや太いかな? ぐらいの雰囲気なので、ネタ出しなどの走り書きにはこちらがベストだと思う。

↑収納時はペンホルダーも兼ねる。大型のイレーザー。軽く撫でるだけで気持ち良く消せる
↑収納時はペンホルダーも兼ねる。大型のイレーザー。軽く撫でるだけで気持ち良く消せる

 

字消し用のイレーザーは、ホワイトボード用イレーザーのような大型のものと、ペンキャップの先端に仕込まれた部分消し用の、2種類が付属している。

 

大きくザッと消すには大型イレーザーでこすればいいのだが、問題は部分消しだ。消去も磁力で行っているため、例えば1文字だけ修正しようとペンキャップの部分消しイレーザーを押し当てると、その周囲もじわっと薄くなってしまうのである。

 

消せるのは便利だけど、繊細な消しは難しいなというのが、使った実感として正直なところだ。

↑ペンキャップの先端は、部分消し用のイレーザー。ただし近付けるだけで一帯がじわっと消えていくので、あまり細かい消しには使いづらい
↑ペンキャップの先端は、部分消し用のイレーザー。ただし近付けるだけで一帯がじわっと消えていくので、あまり細かい消しには使いづらい

 

Kaiteには、スマホ用の専用アプリも存在する。このアプリで撮影してデータ化することで、書いた内容を保存しておけるわけだ。アプリはKaiteの輪郭を検知して、自動的に傾きと台形補正を行ってくれる。いちいち真上からまっすぐ撮影する手間がないのはありがたい。

 

ただ、これはアプリの問題というよりKaite本体の問題なのだが、白いボードがやたらと光を反射するのである。天井の蛍光灯などの光源を受けると光のムラができてしまうので、撮影しても書き込んだ内容が消えてしまうことが多々あった。これではせっかくのアプリも無意味なので、ちょっともったいないように感じた。

↑自動認識中のアプリ画面と、取り込み画像。光の反射でムラになった部分は、データ化しても可読性が落ちる
↑自動認識中のアプリ画面と、取り込み画像。光の反射でムラになった部分は、データ化しても可読性が落ちる

 

このKaiteを実際にネタ出しノートとして1週間ほど使ってみた感想としては、「なるほど、これはこれでありかも」といった感じ。

 

まず、本体が薄くて軽いので、ペンとイレーザーをペンケースに入れてしまえば持ち運びがかなりラク。タブレットと違って無電源で使用できるのもありがたい。書き味に関しては、やはりこれまでの紙とマーカーの組み合わせほど納得がいくものではないが、それでも、ザザッと書き殴るならこれで充分とも感じられた。なんだかんだ言って消せるのは便利だし、消耗品もないし。

 

筆談ボードや子どもの書き取り学習用ツールとして考えれば、タブレットや電子メモパッドと比べて導入・運用コストは低いし、線の鮮明さも問題なし。ツールとしての将来性はあるように思う。

 

今回、磁性ボードも面白いなと感じたので、蛇足ながらもうひとつアイテムを紹介しておこう。パイロットの磁性メモボード「ジッキースーパーライトBR」だ。

一部を強調して表現できるパイロットの磁性メモボード

最新の磁性ボードというわけではないが、ちょっと面白い機能として、なんと黒・赤の2色が使えるのである。

↑パイロット「ジッキースーパーライトBR」2700円
↑パイロット「ジッキースーパーライトBR」2700円

 

専用ペンの両端がそれぞれ黒(N極)と赤(S極)になっており、対応したボード内の磁性体を吸着することで、色分けができるという仕組み。これが家族に伝言を残したり、筆談をしたりするのに、思った以上に便利なのだ。

 

例えば、忘れられては困る伝言を赤色にしたり、地図を書いて説明するのに目的地を赤く塗ったりするだけで、表現力は大幅にアップする。

↑赤色が使えるだけで、伝達したい情報量が大きく増える
↑赤色が使えるだけで、伝達したい情報量が大きく増える

 

解像度に関してはKaiteよりもかなり低く、ノートとして使うには向かないが、ちょっとしたメモツールとしてはなかなかに面白いと思う。