【きだてたく文房具レビュー】マグネットを付けた付箋ブロックで管理するスケジューラー
毎年のように新しいシステムの手帳やスケジューラーが開発されているというのに、未だ人類は“完璧なスケジュール管理法”を手にしていない。我々はいつになったら、大事な打ち合わせを忘れたり、締切直前に「わー、もしかして間に合わないんじゃないか……」と焦ったりせずに済むようになるのだろうか。
もちろん、個人の資質や仕事のタイプによって、向いているスケジュール管理の方法は異なる。個人的な話をすると、一応「現状、これがベターかな」というのが卓上カレンダーとスマホのスケジューラーアプリの組み合わせだ。筆者は非常に忘れっぽいので、常に仕事しながら目に入る位置に置いた卓上カレンダーに、予定を書き込んで日程の感覚を維持。さらに遅刻を防ぐために、スケジューラーアプリにアラートを鳴らしてもらう、というやり方である。
ただ、リスケなどがあった場合、スマホアプリだと画面上で予定をスイッとドラッグして移動できるのに、卓上カレンダーはいちいち書き直す必要がある。で、その作業を面倒くさがった結果、書き漏らしが出てスケジュールミス発生! なんてことも。これをなんとかできたら、もうちょっと締切も守れると思うのだ(希望的観測)。
予定の変更&移動がラクな“付箋的”マグネット
そういったスケジュール管理をもっと上手くできるようになるかもしれない、と入手したのが、香港のベンチャー企業 S-mall Groupがクラウドファンディング発で開発した「Mover」である。
付箋1枚を予定1ブロックに見立て、カレンダーボードに貼って管理していく付箋スケジューラー、というべきか。この付箋を使ったスケジュール管理システムは複数のメーカーで製品化されていて、予定を書いた付箋は貼り剥がしが可能なので、スケジュールの調整がとてもラク、というのが最大のポイント。
ただ実際にやってみると、何度も移動させた付箋は次第にくちゃくちゃになるし、うっかり剥がれ落ちて予定が分からなくなるというトラブルもありえる。ところがこのMoverなら、そのあたりをうまく解決してくれそうなのだ。
「マグネティック・メモブリックス」の最も特徴的な点は、付箋をマグネット式のケースに搭載したこと。これにより、付箋を塊のままマグネットで金属ボードに貼ることができるのである。
なるほど、マグネットならどれだけ移動させても粘着剤が劣化してうっかり剥がれ落ちることはないし、なにより付箋が丸まらず常にピシッとまっすぐなので、書かれている内容も見やすい。で、予定が完了したらケースから付箋をピリッと剥がす。すると新しい面が出てきて、また次の予定を書き込める、というわけだ。
剥がした付箋はすぐに捨ててもいいが、「完了したタスク」としてボードの欄外や紙の手帳などに一週間ほど貼り直しておくと、後からの確認もしやすい。こういった応用が利くのは、付箋ベースならではだろう。
基本のメモブリックスは、幅が約34㎜、高さが約11㎜の倍数で3サイズ用意されている(付箋としてはかなり特殊なサイズなので、市販のものでは代替できない)。これで基本の高さ11㎜を1時間分として、バーチカル式に予定を1~3時間分書き込めるということ。これなら、スケジュールを視覚的に掴みやすいのでありがたい。
予定をひとかたまりとして視認し、自由に移動させたり、書き直したり。こういった部分はスケジューラーアプリの感覚に近いため、スマホと兼用でスケジュール管理をするのにかなり向いていると感じた。
さて、実際に使ってみて「へぇー、いい工夫だ」と感じたのは、このメモブリックスをボードから剥がすためのギミックだ。
ボードに貼り付けたケースの左端を指で押すと、右端がポコッと浮くようにできているのだ。マグネットだと予定が密集した場所から剥がすのが大変なのだが、これなら簡単につまんで剥がすことができる。
ちょっとしたことだが、これがなかったら使っているうちに、地味にストレスを溜め込むことになっていたと思う。ユーザーの使い勝手をよく考えてくれているなと感心した。
専用ボードも地味にテクニカル
マグネティック・メモブリックスを貼り付ける専用ボードとして用意されているのが、「Mover Book」と「Mover Pad」。
Mover Bookは見開き2面式の金属板内蔵ボードで、中に164×222mmの紙を収納できるようになっている。入手時にはバーチカル1週間のフォーマットが装備されていたが、これは自由に差し替えが可能だ。
例えば筆者は、1時間単位でのスケジュール管理をするほど予定が詰まることがないので、バーチカルはオーバースペック。基本的には“今月はどこに締切があって、取材日はいつか”というのが一目で分かればありがたいので、スケジュールはマンスリー式がいいのだ。
ということで、マグネティック・メモブリックスの幅に合わせて、マンスリー用のフォーマットを自作してみた。毎月分を作るのは面倒かと思われるかもしれないが、エクセルで関数を使えば、12か月分のカレンダー作成も作業時間は30分弱である。(筆者はイラストレーターの段組で作成。これも慣れれば簡単)
もちろん、フォーマットを変えればスケジューラー以外の使い方も可能。ブレスト用の掲示ボードとして使ったり、アイデアをセグメント分けしたりといった発想ツールにもなるので、この辺はいろいろと応用が効きそうだ。
Mover Book本体にも、細かな工夫がされている。普段は見開きで置いておき、持ち運ぶ時には“ブック”の名前の通りパタンと閉じることができるのだが、内側の縁にはマグネティック・メモブリックスの高さ分だけ段差がついているので、予定を貼ったままで閉じられるようになっているのだ。
また、縁に内蔵されたマグネットのおかげでうっかり開かないように固定できるので、カバンの中で揺られてメモブリックがバラバラとこぼれ落ちることもない。
一方、コンパクトな Mover Padは、単体で2日分のバーチカルスケジューラーとして使用できるサイズ。Mover Bookと同様にフォーマットの差し替えが可能なので、単体でToDoチェッカーに使ったり、メインのスケジューラー(Mover Book)に貼る前の予定の優先度仕分けに使ったりというのも面白そうだ。
残念なことに、Moverはまだ日本の販売代理店がないようで、2019年6月時点ではクラウドファンドサイト「INDIEGOGO」から予約購入をするしかない。ただ、メーカーによれば、2019年内には国内向けのECサイトもスタートするとのこと。非常に面白い製品なので、早く日本でも気軽に購入できるとうれしいのだが。